トップリーグ 2015-2016 順位決定トーナメント vs豊田自動織機シャトルズ戦レポート
2016.01.15
フォーリーのキックパス一閃。長谷川のトライで先制に成功
トップリーグは全56試合のリーグ戦を終え、各チームはチャンピオンから8位までを決めるトーナメント(LIXILCUP)と、9位から16位を決めるトーナメントへ進む。リコーは9位から16位を決めるトーナメントに回り、今シーズン初勝利を目指す。今シーズンのトップリーグは自動降格は行われないが、下位4チームが入替戦に回る。グループBで3勝を挙げ5位に入った豊田自動織機シャトルズを相手に戦うトーナメント1回戦は、入替戦回避を懸けた重要な一戦となった。
暖かな日が差し、年明けの試合にしては穏やかな天候の秩父宮ラグビー場。豊田自動織機のキックオフで試合が始まる。キックオフボールを落とし、自陣深めで豊田自動織機スクラムを与えるが、豊田自動織機が展開したボールをこぼすと奪って攻める。
左サイドに出し前進。ハーフウェイラインを越えポイントをつくると、中央をNO.8マイケル ブロードハーストが突く。さらに順目に展開し、右中間からSOバーナード フォーリーがキックを狙う。これが相手選手に当たりタッチラインを割る。
リコーは敵陣浅めのラインアウトからモールで押し展開。右サイドから左サイドへボールを運び突破を図るが、ボールを持っていない選手が相手選手のプレーを阻むオブストラクションの反則。
リコーの次のアタックもターンオーバーから。豊田自動織機のラインアウトからのアタックを止めラックでボールを奪う。自陣10mライン付近から、SOフォーリーが裏のスペース、敵陣深くにボールを蹴り込む。豊田自動織機はタッチキックに逃れる。
右サイド、22mライン手前のラインアウトから展開。左サイドのエッジまで運び、縦の突破を図る。折り返すと中央をFLロトアヘアポヒヴァ大和が突く。直後に右中間にパスをつなぎゲインを狙うがノックオン。2度のアタックを見せたリコーが試合の入りの主導権を握った。(7分)
10分、リコーはハーフウェライン付近のラインアウトでノットストレート。スクラムからゴール前に攻め込まれるが、ここもノックオンを突いて押し戻す。
左中間でボールを持ったSOフォーリーが短いキックを対面の選手の背後に落とす。自分で拾うと、左サイドタッチライン際をフォローしたWTB長谷川元氣につなぎ22mライン目前までゲイン。しかし孤立しノットリリースザボール。
まだ攻めるリコー。自陣ラインアウトからのアタックを止めボールを奪うとFB星野将利がゲイン。NO.8ブロードハースト、HO滝澤佳之、PR辻井健太らが縦に突き22mラインに迫る。しかしラックでボールキープを図ったリコーにオーバーザトップの反則。繰り返しチャンスは来るが、ペナルティでアタックが途絶えてしまう。
このすぐ後にもラインアウトでボールを奪うが、アタックに転じたところでサポートが遅れノットリリースザボール。豊田自動織機はPKをタッチに蹴り出しゴール前へ前進。
ゴール前ラインアウトから豊田自動織機がアタック。リコーはゴールラインを背負ってディフェンス。粘り強く守ると、こぼれたボールをSH山本昌太が獲って裏へ蹴る。ボールは豊田自動織機陣内10mライン付近へ。
相手がボールの処理に手間取るところに、チェイスしたSH山本が果敢にプレッシャーをかけラックに。すると豊田自動織機にオフサイド。
リコーはPKをタッチに蹴り出し、右サイド22mライン付近のラインアウトにする。キープして展開。左サイドを攻めるがターンオーバーされ、豊田自動織機がタッチキック。リコーはもう一度ラインアウトから攻めるが、ボールを失い自陣に押し戻される。(22分)攻めきれずもどかしい場面が続く。
ここから一進一退の展開に。リコーはスクラムで押され攻め込まれる苦しい時間もあったが、相手のミスにも救われスコアを許さずに戦った。
すると前半終了直前の34分、SOフォーリーのゲインを起点に攻め込むと、豊田自動織機にオフサイド。右サイド、22mラインの内側のラインアウトを得ると、これをキープし展開。中央からフォーリーが左へキックパス。低めの弾道のキックは、前に出ていた相手WTBの背後で跳ねると、左サイドに走り込んだWTB長谷川が手中に収める。中央に回り込んでグラウンディング。リコーに待望のトライが生まれて先制。CGもフォーリーが決めて7-0。(36分)
前半終了直前には、反則から攻め込まれピンチを迎えたが、相手のキックパスを処理してスコアを許さず。リコーはリードを保って試合を折り返した。
試合決めた後半の入り。スイッチ入らず3連続トライ許す
後半はSH山本に替わり中村正寿が入りスタート。
