2013-2014 トップリーグ 2ndステージ第7節 対 クボタスピアーズ

2014.01.22

果敢なアタック続け、アンラッキーを前半のうちに帳消しに

 2ndステージ第6節の勝利で、グループB4位を維持したリコー。状況的には最終節クボタスピアーズ戦に勝利すればグループ4位以内が決定する。

豊田自動織機戦で取り戻した接点での激しさは、リコーのアタックを一変させていた。精度を上げるための準備を続けることが勝利への最短ルートだという確信は、チームに集中力と一体感をもたらしていた。

久々の秩父宮ラグビー場でのホームゲームは、リコーが攻勢を見せて始まる。

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 クボタのキックオフを確保し蹴り返す。ハーフウェイライン付近のラインアウトをいきなり奪うと、NO.8マイケル ブロードハーストが右サイドを突いてアタック開始。フォワードとバックスが一体となったアタックを見せ、2分ほどフェイズを重ねる。惜しくもノットリリースザボールを獲られたがテンポのよい攻撃は、前節同様の勢いがあった。

さらに6分、自陣から相手の反則に乗じて前進。クボタ陣内10mライン付近左サイドのラインアウトを得る。

これをキープしSH山本昌太にボールを渡すと、山本がギャップ見出しこれを抜けて左中間をゲイン。フォローしたLOロトアヘア ポヒヴァ大和、NO.8ブロードハーストとつなぎ左中間ゴール前までボールを運ぶ。素早くボールを出し右に展開。正面からインゴール右隅へCTBタマティ エリソンが転がす。WTB渡邊昌紀、FB星野将利が押さえにいくが、クボタ11番がわずかに早くセービングする。

いいアタックを見せるがスコアできずにいたリコーは、クボタ12番のコントロールされたキックでゴール前にボールを運ばれる。ラインアウトからモール、さらにSH山本がハイパントを蹴って攻め上がろうとするが飛び出しがはやく、オフサイドを犯す。

10分、クボタは正面やや右の位置でショットを選択しペナルティゴール成功。0-3と先制する。

クボタはキックオフからのリコーのアタックをしのぐと攻勢。キックを交えリコー陣内に攻め込むと14分、ギャップを突いた8番の中央突破などでゴール前へ。リコーはFB星野らのタックルでこれを止め、さらに冷静にランナーを押し出してラインアウトにする。確実にキープするとキックを使ってボールを押し戻した。

だが、リコーは自陣浅めで得たマイボールスクラムで反則。さらにクボタの速攻に対しオフサイド。18分、正面40m弱のペナルティゴールを確実に決めたクボタが0-6とする。

直後リコーは相手のハイパントをCTB小松大祐が獲得。これを起点に攻め込みチャンスをつくる。22mライン手前まで進み、SO河野好光がディフェンスライン裏にキック転がすがこれは処理された。

ここから蹴り合いを経てクボタがアタックを見せ、リコーにホールディングの反則。再び自陣へ押し戻される。だが、ディフェンスの安定感は保たれ、ラックで果敢にボルを奪いにいったFL武者大輔に抗った相手選手が倒れ込みの反則。リコーはペナルティキックで前進。すぐにクボタ陣内に攻め込んだ。

26分よりリコーがボールキープして激しいアタック。SO河野のラインブレイクでゴール前に進むと、フォワードが次々と突進。CTBエリソンも狭いギャップに身体をねじ込みゲインを狙う。

ラックでこぼれたボールを蹴られ、ボールは一度自陣に戻されたが、FB星野ら戻った選手がつくったラックで激しくディフェンスしボールキープ。すぐさま攻撃再開。

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 CTB小松のビッグゲインで再びクボタ陣内へ。PR長江有祐の鋭いアタック、HO滝澤佳之の献身的なサポートなどで再びゴール前にボールを運び29分、正面のラックから左へ出す。CTBエリソン、FB星野を経てCTB小松に渡り左中間からインゴールへ。しかし正面に回り込もうとしたところでボールがこぼれトライならず。猛攻を見せるもスコアできず、スタンドのリコーファンから溜息が漏れる。

30分、クボタボールの5mスクラムでリコーにアーリーエンゲージ。フリーキックでエリアを戻される。

リコーはラインアウトからモールでプッシュ。リコーコールが響く中、もう一度22mライン付近まで攻め込むと展開。SO河野からの長いパスを受けたFB星野が右サイドを突きゲイン、相手を引きつけWTB渡邊へパス。これスローフォワードで再びクボタスクラムに。

