2013-2014 トップリーグ 2ndステージ第2節 対 NTTコミュニケーションズシャイニングアークス

2013.12.10

84日ぶりの勝利へ。背水の陣敷いたリコー

 「全勝」を目標に掲げ臨んだ2ndステージの初戦でコカ・コーラウエストにノーポイントで敗戦。1stステージの結果に基づくボーナスポイントを加算して決まる順位は最下位となった。チームは9月13日のキヤノンイーグルス戦から、84日間勝利を味わっていない。休止期間(ウインドウマンス)を経ても変わらない流れに、フラストレーションは高まった。

そうした状況に陥れば、「これまでとは違う何か」にすがりたくなるものだ。だが、結果が出ない中でもチームはプレーの精度を上げることに集中した。微調整は行いながらも、戦略についてはこれまでのやり方を貫いた。勇気のいることだったが、信念は勝利を呼び寄せた。

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 第2節の相手は、昨シーズンはトップリーグで敗れ、11月に行ったオープン戦でもスコアで上回られたNTTコム。試合はリコーのSO河野好光のキックオフでスタートする。久々の秩父宮ラグビー場はよく晴れ風もない好コンディション。

1分、蹴り返されたキックを後方でキャッチしたLOカウヘンガ桜エモシが突進。右サイドに展開してCTB山藤史也がオフロードパスをつなぎ、SO河野がギャップを狙っていく。

さらに継続。今度は左サイドをLOカウヘンガ、ロトアヘアポヒヴァ大和らが破り22mラインを越えていく。ここで素早くサポートが入りラックをつくると、ボールをピックしたSH山本昌太は、小さくパスダミーを入れ、ラックの右側のギャップを鋭く抜ける。そのまま左中間インゴールへと走り、いきなりのトライ。コンバージョンも成功しリコーが7点を先取した。

対するNTTコムは5分、リコー陣内にキックを蹴り込み、パスが乱れたところを詰める。リコー陣内での激しい攻防となるが、ディフェンスに回ったリコーにノットロールアウェイ。22mライン手前、正面やや左からのペナルティゴールが決まり7-3となった。

直後のキックオフでボールがこぼれ、リコーは敵陣でスクラムを得る。だがペナルティを犯し、NTTコムがリスタート。蹴り込まれたキックをキャッチしたリコーは、フォワードが鋭く前に出る動きを繰り返し見せていく。相手のオフサイドを突いてペナルティキックで前進。敵陣でのラインアウトを得るが、ボールを失いチャンスを生かせなかった。NTTコムは強みであるセットプレーで予想通りのパフォーマンスを見せる。

その後、ハーフウェイラインを挟んでキックを使ったエリアの奪い合いが続いたが13分、リコーがアタックを仕掛け、角度を変えて走り込んだCTB山藤がハイタックルを受け、ペナルティキックを獲得。リコーはこれをタッチに蹴り出し、右サイドゴール前ラインアウトにした。

ラインアウトをキープすると、近場をWTB長谷川元氣が勢いよく突く。このブレイクダウンでNTTコムがノットロールアウェイを犯す。15分、リコーは右中間22mラインを越えたあたりからのペナルティゴールに成功。10-3とする。

しかしNTTコムはキックオフ後のブレイクダウンで激しくファイトし、リコー陣内でアタックする局面をつくると、18分にハイタックルでペナルティキックを得る。ここはゴールを狙ったがはずれた。リコーのドロップアウトで再開後も、NTTコムが猛攻。21分、正面22mライン手前で鋭いタックルにいったFL武者大輔が、すぐに立ち上がり倒れた相手からボールを奪おうとしたが、一度手が離れていたとしてオフサイドの判定。今度はペナルティゴールに成功し、NTTコムが10-6とした。

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 追いすがるNTTコムに対し、リコーは直後のキックオフボールのこぼれ球を確保しラックをつくる。ここで左中間40m弱の位置から、NO.8コリン ボークがボールを前方に落とし、即座に右足を振り抜く。ボールはポストの間を抜けドロップゴール成功。13-6として、再びリードを広げた。