リコーのキックオフの蹴り返しがタッチラインを割り、ハーフウェイライン付近のラインアウトに。ここでボールを失ったリコーは右サイドを破られる。
一気に22mラインの内側まで攻め込まれるとディフェンスで反則。ラインアウトにした豊田自動織機は、右中間をFWで攻める。さらにラックをつくると1番がピックしてポスト左にトライ。CGも決まって7-7。(3分)
再開のキックを深めに蹴り込んだリコーだったが、豊田自動織機の蹴り返しのキックが風に乗り伸びる。リコー22mラインの内側に落ちると、処理にいったWTB長谷川に豊田自動織機のチェイサーが襲いかかりボールを奪う。ここから突進を繰り返しリコーのディフェンスを割ると8番が右中間にトライ。CGも成功し7-14。(6分)後半の入りを制した豊田自動織機が勝ち越した。
勢いに乗る豊田自動織機は、自陣からキックを蹴り込むと再びチェイサーがリコーのBKに襲いかかる。押し込んでボールを奪うと10m付近から展開して攻める。ここはノックオンでリコースクラムに。この攻防でPR辻井が出血。藤原丈宏に交替。(8分)
自陣スクラムから展開し、リコーが右サイドを突く。FB星野がゲインを果たし敵陣に侵入するとポイントをつくり左へ。豊田自動織機にオフサイド。
ゴールは狙わずPKでゴール前まで前進。相手の勢いを止めるトライが欲しい場面だったが、ラインアウトを獲れない。キックで22mラインの外側に押し戻され、再度ラインアウトに。ここはキープしてボールを回すと、SOフォーリーのパスを飛び出した相手12番がインターセプト、右中間を抜ける。
リコー陣内10mラインを越えたあたりでポイントをつくるとすぐ展開。サイドを変え左サイドを破る。追いついたフォーリーがゴール前でタックルし一度は止めるが、アタックは継続される。再び右サイドに運び、右隅に10番がトライ。CGははずれたが7-19。(14分)
リコーはこのトライの後、PR大川創太郎を柴田和宏に、NO.8ブロードハーストをコリン ボークに入替。
短めの再開のキックをNO.8ボークが弾き、豊田自動織機に入る。リコー陣内に蹴り込むが、CTB小浜和己が強く蹴り返す。これをSOフォーリーとWTB長谷川が出足よくチェイスし、敵陣22mライン付近で相手のランナーを捕まえ倒すビッグプレー。ボールをこぼしリコースクラムに。
リコーはCTB小浜和己を木上鴻佑に、SOフォーリーをティム ナナイウィリアムズに入替。トライを狙っていく。
中央ゴール前スクラムからNO.8ボークが出し右を攻める。しかしディフェンスは堅く、前に出られず今度は左へサイドを変える。しかし左サイドのブレイクダウンで豊田自動織機がボールを奪う。蹴り込まれたキックをキャッチしたリコーはもう一度仕掛けるがノットリリースザボール。(20分)
豊田自動織機が自陣から蹴ったPKはタッチを割らず、リコーがカウンター。しかしうまく対応され、捕まってノットリリースザボール。豊田自動織機は右中間、10mライン付近からの40mほどのPGを決めて7-22。(22分)
リコーはHO滝澤を芳野寛、LO馬渕武史をカウヘンガ桜エモシに入替。
点差は15点、残り時間は20分弱。リコーはFLロトアヘア、LOカウヘンガらのダイレクトプレーで前進を図る。疲れが見えてくる時間帯でもあり、ここまで堅かった豊田自動織機ディフェンスが下がる場面が見られるようになる。反則を獲ってはリスタートをかけ前進。22mラインの内側で、ノット10mバックの反則を獲るとリコーはショットを選択。正面やや左の位置からCTBピータースダニエルがPGを決め10-22。(25分)これで2トライ2ゴールで届く点差に。
リコーは右中間自陣スクラムからWTB渡邊昌紀につなぎスクラムの脇を突く。さらにFWが突進。22mライン手前まで前進すると、NO.8ボークが右中間で突破を図る。しかし惜しくもノックオン。(30分)
22mラインの内側だけに、スクラムを押せればチャンスが継続する場面だったが、リコーに痛いコラプシング。風に乗せたPKはリコー陣内22mライン手前まで飛び、ボールはリコー陣内へ。
ここから豊田自動織機の2度のアタックをしのいだリコーだったが、36分、右サイド10mライン付近のラインアウトからボールをつながれ、じりじりと後退、22mラインの内側へ。そして中央ラックから右に展開、23番から6番につないだ豊田自動織機は右隅にトライ。CGははずれたが10-27。試合を決定づけるスコアが入った。
再開のキックをキープしたリコーは、後半替わって入ったSOナナイウィリアムズ、CTB木上らがつなぎ、左サイドを走ったWTB長谷川にパスを通し左隅にトライを決めたが(CG成功)、届かずノーサイド。17-27で敗れた。
これでリコーは残り2試合、13位から16位を決める試合に臨むことと、トーナメント終了後の2010年以来6年ぶりの入替戦出場が決まった。
