2014-2015 トップリーグ 1stステージ 第7節 vsトヨタ自動車ヴェルブリッツ戦

2014.10.27

互いに後半節の上位リーグ入りを懸けた大きな試合

トップリーグ1stステージ最終第7節。2ndステージで、上位8チームが戦うグループAで戦うためにリコーは「対戦相手のトヨタ自動車ヴェルブリッツに4トライ以上を挙げ、7点差以上をつけての勝つこと」「相手のトライ数を4以下に抑えること」がまず必要だった。

その上で、他会場で試合をしているコカ・コーラレッドスパークスが、近鉄ライナーズを勝ち点1に抑えて持って勝てば、リコーは1stステージ4位が確定。2ステージ制となって初の、上位リーグ入りが実現する。対するトヨタ自動車も勝ち点5を挙げれば確実に4位以内に入る。トライラッシュをかけ勝負を決めたいのは明らかで、激しい試合が予想された。

第4節に敗れた時点で「残り試合を勝ち点5を挙げて3連勝する」しかない状況に追い込まれていたリコーは、そのプレッシャーの中で第5節のコカ・コーラ戦、第6節のNTTドコモレッドハリケーンズに対し勝利。この第7節は、3連勝というターゲットに向けた最後の一戦でもあった。

FL柳川の好走トライで先制。リード保って折り返す

快晴の秩父宮ラグビー場はほぼ無風。午前中のキックオフながら、スタンドにはリコーのグループA入りを信じるリコーファンが集まり、試合前から声を挙げチームを鼓舞する。SOコリンボークの深めに蹴り込んだキックで試合が始まる。

開始直後、リコーは自陣5m付近のラインアウトをキープすると、ボールを回しアタック。LOカウヘンガ桜エモシ、ロトアヘアポヒヴァ大和、SOボークが縦に入っていく。激しいディフェンスに遭うが、SH中村正寿がうまくさばき、サイドに振ってFL武者大輔が左サイドを突きポイントをつくってオープンサイドに出す。

するとSOボークから、中央に外から内に角度をつけて走り込んだNO.8柳川大樹にパスが通り、目の前に出来ていたギャップを抜ける。ライン裏に抜けると、ランコースを選びながら走りタックルを2度はずしゴールラインに迫る。最後は相手15番をひきずりながら左隅にトライを決めた(2分)。CGははずれたがリコーが5−0と先制する。

ここから一進一退が続いたが、リコーは自陣15m付近で、SOボークが相手のランナーを倒しボールを奪いにかかる。サポートの選手が激しく襲いかかったが、ボークはつかんだボールをこぼさず背後にダウンボール。ターンオーバーに成功する。これを回し、左中間からCTB山藤史也が敵陣深くに蹴り込むと、弾んだボールは22mを越えてラインタッチを割る。一気に陣地を取り戻した。

さらに相手ボールのラインアウトをスチール。リコーはラックからトライを狙うが、トヨタ自動車のラック回りの激しいプレッシャーにノックオン。チャンスを逃す。

ボールを得たトヨタ自動車は、キックを蹴り込みチェイス。CTB山藤が蹴り返しを狙ったところをチャージすると、ボールを奪って猛攻を見せる。右サイドを破り、22mライン付近まで前進すると、さらに力強く突進を繰り返す。

リコーは出足の鋭いディフェンスで対抗。トライを許さずゴール前で粘ると、左中間でCTB山藤がタックルを決めてトヨタ自動車がノックオン。リコーがピンチをしのぐ。

ハイタックル、ノットリリースザボール、2つの反則を生かしリコーがゴール前ラインアウトのチャンスをつかむ。キープし、モールを組むと一気にインゴールへなだれ込む。NO.8柳川がボールを持ちインゴールに持ち込みトライかと思われたが、テレビジョンマッチオフィシャル(TMO)を経てグラウンディングできていないと判定される(19分)。