再びキックの蹴り合いが続いたが27分、スクラムから出たボールを自陣で受けたSO河野にNTTコムがプレッシャーをかける。ここでサポートにいったリコーにオーバーザトップの反則。NTTコムがペナルティゴールに成功し13-9とした。

リコーも30分、相手ボールのスクラムでフリーキックを得ると、蹴らずに回して再開。フェイズを重ね攻めていくと正面ゴール前でNTTコムにペナルティ。アドバンテージが出たのを見て、SO河野は右サイドにキックパスを上げる。WTB長谷川が走り込み、これをキャッチしたが、NTTコムのディフェンスがグラウンディングを許さず、惜しくもトライならず。しかし32分、ペナルティゴールを確実に決めて16-9。またもリコーが差を取り戻す。

前半最終盤はNTTコムが攻め込む時間帯となった。ゴール前でアタックを繰り返し5mラインの内側にまで侵入したが、リコーはよく耐え、失点せずにホーンを迎える。ラストワンプレーでSH山本がギャップを抜けてゲインするなど見せ場をつくり、前半を終えた。

後半の入りに畳み掛け、主導権を奪う

 互いにメンバー交代なしで後半へ。直後ハーフウェイライン付近のスクラムから、SH山本が持ち出すとPR長江有祐とつなぎ敵陣へ。一度ボールを失うが、キックをキャッチしたWTB小松大祐がカウンターを仕掛け再び攻める。

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 リコーはテンポよくボールを動かし、ランナーが鋭くディフェンスラインに突入し、ゲインしていく。サポートも素早く、確実なボールキープでフェイズを重ねていく。LOロトアヘアが右中間を攻め、つないでFB星野将利がスピードに乗って縦に突く。すると22mラインの手前でNTTコムがオーバーザトップ。4分、リコーは右中間25m付近からのペナルティゴールに成功し19-9とした。

さらに8分、ハーフウェイライン付近のスクラムからフリーキックを得てNO.8ボークが突破。CTBリキ フルーティにつなぎゲインすると、22mラインの内側ヘとなだれ込みながら、右サイドへボールを運ぶ。ラックでNTTコムがノットロールアウェイ。リコーはペナルティキックをタッチに出す。

10分、右サイドゴール前ラインアウトから右中間をモールで押し、LOカウヘンガ、ロトアヘアらが縦に突く。SH山本がゴール正面付近のラックから取り出したボールを、SO河野が左サイドのWTB小松大祐へとロングパス。ワンバウンドしたが、これが通って小松は左サイドへ今シーズン初トライを決めた。コンバージョンも成功し26-9と点差を広げることに成功する。巻き返しを狙う相手にプレッシャーを与える効果的な連続ポイントを奪った。

直後にHO滝澤佳之に替わり森雄基が入った。さらに15分、FL馬渕武史をマイケル ブロードハースト、CTBフルーティをピータース ダニエルに交代。フレッシュな選手を加え、リコーはゲインラインへのプレッシャーの維持を図った。NTTコムがボールを持つ時間もあったが、前進を阻み押し込んでいくうちに生まれるミスを突いて、リコーは敵陣でプレーする状況をつくっていく。18分にはラックに襲いかかったLOロトアヘアがジャッカル。展開して右サイドをFB星野が突く、フォワードとバックスが一体となった攻撃を見せる。

さらに敵陣で、攻めようとするNTTコムを止めていくリコー。CTB山藤が繰り返しタックルを決め、ノックオンを誘う。

25分、右中間22mライン内側のスクラムを押しゴールに迫ると、最後尾でボールをキープしていたNO.8ボークが、ボールを拾うと右サイドに走り込んだWTB長谷川にダイビングパス。これが通ってトライ。コンバージョンも決まって33-9。SO河野のキックは最高の精度を見せた。