次戦は1月16日(土)12時から、三重県・三重交通Gスポーツの杜鈴鹿・サッカー・ラグビー場で行われるNECグリーンロケッツ戦となる。開幕から8戦にわたり未勝利という厳しい状況が続く。しかし翌10日のサントリーサンゴリアスとの練習試合では、ノンメンバーたちの闘志を剥き出しにして戦う姿があった。この試練から何を学ぶべきなのか。それを知るために、リコーは最後まで走り抜く。
「良かったところなんて負けたらない。自分たちに厳しくトレーニングして次の試合に臨む」(CTB小浜和己)
神鳥裕之監督
今日はどうもありがとうございました。我々は昨年1つも勝てずに順位トーナメントに来ましたので、気持ちを切り替えてしっかりと今年の初戦を勝利で飾りたかったんですが、勝つことができなかったと。苦しい試合が続いています。チームとしては厳しい状況ですけれども、選手たちは本当に悔しそうな顔をしていますし、歯がゆい気持ちも非常に伝わってきますので、なんとか次の試合に関しては一戦必勝で臨みたいと思います。
(ブレイクダウンでやられていた感じがする)そうですね。7戦通じて反省した部分として、ディフェンスの部分もそうですし、FWなら特にモールのディフェンス、そのあたりのところは機能した部分もあったんですけれども、結果的に後半最初の10分、15分の間に続けざまにトライを獲られてしまった。あの時間帯のディフェンスについてはリーグ戦と同じ課題が残る結果になってしまったと思います。悔やまれるところです。
ただ悪いところばかりではなく、リーグ戦では苦しんだモールディフェンスで、止めきれたところもありましたし。アタックのブレイクダウンのところの反則は、次に対してしっかり課題が残った部分ではあるのですが、できたところ、できなかったところ整理して次の試合に臨みたいと思います。
(ハーフタイムに何を伝えたか)ディフェンスの我慢強さについてはポジティブなメッセージを残しました。相手のミスに助けられたのもあったんですけど、我慢してディフェンスし続けた点については後半も継続しようと。アタックについてはボールセキュリティの部分、アタックを仕掛けてボールをこぼすような場面がありましたので、後半はボールを守る、キープザボールといったところを伝えました。結果的にそこは改善できず、苦しんだ原因かなとは思っています。
(後半、相手に足をつっている選手が何人か見られた。もう少し点差を詰められていれば勝機があったようにも)ああいう局面はお互いきつい。そこで自分たちがしっかりスコアできればゲームの流れも変わっていたと思うんですが、反則でプレーが終わる、ブレイクダウンでのサポートのスピードであったり、その辺の精度の悪さなどのミスで終わってしまいスコアにつながらなかった。それが結果的に勝敗につながったとは思います。【以上共同記者会見にて】
この2週間、コーチ陣と、選手のリーダーと、いろいろなコミュニケーションをとりながら、チームの立て直しという部分についてはアプローチしていっています。この短い期間の中で何かを劇的に変えるのは難しい部分もあるとは思いますが、リーグ戦での最大の課題だったモールのディフェンスなどは、機会は2、3本しかなかったんですがそれは止めることができた。
(試合を通じて接点で前に出られていた)それでも前半は相手のミスを突きながら、ターンオーバーするなどして我慢できた部分はあったんですが、80分間、最後まで我慢するということはできなかった。80分間の集中力というところがチームとして自信になっていない。不安を感じている。サントリーのときも、クボタのときもそうだったので。
(25分に10-22になり、10分間攻防があった。ここでトライを奪えていれば)攻めている場面もあったんですが前に出れなくて反則で終わる、ミスで終わる。このあたりの精度の問題ですね。
(ナナイウィリアムズのSOについて)苦労していました。慣れないポジションですが、チーム事情を理解して取り組んでくれている。ただ彼のよさを生かし切れなかった。
今はもう限られた時間の中で修正していくしかない。前半はできていた低いタックル、そのあとのブレイクダウンでいい球出しをさせないプレー、それができてラインスピードが上がるので、この3つのサイクルをしっかり回し切ることを徹底する。アタックについてはボールキープ。タイトなシチュエーションの中ではボールを落とさない。原点に立ち返ってトレーニングするしかない。
(負けが続くことで生まれるプレッシャーもある)勝ちから離れているので、常に不安と戦っている選手もいると思う。試合でうまくいかなくなったとき「今回もまたダメなのでは」という不安が広がらないように働きかけていきたい。
CTB小浜和己ゲームキャプテン