何度も阻まれるリコーだが、あきらめず攻め込む。34分、自陣からWTB長谷川元氣のゲインで攻め込むと右サイドをNO.8ブロードハーストが突破しゴール前へ。HO滝澤がサポート、ラックでこぼれたボールをFL馬渕武史が反応よくセーブしボールを渡さない。

ラックに寄り、SO河野が出したボールを受けたCTB小松がミスマッチに仕掛け突破。35分、右中間からインゴールへ入りポスト右にトライ。攻め続け、獲るべき選手が獲ったリコーが7-6と逆転する。

リコーはその後も攻め続け、勢いに乗ったまま前半を終えた。

試合が進むにつれ高まる集中力。攻守でキレを見せ完勝

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後半開始早々、リコーは敵陣右中間のラックでターンオーバー。CTBエリソンのゲインなどで攻めたてる。激しいディフェンスに遭い、PR長江がタッチラインの外に押し出されるが、クボタがラインアウトからのキックで距離を出せず、リコーは右サイド22mラインの内側でラインアウトを得る。

これをキープしモールを組む。じりじりと押し込み3分、なだれ込んだLOカウヘンガ桜エモシが右中間にトライを決めた。コンバージョンも成功し14-6とリードを広げる。5分、HO滝澤に替えて森雄基。

リコーはさらに6分にSO河野が中央を突破。9分にはラインアウトから展開したボールを、ここも河野のキックでクボタ陣内深くにボールを運び、攻め込んでいく。

10分、右サイド22mラインの内側のラインアウトから、LOカウヘンガがショートサイドを突く。カウヘンガはつかまれながらも、右に走り込んだHO森にやわらかなパス。森はライン裏に抜け出して右中間インゴールへ達しトライ。後半の入りを制したリコーは21-6とした。

クボタは15分にペナルティキックで前進。ゴール前ラインアウトからモールで押し込みインゴールへ。しかしFL武者らのディフェンスでグラウンディングを阻んでトライを許さない。

リコーは5mスクラムからのアタックにも冷静に対処。ランナーを捕まえると、サポートの選手をSO河野が押し込み、ボールを乗り越えターンオーバー。こぼれたボールをSH山本が即座にライン裏に蹴ると、拾いにいったクボタがノックオンオフサイド。リコーはゴール前に蹴り出してラインアウトのチャンスを迎える。

これをキープ、さらにフォワードが押し込んでゴールラインに迫ると、ラックかのボールを拾ったカウヘンガがインゴールに達し身体を反転させながらボールを押し付けグラウンディング。レフリーの手が上がりトライ。ターンオーバーからのアタックで18分、ボーナスポイント獲得を決める4トライを挙げリコーが28-6とした。

19分、リコーはNO.8ブロードハーストに替わりコリン ボーク、CTBエリソンに替わりロイ キニキニラウ。

21分、クボタはリコー陣内の左サイドのラインアウトから展開し攻める。リコーはディフェンスに徹するとラックでボール乗り越えターンオーバー。NO.8ボークのキックは相手の正面を突くが、最終ラインで回したパスに対し、CTB小松がインターセプトを狙う積極性を見せる。

再び攻め込んだクボタは、ゴール前でボールを回しギャップを狙う。リコーはよく対応したが25分、中央から12番が右サイド14番へ意表を突くキックパス。これが通って右隅にトライ。コンバージョンも成功し28-13となる。

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 残りはまだ15分。次のトライによってはクロスゲームにもなる状況を迎えた。リコーは27分、SH山本に替えて池田渉を投入。経験に基づく判断力に試合のフィニッシュを託す。

クボタは引き続き攻勢をかける。だがリコーの運動量はその後も落ちずブレイクダウンで身体を張り集中力を維持する。30分を過ぎアタックに転じると、細かくパスを回しボールをキープしながらディフェンスラインをかく乱していく。

ラスト5分をリコーは統制のとれたディフェンスで耐え抜きホーンを迎える。ホーン後、クボタはゴールまで1mにまで攻め込むがリコーはこれをとらえ続け、ラックで奮闘しボールを奪取。PR桑原大祐、LOカウヘンガとつないで蹴り出さず展開。SO徳永亮からNO.8ボークへ。ボークは長いパスでCTB小松につなぎ左サイド突破を狙うが、これはスローフォワード。

ここでホイッスルが吹かれノーサイド。リコーはトップリーグ2ndステージ最終節を勝利で飾り、通算で4勝3敗として勝ち点は25に。これでグループB4位以内を確定させ、2週間後に始まるワイルドカードトーナメント進出が決まった。

