2013-2014 トップリーグ 2ndステージ第5節 対 九州電力キューデンヴォルテクス

2014.01.08

逆転負けの悔しさ、晴らすべく福岡へ

 昨シーズンの九州電力キューデンヴォルテクス戦は、本当に悔しい試合だった。4連勝で前半戦を終えたものの、ウインドウマンス明けの試合に敗戦。こんなはずでは―― 違和感を感じながら臨んだ九州電力との試合で、リコーは試合終了直前のトライとゴールで1点差の逆転負けを喫した。わずかな歯車の狂いが結果を一変させてしまう。勝負の厳しさを知らされる印象深い敗戦だった。

もちろん選手はそのことを忘れてはいない。1年を経て、敗戦を糧にリベンジを果たすという思いを抱き、今シーズン2度目となる福岡・レベルファイブスタジアムに乗り込んだ。

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 九州電力のキックオフで試合が始まる。このボールの争奪でジャンプした選手が地面に降りる前にタックルが入ってしまいリコーに反則。九州電力はペナルティキックでいきなりゴール前ラインアウトのチャンスをつくる。

左サイドから展開し、中央を12番が突進。ポイントをつくり展開、ボールを右へ運ぶと14番が大外を破っていきなりトライを決める。コンバージョンは外れたが0-5と先制する。

リコーは直後に敵陣に侵入。ブレイクダウンで互いに激しくぶつかりあい、ターンオーバーが繰り返される。

7分、リコーは自陣からのタッチキックで九州電力陣内のラインアウトに。九州電力がラインアウトをキープし、ハイパントを上げるとこれが弾んでリコーに入る。ハーフウェイライン付近にラックをつくると、SH山本昌太が思いきりよく仕掛け中央のラックサイドを突破。一気にゲインする。

22mライン付近で右に出し、NO.8コリン ボーク、CTBリキ フルーティとつなぎ、CTB小松大祐が右中間インゴールに達しトライ。この日プレースキッカーを務めたCTBフルーティがコンバージョン成功。リコーが7-5と逆転する。

すぐ後、キックオフボールを確保したリコーはNO.8ボークが縦に突進。さらにCTB小松も前に出る。左中間のラックからボールを下げ右に展開。自陣でパスを回すと九州電力の激しいプレッシャーを受けノックオン。自陣22mライン上での相手ボールのスクラムとなる。

九州電力は展開して攻撃。リコーはランナーをタッチラインの外側に押し出しボールを奪い返したが、ラインアウトからハイパントを上げると、九州電力が十分な体勢でキャッチ。左サイドからアタックに転じ、パスを回し右サイドを攻める。深めのラインからスピードに乗って仕掛けた11番に、リコーがタックルミス。突破を許すと12分、11番をフォローした12番が右中間にトライを決めた。コンバージョンも成功し7-12。九州電力が5分でリードを奪い返した。

リコーはすぐ後の16分、右サイドのラインアウトから中央を攻めると九州電力にノットロールアウェイ。ほぼ正面40m弱の位置からペナルティゴールを狙うがこれは不成功。

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 リコーはさらに敵陣スクラムで押し勝って反則を奪うと速攻。ノット10mバックも獲って22mライン付近まで攻め込んだが、ラックからボールを出そうとしてノックオン。さらにスクラムでコラプシング。ペナルティキックを蹴られ自陣に押し込まれた。チャンスをミスで逸しスコアできず。

ライン裏へのゴロキックを多用して前進を図る九州電力はギャップを突き、徐々にゲインしてリコー陣内へ。22mラインの内側でリコーは激しくディフェンスしラックでの反則を誘う。

しかし、蹴り込んだペナルティキックをキャッチした九州電力はボールを展開。スピードに乗って攻め上がる。対応の遅れたリコーは受けに回り前進を許す。九州電力は一気にリコー陣内へ。

ところがリコーは22mラインの内側でこぼれたボールをターンオーバー。SO徳永亮がギャップに仕掛け突破。ライン裏へ抜け出しハーフウェイライン付近まで前進。右をサポートしたWTB長谷川元氣にボールが渡ると加速。26分、ディフェンスを振り切って右中間にトライ(コンバージョン不成功)を決めた。リコーは1チャンスを生かし12-12として追いついた。

直後攻め込んだリコーだったが反則を繰り返し九州電力がリコー陣内に侵入。右サイドのラインアウトをキープし大きく展開、左サイドを攻める。すると30分、スピードに乗ったバックスがタッチライン間際を突破。リコー陣内になだれ込むとそのままインゴールに達し11番がトライ。コンバージョンも成功し12-19。

前半ラスト10分はリコーが九州電力陣内にボールを持ち込むもハンドリングミスが相次ぎフェイズを重ねることができない。結局、九州電力が主導権を握りったまま前半は終了する。

後半3トライで追撃。しかしまたも届かず

 メンバー交代なしで後半がスタート。開始直後にNO.8ボークが突破を見せる。ゴール前までボールを運ぶが、ボールキープできず相手ボールに。ここから互いキックを使ってエリアを獲りにいく。約3分間プレーが切れずめまぐるしい攻防が続いた。