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 28分、センタースクラムから展開、右を攻めたあと、左に戻すとLOカウヘンガが突破を見せる。さらにCTB山藤史也がつなぎ左サイドをゲイン。右に出すとSO河野がゴール正面のギャップを抜けゴールに迫る。さらに右サイドに展開すると29分、NO.8ボークが右隅に低く飛び込んでトライ。4トライを記録し待望のボーナスポイント獲得を決める。CTBピータースが蹴ったコンバージョンも成功し、スコアは40-9に。

リコーの勢いは止まらない。31分には自陣から回してオフロードパスを繰り返し前進。フェイズを重ねて攻め込むと、SO河野が正面から右サイドへ向かって再びキックパスを上げる。WTB長谷川が鋭く飛び出し、あとわずかにまで迫るが惜しくも届かず。しかしボールはタッチを割ったためNTTコムボールのラインアウトに。リコーはここでNO.8ボークに替わり柳川大樹が入る。

このラインアウトのボールがオーバー。32分、これを直接獲ったFL武者が、右中間に飛び込んでトップリーグ初トライを挙げる。コンバージョンも決まり47-9。リコーはFB星野を高平拓弥に、SH山本を神尾卓志に交代。

リコーは35分からアタックを浴びたがゴール前で粘り強く守る。37分、正面5mスクラムから右に出され11番にトライを許したが、その後はしのぎ47-16でノーサイドを迎えた。リコーは会心のゲームで2ndステージ初勝利。勝ち点5を獲得し、相手には1ポイントも与えない最高の結果に。マンオブザマッチには、俊敏な動きでテンポのよいアタックの起点となったSH山本昌太が選ばれた。

「結果が出ない中でも、選手たちは着実に成長してくれていた」(神鳥監督)

神鳥裕之監督

「長かったですね。本当に。これだけのパフォーマンスが見せられるチームなんだと、改めて今日の試合で実感できました。選手たちの自信にもなったと思います。
(SHの山本昌太がマンオブザマッチを獲得したが?)彼の持ち味がすべていいほうに出たというところだと思います。(何か指示は?)彼にはテンポアップさせる能力があるので、とにかくゲームスピードを上げることと、相手はラインアウトが強いということがわかっていたので、ペナルティからラインアウトを狙って蹴り出しても、簡単に獲得はできないことは覚悟していたので、クイックタップを使ってゲームスピードを上げろというイメージは持たせました。
(自信を失いかけていたチームのメンタルはいかにコントロールしてきたか?)自分たちのラグビーは間違っていないということは、常日頃から発信し続けました。あとはコーチングスタッフだけではなく、小松、山藤、ヒデ(高橋)、野口、とコミットして彼らが発信をしてくれたことが大きかったと思う。コーチ側だけではなく、選手のリーダーの中から、自分たちのラグビーをやり続けようというメッセージを、コーチと同じ目線で、チーム内で出し続けてくれたことが、切れずに済んだところだと思います。
(フラストレーションが溜まる状況でも、チームは混乱する様子がなかったように映ったが?)選手たちがベクトルを外に向けずに、自分たちに何が足りないのかを考えて続けてくれた。それが大崩れしなかった理由だと思う。それでも先週のコカ・コーラウエストとの試合での敗戦後は、非常に雰囲気は悪くなりました。そんな中でも切れずに、いい意味で開き直ってくれた。16チーム中最下位まで落ちて、あとはない状態になって、その状況で自分たちに足りないところをやりきろうと、そっちのほうに開き直ってくれたのは選手の成長だと思います。結果が出ない中でも、選手たちは着実に成長してくれていた。そういう風に思っています。
(ケガ人の状況は?)今日の試合でもケガ人はでませんでした。次かその次の試合にはタマティ エリソンも帰ってくる。今日をきっかけに変わりたい。またしっかり準備します」