リコーはスクラムから攻め、ゴール正面の激しいフォワード戦を経て、左サイドへ展開。SOボークからCTBタマティ エリソン、さらに大外のWTB小松大祐へとパスをつなごうとしたところで、トヨタ自動車14番が手を伸ばしボールをはたきにいく故意のノックオン(24分)。

22mラインの内側、ゴールまで10m強の位置でのラストパスを阻むプレーに、ペナルティトライの可能性も考えられたが、ここはペナルティキックで再開。リコーはゴール前ラインアウトからラックをつくり、近場を攻めたてる。しかしトヨタ自動車のディフェンスは激しく、ターンオーバーを許す。

2度のきわどいプレーがスコアにつながらなかったリコーは、その後自陣でのディフェンスに追われる。しかし、ゲインを許してもあわてずラインを整え、プレッシャーをかけトライを許さない。FBピータースダニエルらの安定したキックも生き、よくしのいだ。

前半終了間際、右中間30m弱の地点でのディフェンスでのノットロールアウェイからPGを決められたが、リコーは5−3とリードしたまま前半を終える。

守ってつかんだ流れを生かせず。悔しい1点差での敗戦

リコーはメンバー入替なし、トヨタ自動車は4人の入替を行って後半が始まる。開始直後からトヨタ自動車が激しく攻める。約8分にわたり主導権を握りアタックを仕掛けていく。リコーは22mラインの内側でディフェンスし、ボールを奪ってはキックで押し戻していく展開が続く。前によく出て守っていたリコーだったが、根負けした形で中央でホールディングの反則。トヨタ自動車はPGを狙い成功(9分)。5−6と逆転した。

リコーはスクラムで反撃。コラプシングを獲って、ペナルティキックで敵陣22mライン付近まで攻め込む。しかしプレッシャーを受け、こぼれたボールを奪いあうラックでボールを失いチャンスを生かせなかった。リコーはPR大川創太郎に替えて柴田和宏(14分)、HO滝澤佳之に替えて森雄基(17分)を送る。

猛攻を1PGにしのいだリコーに流れが来る。自陣浅め、左中間のスクラムから展開しSOボークが突破。フォローしたWTB星野将利がさらに走り敵陣22mライン付近まで進む。一度ボールを奪われたが、蹴り込まれたキックをキャッチして再度アタック。ワイドに攻め、ボールをつないでフェイズを重ねていく。

左サイドを突破しかけたWTB小松に対し、トヨタ自動車が首に手をかけるタックル。ペナルティキックを得たリコーはタッチに蹴り出し、左サイドゴール前ラインアウトからトライを狙う。このラインアウトでトヨタ自動車5番が、リフトされ空中にあるLOロトアヘアの身体に手をかける反則。10分間の一時的退出を科された。

再度ラインアウトにしてアタックをかけるリコー。しかし、フォワードがモールを組み激しく攻めたてるが、トヨタ自動車のディフェンスにあと1mのところで阻まれる。ついにオフサイドを犯しボールを奪われ、大きなチャンスを逃す。ここでLOカウヘンガ桜エモシに代わり生沼知裕(21分)がピッチへ。

リコーは自陣での相手ボールのラインアウトで、オーバーしたボールに反応したSH中村が飛び出して直接キャッチ。敵陣深くへキックを蹴り込む。これはうまく処理され蹴り返されたが、今度はSOボークがハイパントを上げてチェイス。密集でこぼれたボールがリコーに入り、つないだボールをCTB山藤が右サイドタッチライン際にキック。走り込んだHO森がこれを拾いかけたが、惜しくもタッチを割る(23分)。ここでSH中村正寿に替えて神尾卓志(25分)。

チャンスを続けて逃したものの、流れはまだリコーにあった。自陣からのアタックでパスが乱れトヨタ自動車のラインアウトとなるが、反則でフリーキックを得る。
リスタートして攻めると、右サイドのスペースをLOロトアヘア、WTB星野とつないでゲイン。一気に22mラインの内側まで攻め込んだ。さらに攻めたが、星野に対するハイタックルがあったとしてペナルティキックを獲得。ゴール前ラインアウトにして、再度トライを狙う。モールで押し、ラックに移行したがここでリコーに痛恨のオーバーザトップ。ここもスコアにつなげられなかった。CTBエリソンに替えてアマナキロトアヘア、SOボークに替えてルイフーシェ(28分)。