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 6分、リコーは自陣スクラムから回し、右サイドをWTB横山伸一らが突いてうまく攻め込む。しかし、捕まえに来た相手に頭を下げて抗うと倒れ込みの反則を取られ、九州電力がペナルティキックで押し戻す。

リコーはここでSO徳永に替えてタマティ エリソン、NO.8ボークに替えて馬渕武史をピッチに送る。CTBフルーティがSOの位置に、エリソンはCTBに入る。

リコー陣内10mライン付近のラインアウトから九州電力が中央でアタック。すぐにディフェンスするリコーに反則が出る。アドバンテージを得た状態で九州電力が果敢に攻め左サイドになだれ込むと9分、4番がトライ。コンバージョンははずれたが12-24と点差が広がった。10分、リコーはHO滝澤佳之に替えて森雄基。

点差が12点まで開き、なんとしてもトライが必要なリコーはSH山本が中盤のギャップを抜けてラインブレイク。ゴールライン手前まで攻め込む。

九州電力の激しいディフェンスに遭い倒されるが、リコーはボールキープを意識してダイレクトに攻める。何度かインゴールになだれ込むが、レフリーの手は上がらず、5mスクラムからのやり直しが続く。

そして22分、左中間5mスクラムからSH山本が左側のスクラムサイドを突くと九州電力がハイタックル。アドバンテージが出た状況でリコーは右サイドへ展開。CTBフルーティからつなぎCTB小松が右中間にトライ。コンバージョンははずれたが、17-24とする。

しかしそのすぐ後の25分、反則でゴール前ラインアウトを与えると、九州電力がドライビングモールを狙う。対応で混乱する中、九州電力7番にトライを奪われる。粘り強く攻めてとったトライの直後にあっさり失点する歯がゆい展開で17-31と点差が開く。

このままでは終われないリコーは反則を奪って前進。31分、ゴール前左サイドのラインアウトのチャンスを得るとモールを組み、教科書のようにドライブ。インゴールまで突き進むとFL武者大輔がトライ。コンバージョンも成功し24-31。再び7点差とする。32分にSH山本に替わり神尾卓志。

相手の背中をとらえたリコーは、やや焦りも見えた九州電力のアタックを受け止め、反則を連続で奪って前進。ゴール前ラインアウトのチャンスを得ると再びモールで押す。

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 ディフェンスに追われる九州電力がオフサイド。再びラインアウトにして攻める。大半を占める九州電力の応援の中で、声を枯らし応援を続けたリコーサポーターが勝負をかけるフォワードに最後のリコーコールを送る。

声援を背に受け39分、左中間にフォワードがなだれ込む。一瞬の静寂を置いてレフェリーの手が上がる。LOカウヘンガ桜エモシのトライで29-31。ついに2点差、コンバージョンの準備をする中ホーンが響く。

開幕戦に続く「決まれば引き分け」のコンバージョンをSOフルーティが蹴る。しかし、高めに上がったボールはわずかに左に逸れ、アシスタントレフェリーの旗は上がらずにノーサイドのホイッスルが響いた。

リコーは2ndステージ3敗目(2勝)を喫した。「5トライ」「7点差以内の敗戦」でボーナスポイントを2ポイント獲得。通算勝ち点を15としてグループB4位に。残り2試合にワイルドカードトーナメント進出を懸けることとなった。

「少し崩れたとき、立て直して組織ディフェンスを見せられるように」(CTB小松大祐)

神鳥裕之監督

「今日はありがとうございました。九州電力さんとの試合では昨シーズン悔しい思いをしているので、今日は勝って2014年のいいスタートを切りたいと思って臨みました。しかし前半からアグレッシブでスピードのある攻撃に受けに回ってしまいました。試合中、立て直すシーンもあったのですが、結果的にその勢いに押し切られてしまった。そこが反省点です。また土曜日に試合があるので、気持ちをひきずらずしっかり前を向いていきたいと思います。
(九州電力のどの部分が予想より秀でていたと感じたか?)予想外だとは特に感じませんでしたが、ディフェンスの部分、試合の入りのところで、1人目がしっかりタックルで下に入れなかったり、コミュニケーションのミスであわてて飛び出してしまったシーンがあったりだとか。自分たち側に思うような形をつくれなかった問題があったと感じています」(記者会見にて)

「九州電力に展開力があるのはわかっていましたが、そこに付き合ってしまって前半からばたついてしまった。2つトライを獲ったような試合展開にもう少しはやく持ち込めていたら、状況は変わったかもしれません。本当にたらればになってしまいますが。最後の最後で勝ち点2を確保したのは次につながる成果。大きなトライでした。(なかなかリードを奪えない試合が続いているが?)なんとか食らいついているのですが、結果が結びつかないのは厳しい。課題はブレイクダウンでの反則が目立っていること。クイックボールが出せずテンポが上がらない。そういう状態が2試合続いています。ただ、ボールをキープして仕掛けることができれば、トライを奪えてはいる。ただ、球出しが遅れたり、もう少しボールをキープしたい場面で軽いプレーをしてしまったりという小さなミスの積み重ねが響いてしまった。アタック自体の決定力はあったと思います。(後半タマティ エリソン、リキ フルーティ両外国人選手をバックスに。采配の狙いについて?)後半に入ったところで、インパクトを加えたいと思いました。タマティも心身ともに充実していましたので。
痛い敗戦ではありますがまだ4位。悲観することはないと思っています。クボタと豊田自動織機に勝てば十分光が見えてくる状態。下を向かずにやっていけば結果はついてくると信じ準備します」

