2014-2015 トップリーグ 1stステージ 第3節 vs近鉄ライナーズ戦
2014.09.10
風下ながらうまく戦った前半。射程圏内で折り返す

トップリーグ1stステージ第3節の相手は近鉄ライナーズ。途中出場ながら存在感を見せていたHO滝澤佳之、SH中村正寿、前節でトライを挙げたFL柳川大樹、WTB星野将利の4名が今シーズン初の先発出場を勝ち取った。
大阪・キンチョウスタジアムの天候は曇り。湿度が高く、いまにも雨が降り出しそうな雰囲気で試合は始まる。
風下のリコーのキックオフ。直後に近鉄がオフサイドを犯し、リコーはペナルティキックをタッチに出し、右サイド22mラインからのラインアウトにする。
これをキープしてアタック。中央を突くと近鉄にノットロールアウェイ。リコーはほぼ正面からのPGをFBピータース ダニエルが成功。3−0と先制(3分)。
蹴り合いを経て、リコーが敵陣に攻め込むがミスからボールを奪われる。左サイドを破られ、ゴール前にボールを蹴り込まれるが、WTB星野がセーブし何とかトライを阻む。
ハーフウェイライン付近のスクラムでリコーがコラプシング。近鉄が追い風を生かし右中間からの距離のあるPGを狙うがはずれる(13分)。

リコーのドロップアウトで再開すると、蹴り返しをSH中村がキャッチ。リコーは自陣浅めからアタックを仕掛けるがディフェンスに遭いノットリリースザボール。近鉄は左中間からの40m超のPGに成功。3−3となる(15分)。
リコーが深く蹴り込んだキックオフを近鉄がノックオン。リコーは22mラインを越えた位置でスクラムを得る。スクラムは拮抗したが、その後のブレイクダウンで近鉄に反則。リコーは左サイドに蹴り出すと、ラインアウトをキープし左中間でモールを組む。これも拮抗したのを見ると、すかさずSH中村が展開。SOコリンボーク、CTB小浜和己、WTB小松大祐とつなぎ、小松が右中間のギャップを抜け、ポスト右にトライ(19分)。CGも決まり10−3。
しかし、次のキックオフを今度はリコーがノックオンし自陣侵入を許す。脱出を図って粘るが、自陣中盤、左サイドのラインアウトからのアタックに22mラインの内側でオフサイド。正面やや右からのPGに近鉄が成功し10−6(24分)。

リコーのキックオフの蹴り返しがタッチを割る。リコーがハーフウェイライン付近のラインアウトからアタックすると、近鉄にノットロールアウェイ。右中間、10mラインの手前からの長いPGにFBピータースが成功(27分)。13−6とリコーが再びリードを広げる。しかしすぐ後、中央のギャップへの近鉄のアタックに、リコーがハイタックル。正面、約35mのPGを決めて、近鉄が13−9と詰める(30分)。
前半残り10分、近鉄がリコーのキックオフをキャッチすると、チェイスしてきたリコーの選手をかわしキック。これが伸び、さらにうまく転がりリコー陣内の22mラインの内側でタッチを割る。リコーはラインアウトでノットストレート。近鉄にボールを渡してしまう(31分)。
右中間、22mラインを越えたあたりのスクラムをうまく回した近鉄はすかさず展開。スクラムを見て対応を図ったリコーバックスとの間にできたミスマッチを突き、13番が左中間を抜けてトライ(32分)。CGも決めて13−16と逆転した。
その後、ハーフウェイライン付近で仕掛けたアタックで激しく絡まれ反則を獲られたリコーは、ペナルティキックでエリアを奪われ再び自陣へ。この局面はよく守り、ピンチを脱し前半を終えた。
シンビン後に2トライ許す。ミスで生かしきれなかったチャンス

メンバー交代はなしで後半スタート。リコーは追い風の陣地となったが、前半の終盤から降り出した雨が強まり、コンディションは悪化した。
近鉄が自陣22mラインの外側から蹴ったボールが風に押されて直接タッチを割り、ダイレクトタッチに。リコーは近鉄陣内浅めでラインアウトを得る(3分)。これをキープし右サイドから展開。左サイドを突くと近鉄にオフサイド。蹴り出して22mライン付近でのラインアウトにする。
これは奪われるが、近鉄が蹴った風下からのキックが伸びない。キャッチしたWTB小松がカウンターで突破し、22mラインを越えてリコーがアタック。ボールキープして揺さぶると、右中間のポイントから展開。左サイドをFBピータースが破って左隅にトライ(7分)。CGも決まり、リコーが20−16と逆転。
すぐ後、リコーはオフサイドを2度繰り返し、ゴール前ラインアウトのピンチを招く。近鉄はモールを組み左中間を押す。ほとんど全員が加わったモールにリコーも必死に対抗する。これが崩れ、リコーにコラプシングの反則。さらにFLマイケルブロードハーストに故意にモールを引き落としたとして、10分間の一時的退場処分が科された(12分)。
近鉄は再度ラインアウトから攻めると、リコーはディフェンスで粘れず、7番が左中間にトライ(13分)。角度のあるCGも決まり20−23と逆転する。リコーはこの直後、SOボークを徳永亮、CTB山藤史也をタマティ エリソンに交代。(14分)
リコーはCTBエリソンのゲインなどで敵陣に侵入。さらに相手のラインアウトを奪って敵陣中盤でアタック。しかし、ボールキープはするもののクリーンなボールが出せない。テンポが上がらず、ついに捕まってノットリリースザボール(18分)。
近鉄は自陣からのペナルティキックを蹴り出し前進。リコー陣内10mライン付近のラインアウトからアタック。激しいブレイクダウンに手を焼いたリコーはディフェンスが後手に回る。生まれた左中間のギャップを破られ、6番がトライ(20分)。CGははずれたが20−28と近鉄がリードを広げた。