トヨタ自動車はリコー陣内浅めで得たペナルティキックで、ゴール前ラインアウトにすると激しく攻めたてる。左サイドから縦の突進を繰り返しながら中央へ。勢いを失わず攻めると、16番が身体を倒しインゴールに持ち込んだ。TMOでダブルモーションの有無が確認されたがトライが成立(32分)。CGも決まり5−13。

8点差を追いかけるリコーは、自陣10mライン付近の反則で得たペナルティキックで前進。ラインアウトからフェイズを重ねてワイドに攻めるリコーの形を見せる。ゴール正面、5mの位置にラックをつくると、WTB小松らが右サイドを攻める。ラックからSH神尾がFBピータースへ。ボールはSOフーシェ、再びピータースとループ。ピータースがオープンサイドのCTBアマナキロトアヘアへフラットなパスを通しゲインラインを切ると、CTBロトアヘアが左中間インゴールへ抜けてトライ(38分)。CGもピータースがポストの中央を射抜いて12−13と1点差に迫る。

しかし反撃は届かず。ラストワンプレーでの逆転に懸けたいリコーは、深く蹴り込まれたキックオフボールを回すがブレイクダウンで奪われる。ホーンが鳴り、SHが蹴ったボールがタッチラインを割りノーサイド。

トライ数で上回りながら惜しくも1点差で敗れたリコーは、1stステージを2勝5敗勝ち点14、プールB6位で終了。2ndステージは下位8チームで編成されるグループBで戦うことが決まった。

「アタックに関しては強い手応えを感じている。もう一度“One Team”を意識して戦っていく」(WTB小松大祐)

神鳥裕之監督

4トライを獲って勝つしか道は残されていないという中で、試合に臨みました。前半の入りのところでいいトライを獲れたものの、チャンスを生かしきれない試合展開が続いてしまって、悔しい敗戦となってしまいました。選手たちはよくやってくれました。今日の敗戦を糧に、2ndステージは必勝を期して戦っていきたいと思います。今日はどうもありがとうございました。
【以上共同記者会見にて】

ミスもしたし、相手のミスに助けられたし、どちらも流れをつかめない状態で試合が進んだと思います。敵陣のここ一番のモールでのトライを獲らせてもらえなかったところで、相手の気持ちを折っていくことができなかった。

あと想定はしていたのですが、相手の強みのブレイクダウン回りのディフェンスで想像上以上にプレッシャーを受けました。そこに付き合い過ぎたのかもしれない。後半はメッセージ変えてバックス使いながらという話はしました。
ただ、スクラム、ラインアウト、ディフェンスなど全体のクオリティとしては悪くなかった試合。前節で相手のアタックを待って受けてしまっていて、この一週間はディフェンスのラインスピードを意識してきましたが、よく修正できていました。それは選手の頑張りだと思う。アタックはどちらが流れをつかむかというところでつかみきれなかった。ミスを少なくすることの大切さを痛感しましたね。
よくやってくれました選手たちは。結果的には1点差負けという結果になってしまったんですけど、本当に気持ちっていうか、最後の最後まであきらめない姿勢を出せた試合だったとは思っています。ただ、勝ちきれないというのは今の実力だとも思わないといけないですよね。