「流れをつかめないままシーズン終えず、地に足をつけて、力を出してくれた」(神鳥監督)

神鳥裕之監督

「今日は久しぶりのホーム開催でしたが、たくさんの応援ありがとうございました。相手の状況やポイントの計算云々よりも、まずはこの試合に必ず勝って未来を切り拓くという気持ちで臨んだ最終戦でした。選手たちがしっかりと役割を果たしてくれて、勝利をつかむことができたのはまずよかったと思います。これで最低限の結果を残すことができました。次のワイルドカードに向けたチャレンジをテーマとして取り組んでいたので、そこに向けて準備をしていきたいと思います。
(前半なかなかスコアできなかったが?)確かにばたついた場面はあったのですが、ボールをキープして、フェイズを重ねていけば相手のディフェンスを破れるようなシーンが見えていたので、チャレンジしていこうと伝えていました。
(ワイルドカードトーナメントに向けての思いを―)当然次の試合からはグループAで戦っている上位のチームとの試合になる。豊田自動織機戦と今日のクボタ戦での戦いを我々のスタンダードにして、セットプレーのクオリティやブレイクダウンのアグレッシブな姿勢をキープしていければ十分通用すると信じています。今シーズンは試合を通じてパフォーマンスが安定しないことが課題でしたが、この2試合は改善できている。同じようにチャレンジしていきます 」(会見にて)

「今日は、非常にいいマインドでした。準備がしっかりできていたというのもあると思う。アタックもディフェンスも、ここにきて精度が高くなってきて、セットプレーに関しても求めるスタンダードまで持ってきてくれた。この2試合のような戦い方を続ければ、上位にも十分通用すると思いました。このクオリティと安定感をいかに保つかは上位進出に向けた課題ですね。
(選手交代前後もプレーの質が変わらないように映り、底上げを感じる―)ケガ人の問題もあったので結果的にではありますが、たくさんの人間がトップリーグの舞台に立つことができたのは来シーズン以降の財産になったとは思っています。もちろん、それだけではまだトップ4には通用しない。コンスタントにスタンダードを出し続ける安定感を求めて努力していきます。
(大事な試合で雑念を入れず、自分たちのラグビーに集中できた。チームに成熟を感じるか?)成熟というにはまだまだですが、追い込まれた局面で力を出せたのは評価できるかなと。結果を出せず、ずるずると流れをつかめないまま終えてしまうシーズンを僕自身も経験したことがあります。しっかりと地に足をつけて、力を出してくれたのはひとつの成長だと思います。
(踏ん張って、ワイルドカードトーナメント進出が決まったが?)最低限の状況をクリアしたに過ぎませんが、チャレンジに向けた環境は整ったと思います。ここまでくればやるだけ。上位チームに対しどこまでやれるかは、自分自身としても楽しみなので、しっかり準備していきたいと思います。応援してくださったファンの方にはやきもきさせるシーズンだったので、最後ぐらいは恩返しできる試合をお見せしたいと思います」

CTB小松大祐キャプテン

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「ものすごく疲れました(笑)。1週間準備してきた結果を出せたと思います。特にフォワードのブレイクダウンとセットプレーは、今まで一番良かったんじゃないかと思うくらい頑張ってくれたので、それでバックスも前に出ることができました。今日の勝利をしっかり喜んで、ワイルドカードトーナメントに向けて準備していきたい。
(前半追いかけている状況で、インゴールでノックオンがあった。苦しかった場面だと思うが、そのときの状況は?)ノックオンは僕のミスだったので反省しています。ただ、あの状況でチームが盛り下がることもなく、フォワードが取り返そうっていう言葉を僕にかけてくれたので、僕はあそこでチームに引っ張られた形。いいアタックができていたので、それを継続していこうという感じでした。後手後手に回ってはいなかったので。
(ワイルドカードトーナメントに向けての思いを―)グループAの試合もテレビで観ていますが1人1人のフィジカルが強い。1対1で負けないことと安定したセットプレー。ここを精度高くやっていけば、上にいくチャンスはあると思っています」(会見にて)