負けが続いていて、うまくいかないんですけど。もう入替戦が決まってしまいましたが、シーズンは終わらないので顔を上げてチームで1つになってやりたいと思います。本日はありがとうございました。
(前半を終えた際、考えていたことは)プラン通りに来れているなという印象。もう少し点を獲りたかったですけれど、ディフェンスで我慢して、アタックではボールキープして、という。後半の入りが問題だという思いはありましたが、前半が終わったときはいい感じだと思っていました。【以上共同記者会見にて】
負けが続いていて、負け癖じゃないですけど、そういう感があるので。何回も何回も「切り替えて」って言い続けているんですけど、結局良いところもあったっていう綺麗事で終わっているので。良いところなんて負けたらないんで。それくらいに考えて厳しくトレーニングして次の試合に臨むしかない。
(リードされる、追いつかれる、そういう時間帯に、実際に何かチームに変化が起きているのか)ディフェンス、アタック、どちらにもフォーカスポイントがあるので、そこに立ち返ろうとするんですけど、1つうまくいかないことがあると少しパニックになって、後手に回ってしまう。ずっと同じこと言っているんですが。今日はロッカーで泣いている選手が何人もいましたが、これまでの試合は、そこまでの気持ちが見えなかった。来週はいい準備ができると思う。
LO生沼知裕
勝つか負けるかで状況が大きく変わる試合だったので、今日は残念です。(すべての問題が解決していたとはいえないが、それでも前半はよく我慢した)そうですね。後半の入りですね。いつもと一緒なんですけど。ミスから点を獲られて、「まずい」となると、そういう雰囲気ができてしまって、そこから盛り返す活力みたいなものが足りない。今日は後半15分くらいのゴール前のスクラムがあったけれど、あそこで獲り切れなかったり。今日は途中出場したエモシ(カウヘンガ 桜エモシ)も頑張ってたけど、日本出身の選手もひたむきにやらないと。
(スクラムについての印象は)ファーストスクラムを組んだ感じはまずまず。僕たちは相手のPR長江(有祐)を警戒していたのですが、今年から1番をやっている健太(辻井)をサポートしていくぞ、という感じ。でも最後の方のスクラムはいかれましたね。
(チームの雰囲気に感じることは?)悪いか悪くないかといえば、悪くない。もちろん負けが続いているので良くはないですが、みんながいいムードで練習できるように努めています。いいイメージでいい練習はできている。1つ勝てれば。
FL武者大輔
前半はお互いミスがあって。でもなんとか我慢して、リードして折り返すことができたんですけど。後半の立ち上がり。先にトライ獲られて、ミスが続いて、また獲られるっていう形で、そこから立て直せないのが一番の敗因かなと思っていて。修正力がないのが今の僕たちの弱さ。
(でも前半と後半、プレーそのものの質が極端に落ちたわけではない)でも、後半は対応され始めたのかなというのはある。僕らがアタックしているときの、ボールをクリーンに出させないような対処が増えてきて、1ついってスローボール、1ついってスローボール。BKに回しても相手がそろっている状態でアタックしなきゃいけなかった。今日は過去何試合に比べて自分たちのやるべきラグビーをやり通すっていう点ではよかったんですけど、その上で相手がこうしてきたら違うことをする、みたいな臨機応変ができていなかった。相手の状態を見てのプレーをまだまだうまくならないといけない。FWでフラットなアタックを順目順目にいって、外にいきたいんだけど、FWのアタックでいいテンポが出ないと、ただ外に回しているだけになってしまう。相手の方が上手だったってことですよね。
とにかくまず勝たなければ始まらないと思うんで。来シーズンもトップリーグでやるんだという強い気持ちを持ってやろうと、僕からも発信していこうと思っています。
CTB木上鴻佑(トップリーグ初出場)
とりあえずディフェンスで体を張ったり、チームフォーカスのボールキープなどで自分にまかされた仕事をやり遂げようと思って試合に入りました。プレシーズンリーグで試合を経験していたので、焦ることなくできました。(振り返っての反省点は)パスを離せるところで、相手との間合いを詰めすぎてしまったところがありました。もう少し慣れていって、まずは自分にまかされた仕事を、そしてそれ以上の仕事をできるようになってチームに貢献したいです。
WTB長谷川元氣
(2トライ)たまたまボールが来ただけです。(1本目のキックパスを受けてのトライは)相手のWTBの背中側に転がったのでうまく拾えた。後半のキックの処理は一瞬前を見てしまった。(チェイスしてきた選手が来ているため)下がれという声は聞こえたのですが反応が遅れてしまった。結果的にトライにつながってしまったので悔しい。