CTB小松大祐キャプテン

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「ディフェンスが後手後手に回ってしまって、追いつけない範囲まで点差を広げられてしまったのがペースをつくれなかった要因だと思っています。とにかく1戦1戦5ポイント獲って勝たなければいけないので、次の試合に向けて準備していきます。
(7点差に迫った終盤、パワープレーに固執したようにも映ったが?)まだ10分あったので、焦らずダイレクトなプレー、特にフォワードのところでしっかり(相手の選手を)寄せてからバックスに出そうと考えました。それはトレーニング通りにできたと思います。ただ外に回せる状況で回せなかった場面もあったので、状況判断はもっとうまくやらないといけない。でもフォワードの(ダイレクトに攻める)プレーはよくできていたと思います。(回せなかったのは九州電力のディフェンスに阻まれた面もある?)ブレイクダウンでプレッシャーがかかっていて、ハーフがうまく出せず、結果的に外に回せなかったケースもありました」(記者会見にて)

「我慢してディフェンスしているときは、相手のアタックに怖さを感じることはなかった。少し崩れてしまったとき、本来のディフェンスに立て直し組織ディフェンスを見せていくことができず、簡単にトライを獲られてしまった。集中しているときはすごくいいディフェンスができています。前半のディフェンスを意識してやり直したい。
アタックはトライが狙えるエリアでのアタックをもう一度整備したい。バックスとフォワードのコミュニケーションのところ。今日はブレイクダウンでプレッシャーをかけられていたのもあるけれど、どういうアタックをすべきだったのか、もう一度確認したいです。中盤でのアタックはいい形もありました。ゴール前は相手のディフェンスも堅くなるものですが、そこで焦らずに獲りきれるように。まだ4位に踏みとどまっているので、1試合ずつ戦っていきます」

PR高橋英明

「なんとしても勝つことをテーマに置き、試合の中ではその意識が途切れないように声をかけていました。ですが、立ち上がりでのトライをはじめ前半に獲られすぎたのが響いてしまった。(後半はフォワードが一体感が光った)あそこは相手のディフェンスのプレッシャーが激しかったので、近場で勝負しようと考えていました。今シーズン獲れていなかったモールでのトライが獲れたものの、勝利という結果にはつながらなかったのは残念」

FL柳川大樹

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「悔しいです。自分たちのラグビーができなかった。アタックでもディフェンスでも。(最後フォワードは奮闘したが?)そうですね。モールでトライ獲れたのは大きい」

FL武者大輔

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「簡単にポンポン球出しされていたので、もう少しフォワードに絡んで、球出し遅れさせて自分たちに有利なディフェンスできるようにしようと考えていたのですが、なかなかうまくいかなくて。自分たちのディフェンスが悪くて負けた試合だったと思います。(プレータイムを重ね、自分のプレーに手応えは?)自分の“間合い”はつかめてきたかなと」

WTB横山伸一

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「結果はともかくプロセスがよくない。トライパターンも、獲られ方も、やってきたことが出せていませんでした。それをどう修正していくかだと思います。難しいがやらなければいけない。相手のディフェンスは良かった。自分たちはブレイクダウンで激しくいって勝つことを目指していたので、そこで押されて歯車が狂ってしまって…。最終的にはモールトライという収穫はあった。あれを前半からやって後半走り勝つ。そういうゲームにしないといけないなと。フィットネスは絶対負けていなかったと思うので。
(個人的なテーマは?)自分はアタックしかないので、アタックを意識していたのですが、そこでイージーミスが出てしまった。まだまだ足りない部分がある。(今シーズンは出場機会があまりなかったが、モチベーションは保てていたか?)大丈夫です。自分もベテランに近づいてきたので、むしろBチームのメンバーが気持ちを切らさないように意識してきました。混戦状態なのでトライ1つが結果に影響してくることもある。バックスリーで走っていきます」

 前節同様、前半の失点が響き、わずかに届かず敗れる歯がゆいゲームとなった。タックルミスによる失点を除けば、グラウンド上の個々のプレーで決定的な問題があったわけではない。むしろ今日の試合のモールトライのように、シーズンを通したチームの成長を感じるプレーも多々あった。課題は個々のプレーのクオリティを最終的な結果にいかにつなげるかだ。

次節、次々節はグループB上位を占める豊田自動織機とクボタとの試合となる。上位を撃破し勢いに乗ってワイルドカードトーナメント、そして日本選手権へ――。厳しいシーズンを諦めず戦い続けるリコーに、まずは残り2試合の熱い声援をよろしくお願いいたします。
※次節は1月11日土曜日、12時から愛知県・瑞穂公園ラグビー場にて、豊田自動織機シャトルズ戦です。


(文 ・ HP運営担当)

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