勝利には1トライ1ゴール以上のスコアが必要となったリコーは主導権を奪う。しかし近鉄陣内でプレーするものの、ミスで決定機をつくれない。ここでリコーは一気にメンバーを替える。HO滝澤佳之を森雄基に、PR大川創太郎を柴田和宏に(27分)、LO柳川を馬渕武史に(28分)、SH中村を山本昌太に、WTB星野を松本悠介に(30分)交代する。
入ったばかりのSH山本が、中央で鋭く仕掛け22mラインの内側に侵入。ゴールライン目前でリコーが突進を繰り返す。ボールが動かなくなり、正面やや右、5mの位置のスクラムで再開する。近鉄に反則。逆転を狙うリコーはPGを確実に決め23−28とする(35分)。
残り5分、リコーは焦らずキックを蹴りエリアを意識していく。ハーフウェイラインのラックで近鉄がノックオン。リコーはマイボールスクラムの脇をもう一度SH山本が抜けてゲイン。敵陣中盤でボールをつなぐと近鉄に反則。右サイドに蹴り出し、ゴール前ラインアウトに全てを懸ける。

ラインアウトをキープ。ラックから突進を繰り返し右中間ゴールラインに迫る。ホーンが鳴る中、FLブロードハーストの身体がインゴールに入る。ラックの後方にいたリコーの選手が腕を突き上げ、スタンドが沸く。しかしレフリーの手は上がらず、テレビマッチオフィシャル(TMO)を要求するジェスチャー。FBピータースがCGの準備を行う中、場内のモニターに接地のシーンが映し出され、もう一度スタンドが沸く。
少し間を置きレフリーが両手を横に振りトライの不成立を宣言。接地の前に、ノットリリースザボールがあったとして、ゴールライン際からのペナルティキックを近鉄に与える。これを蹴り出しノーサイド。
近鉄をあと一歩まで追いつめたリコーだったが、今節も勝利を逃し3連敗。7点差以内の敗戦で得られるボーナスポイント1は獲得し、総勝ち点は2としている。
「このままでは終われないという気持ちを、1人ひとりが行動に出していかなければ」(HO滝澤佳之)
神鳥裕之監督
なんとしても落とせないという強い気持ちをもって臨んだのですが、結果的に勝負どころでのミスという過去2戦の反省が、まだ少しクリアできない。いくつかトライチャンスがあった中、近鉄さんのペースで試合を続けてしまったところが、こういった結果につながった理由かと思う。後がない状況なので、次のサントリー戦にむけて前を向いて準備していきます。
(後半、FLブロードハーストがシンビンとなったが、あの場面について)これまでの試合の反省で、モールディフェンスは重要視していたところで、選手もパフォーマンスを出そうとした結果。それだけ近鉄さんのプレッシャーがあったということでもある。やむをえないと考えています。
(最後のTMOはどう見ていたか?)映像を見た限りでは微妙な判定になるのは確かで、どのような判定になるかなという思いで見ました。勢いはあり、身体は入っていたように見えましたが。【以上共同記者会見にて】
今日は勝たなければいけなかった試合でした。ブレイクダウンのところ。前のキヤノン戦の勢いのあるブレイクダウンに後手に回る、1歩2歩遅れる場面が目立ったので、セカンドマンのスピードというところはフォーカスして臨みました。
前半は選手もよくやってくれて、いいシーンもあった。それでも、しつこいディフェンスに球出しのテンポを遅らされる場面はありましたので。あそこのテンポが悪くなると、我々のやりたいラグビーができなくなってしまう。
(前半は風下ながらよく戦えていた)風下でよく頑張って、トライも最初に獲れて、射程圏内で後半に迎えたのはいい流れだったと思います。後半もダン(FBピータース)がうまくキックを織り交ぜながら敵陣に入ろうとしていた。ただ、勝負どころで反則が出てしまった。その理由? ルールの解釈、コミュニケーション、経験、近鉄さんのプレッシャーなど、ディシプリンの問題については、いろいろなことが絡み合っていると思います。
全員一丸となって、やるしかない。追い込まれた強さ出す。その前にビデオをしっかり観て、修正点を明確にする作業も1週間やっていきます。
WTB小松大祐キャプテン