「前半の特に最初のスタートのところは、自分たちの形ではできなかった。ディフェンスもリンクできなくて間を抜かれて、アタックもはやくセットできなくて、SOがパスをどこに出そうか迷う場面もあったので。そこを徐々に修正していって、ボールもつなげて、ボールキープしてアタックできたので。前半の途中からは自分たちのやりたいラグビーができました。ただ疲れてきた時間帯にまたセットが遅くなったようにも感じています。そこは修正したい。
(立ち上がりは2ndステージ入ってからの課題。今日も危ない展開になりえたのか?)いつもと違って雰囲気は悪くなかった。チームの中に盛り上がりもあったので、獲られかけていてもポジティブなムードがあった。ボールキープできていたので、これが続けられればトライ獲れるという自信があったので。プレーしていて手応えがありました。あとはディフェンス。『ディフェンスからやろう』と声をかけあっていましたが、それを実践できた。ここ2試合のディフェンスはいいんじゃないかと思う。
(ワイルドカードトーナメントに向けて―)自分たちは1stステージで悔しい思いをしているので、そのリベンジ。上のチームに対するチャレンジなので、硬くなったり考えすぎずに、今日みたいにシンプルに戦えるんじゃないかと。勝つだけ。タフな試合を続けてきているので、そこでは負けません」

HO滝澤佳之

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「この2試合はいい感じですね。自分自身も考える前に身体が動いているというか、そういう感覚を持って、気持ち的にすっきり戦えている。フォワードもいい仕事できていると思います。
(何かが変わったのか?)終盤戦に入ると立ち位置が明確になってくる。勝てばいけるし、負ければ落ちる。その緊張感があると思う。ただ、状況に左右されずに今のような力を出せなければいけないとも思う」

HO森雄基

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「決勝戦のつもりで臨んだ。あとがない、崖っぷちの状態だったのでチャレンジャーのつもりで思い切ってやろうと。自分たちのプレーをすれば結果はついてくると。変に「自分が、自分が」とやろうとするのではなく、チームとしてプレーする。変な飛び出しをしないように気をつかった。チームディフェンス、組織を意識しました。
(先輩・滝澤からバトンを受け取る試合が続いているが?)後半から出てセットプレー、スクラムでどんどんいくというのが仕事。今日もいつも通りスクラム安定させようと思っていました。まずは自分の仕事を100%やって、そのうえで1つでも2つでもいいプレーが加えられればいいと。タックルやブレイクダウンのミスはないように。
今日は喜んで、明日から気持ち切り替えてやっていく。1試合1試合チャレンジャーとして頑張っていく。ひたむきにやっていけば通用する。
(フォワードの状態がかなり良く映る―)九州電力戦でモールトライを獲れてからフォワードに自信がついてきた気がする。試合中も皆が意見を出し盛り上げようとしています。(冷静さと熱さ、両方感じる―)チーム全体がそういう感じ。特にキャプテンの小松さんは両立がうまい」

FL馬渕武史

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「継続してずっとやってきたことが実を結んだと思う。(フォワードの調子がいいが?)モールを武器にしようと言いながらも、トライが獲れない時期は長かった。モールをあまり使わないでいこうかという話もしました。それでもシーズン当初に決めたことを守るという決断をしてやり続けたことで結果が出ている。
今日は敵陣にいけばスコアできるという手応えはあった。アタックしていても戻される感覚がなかったので。自陣では無理をせず、敵陣に進んでアタックしていこうと。(後半入り10分は理想的な展開になった―)そこで試合を決めようとハーフタイムに話していました。日本選手権には出たことがないので、ぜひ2つ勝って出場したいと思います」

武川正敏バックスコーチ

「勝てば抜けられるので勝とうと。シンプルに考えて準備しました。アタックはサポートを早く、ディフェンスは面を崩さないようにとか。ここ2試合はコンタクトシチュエーションで有利を保てていて、クイックボールが出せています。アタックの形はできあがっているので、いいボールが出せればいいアタックはできるという感触はあります。
(フォワードがパスをつなぐシーンも―)身体を大きくする方針は長く続けてきて、サイズでは上回っている。決まった選手が狙われるのを避けるために、パスも意識させてきたがそれができるようになってきた。
(ワイルドカードトーナメントに向けて―)難しいことを考えず、まずはリカバリーをしっかりして、ベースをしっかりやっていく。タックル、サポートというような」

2勝3敗と厳しい状況に追い込まれた第5節から、勝ち点を5点、5点と獲得してのグループB3位。リコーは底力を見せこの先への望みをつないだ。チームは日本選手権への出場を懸けるワイルドカードトーナメント1回戦、トヨタ自動車ヴェルブリッツ戦(2月2日(日)14時20分~ 名古屋市瑞穂公園ラグビー場)に臨む。

ランナーの突破。献身的なサポート。ラックのボールがさばかれた瞬間、次の突破への予感が漂う胸のすくようなラグビーを見せ始めたリコー。2013-14シーズンのクライマックスは、まだこれから。さらなる声援をよろしくお願いいたします。


(文 ・ HP運営担当)

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