(最終節を迎えるにあたり、チームにはどんなメッセージを?)サントリーに負けたあとに出した、残り3つをすべて4トライ獲って勝つというメッセージに対し2つは成功したと。一番ハードなチャレンジとして、3つめのトヨタ自動車戦があると伝えてきました。そういうマインドセットでこの試合に臨みました。
(後半は自分たちのラグビーを見せたサントリー戦、2点差だった神戸製鋼戦、1点差だったトヨタ自動車戦と、上位リーグに進んだチームともよく戦った1stステージだったのでは?)
この半年、チーム力が目覚ましく伸びていったという実感はあります。だからこそ、余計に、上のリーグで競わせてあげたかった。それを嘆いても仕方ないので、とにかく我々のスタンダードを保って戦い、日本選手権に進んで、上位リーグのチームと戦う機会を得たいというのが今の気持ちですね。
(ウインドウマンスは?)振り返りをまずしっかりして、できていること、できていないことをはっきり確認してそこからフォーカスポイントが決まってくると思います。戦い方ややろうとしていることが変わることはないと思います。疲れのある選手もいるのでしっかりリフレッシュすることも大事。キャンプもあるのでそこで強度を上げる時間もある。強弱つけながら2ndステージ初戦にピークを持っていけるようにプランニングしたい。

HO滝澤佳之

今日はありがとうございました。結果は残念ですけど、まだ戦いは続くので。上を目指して頑張りたいと思います。
(ミスがお互いに多かったが、その原因は何か思い当たるところは?)お互いプレッシャーが激しかったからかなと。(接点やパスを回す際にプレッシャーはかなり感じた?)はい。【以上共同記者会見にて】

トヨタ自動車のブレイクダウンと近場のディフェンスに対して、最後まで崩せませんでした。プラン通り戦えなかった試合でしたね。
(2ndステージは)勝敗はもちろんですが、精度を上げて、チームのラグビーを完成させたいという気持ちが強いです。まだ終わっていないんで。上と戦うチャンスはまだある。
1stステージは結果だけ見ると結構戦えたなって思うんですよ。そういう部分では(上位と)近づいた、伸びてきているのかなと思う。その上で勝てなかった理由を突き詰めて、取り組み方を変えていければいい。

SH神尾卓志

速いテンポとディフェンスを意識して試合に入りました。自分が入ってからトライを獲られたので、ディフェンスは修正課題。
(準備をし続ける1stステージだったと思うが?)そうですね。いつでも出られるように、出場しているスクラムハーフよりもいいプレーができるように準備をしてきました。もっと自分が若かったら、悔しい気持ちが先にきてしまっていたかもしれないけど、今はチーム第一。勝てればいいので、シニアプレーヤーとしてチームの雰囲気をつくっていきたい。出られない若い奴らの話を聞いたりもしています。ここでさらにまとまりを感じて、1つの目標に向かってやっていきたいと思います。

WTB小松大祐キャプテン

前半がうちのペースで、エリア獲ってやれていたし、ゴール前でずっとプレーしていたので、攻め方については成長を感じました。ただ獲りきるという部分。ポイントを獲って戻るってところを徹底しないといけないと思いました。今日はかなりチャンスが回ってきたけど、普通はあそこまでチャンスはこない。獲るべき場面で獲っていけないと勝つことはできない。
フォワードがモールでいったあとのプレー、バックスとのリンクの部分なんかもしっかり確認していたので、もう少しバックスに回してもよかったのかなとは思いました。もちろん今日はフォワードにこだわると決めていたのでいいのですが、後半外側でゲイン切れていたので、相手の弱いところを試合の中で探してアタックするという考え方も大事なのかなと。
今、チームはコミュニケーションがしっかりとれているし、一人一人がチームのために何ができるかを考えている。そこに不安はない。僕も改めてチームのためにできることを考えていきたい。もう一度“One Team”を意識して戦っていきたい。アタックに関しては手応え感じているんで。2ndステージはリコーのアタックをガンガンやっていければって思っています。

FBピータース ダニエル

もう少しブレイクダウンで戦えないと、グループAには入れないのかもしれない。やはりブレイクダウンがよければ良い試合になっていた。悪い試合はブレイクダウンも悪くて、ボールキープできずリコーのラグビーを見せられなかった。ルールで許される限り、激しくやっていきたい。
自分も、チームも、まだまだ足りないところがたくさんある。(2ndステージは)全部勝って、いい雰囲気で日本選手権に出られるように。来シーズン以降につながるように戦っていきたいです。

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