これまでの2試合と比べると、セットプレーも安定して、しっかりエリアも獲れていて、相手の陣地でリコーのアタックができていた。でも、ここぞというところのブレイクダウンでプレッシャーを受け、いいテンポのラグビーができなかった。ブレイクダウンはどのチームも激しくくるので、しっかり練習し、いいテンポでラグビーができるように頑張ります。
(ペナルティが多かったが、その理由はどのあたりに?)ディフェンスのブレイクダウンにかける人数が少し多めになってしまった。近鉄さんのプレッシャーがあったからかもしれないが2、3枚でいいところを4、5枚と入ってしまい、その結果、後手後手のディフェンスになっていた。あとは、少し寝てプレーすることが多かったとも感じています。
(選手の飛び出しが早く、反則を取られている場面も多かったが?)隣の選手とよくリンクして1枚でディフェンスできるのが一番良かったのですが、少しコミュニケーションが足りなかったのと、あとは近鉄さんがいいテンポでアタックしてきたので、1人が前に出て、1人が下がって、みたいな形が出てしまった。
(後半、FLブロードハーストがシンビンとなったが、あの場面について)シンビンが出た後、簡単にトライを与えてしまったと考えている。もう少し我慢したかった。【以上共同記者会見にて】
HO滝澤佳之

個人的には細かいミスが多かった。チームとしては、ちょっとシェイプが崩れている。もうちょっと強気に攻めてもいいような。様子を見ながらやっているような感じがあったので、思い切ってアタックするところはアタックして。少し勢いが足りなかった。
(3連敗で)チームとしては嫌なムードになると思う。考えたくないことを考えてしまう雰囲気にもなると思う。こういうときは、選手1人ひとりが、このままでは終われないという気持ちを行動に出していかないといけない。練習から声を出すとか、小さな行動でもいい。そうしないとずるずるいってしまう。
とはいえ、結果は紙一重だったとも言える。この結果を軽く考えるわけではないですけど、重く考えすぎないことも大事。
LOロトアヘア ポヒヴァ大和

うちのラグビーができていなくて、今日の結果につながった。アタックのシェイプのところとか、サポートのところ。足りないなと。うまくいかなかったのは、相手のプレッシャーもあるし、うちの判断のミスもある。残り試合、1試合1試合勝つというイメージを持って取り組んでいきます。
LO柳川大樹

ブレイクダウンのところで受けてしまった。相手の統悦選手(FLタウファ統悦)に何本も絡まれてしまって。(今季初先発にあたって、コーチから言われていたのは?)ロータックルとハードワークの徹底です。
SH中村正寿(トップリーグ初先発)

(これまでで最長時間プレーして感じたことは?)プレーの進め方。前半からやろうとしていたことを継続してやれたかというと、そうではなかった。継続していかないと得点も獲れない。いい方向に進んでいかないと感じました。
雨ということもあった。滑るのは避けられないけれど、そのあとのフォローを全員で対応していかないと。後半は、追い風を生かしもっと敵陣に入っていこうとハーフタイムで話しましたが、それもあまりうまくできなかったと感じています。そういう課題を徹底してやっていけるように。
SH山本昌太

開幕戦と第2戦をスタートで出してもらったけれど、自分のパフォーマンスもチームの結果もでなくて。今回はリザーブということで、時間は短かったんですが、個人的にはまたスタートの位置を獲りにいく気持ちと、試合の流れ的にはトライがほしいところだったので、もう一度自分のプレーをしようと。
結果にはつながらなかったけれど、チームとしては次につながるゲームになったと思う。(ラインブレイクもあったが?)積極的に前を向いて、本当にトライがほしい場面だったので、自分からもいこうと。3戦勝ち星がないので、次のサントリー戦はなんとか勝てるように。
SOコリン ボーク

80%はいい試合ができたが、60分を過ぎたあたりからエラーが出てしまった。ハンドリングエラーとかそういうものですね。それによって、エリアを獲りにいくのが難しくなってしまった。でも、ほとんどの時間帯では今までよりいい試合ができたと思う。勝つところまで、あと少しのところに我々はいる。次の試合までにすべきなのは細かいこと。勝利はすぐにやってくる。
(この3試合、いずれも惜しいゲームに映ったが?)はい。すごく頑張っている。外からは見えにくい努力をずっとしてきている。それに対するご褒美がもらえてない状態。それはフラストレーションにつながる。勝つことが大事だし、勝つ実力はある。
次の試合に向けてこれまで通りのハードワークを続けていく。ただ、少し出てきているエラーというものはカットしていく。
(直していくべきだと思っているのは?)ディフェンス。特にセットピースディフェンス。つながりのところで、みんなが同じように考えられるようにやっていきたい。