WTB小松大祐

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「やっと、って感じですね。全員が感じていると思いますが、前に出てプレッシャーをかけられたし、トライを獲りにいく姿勢も全面的に出せたのでリコーがいままで練習でやってきたことの結果かなと感じました。(チームの自信の喪失も感じていた?)やっぱり勝っていないと、雰囲気はどうしても悪くなる。自分たちのやっていることを疑いがちになってしまう。それをウインドウマンスの合宿で、もう一度信念もってプレーしようと、リコーのやっているラグビーを信じようと確認したことが今日の試合には表れたと思います。
(今日はボールが動いていた?)11月のNTTコムとのオープン戦では、エモシやポヒヴァがつぶされて、自分たちの形がつくれなかったので。ボールを散らしつつ、ただ前に出る姿勢は保とうという。そこがポイントだったと思います。あとは空いているところを攻めるという意識。場面によってはエモシにもパスを出させるというところ。
バックスはボールに触る回数を増やすという意識でやってきたので、それに関してはスムーズにやれたんじゃないかと思います。前回までは窮屈なアタックになってしまっていたので、今回はやっとフォワードとバックスが一体となったのではないかと。
(フォワードが走り込んでボールをもらうシーンも多かった?)かなり練習したパターン。その成果が出たと思う。これまでは少し距離のあるところから走り込んでいたので、今回は立つ位置を近めにして、強いランというよりはスピードに乗ったランを意識したのですが、それはうまくやれたと思う。ただ、誰がボールをもらうかわかってしまうアタックも見られたので、全員がオプションとなって、的を絞られないアタックをしなければいけない。このテンポでラグビーをやれば、トライがとれることは確認できた。あとは細かいところ。ブレイクダウンでターンオーバーされた場面もあったので、そういうところも完璧にしたい。
秩父宮の試合は久しぶりで、自分が出場するのは去年の10月のNEC戦以来。やはりホームという感覚なので、ここで意地を見せられたのはよかった」

FL武者大輔

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「初戦のコカ・コーラウエストに負けてしまって、最下位だったので、NTTコムに勝たないと次厳しくなるっていうことと、負けが込んでいたのでどこかでチームの雰囲気を変えようと、だいぶ気持ちは入っていました。個人的には相手のNO.8のトッド クレバーを前に出させないというのは意識してやりましたが、ほかはいつも通りですね。
(今シーズンは新人が多く出場している。世代関係なく、チーム内でのコミュニケーションはとれているか?)そこは大丈夫です。よく話しあって雰囲気よく練習してきました。ただ、結果がついてこなかったので、そこでなんでだろう、という戸惑いはありました」

FL馬渕武史

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「嬉しいとしか出てこない(笑)。すごく長かったので。勝ててなかったので。2ndステージは最初からいこう、全勝しようって意気込んだ中で、初戦でつまずいてしまったという状況だったので、こういう形で勝てたこと、素直にすごくうれしいです。危機感はありました。個人的な感情かもしれないですけど、また負けるのではないかという気持ちはありました。大丈夫なのかなって気持ちもあったけど、表には出さないようにしながらやっていたという感じ。NTTコムはハイパントからの攻撃があるので、キックの返りとかは意識しました。あとはスクラムですね。かなり強かったので、バックローでしたが、スクラムでは押し返すことに100%集中しました」

WTB長谷川元氣

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「先週の試合とは違って、気分よくプレーできました。でも、キックパスのキャッチとグラウンディングでうまくいかないプレーがあったので、ああいうワンチャンスでしっかりトライを獲れないと上にはあがっていけない。チャンスを逃すとチームの勢いを削いだりするので気をつけたい。(以前は試合で緊張することもあると話していたが?)もう大丈夫。試合前までは緊張するんですが、アップして、ジャージ着替えたら『楽しもう』『思い切ってやろう』と思えるようになりました」

 会心のゲームといってよい内容で2ndステージ初勝利を挙げたリコーは、グループBの5位に浮上。3位の豊田自動織機、4位の近鉄との勝ち点差は1とした。残り5試合、上位進出をかけて戦う権利をなんとか取り戻した形だ。

次戦は12月15日(日)の12時から、京都府・西京極総合運動公園陸上競技場兼球技場で行われるNTTドコモレッドハリケーンズ戦。長い我慢の時を耐え抜いたリコーは、一皮むけたラグビーで日本選手権を一直線に目指す。引き続きご声援よろしくお願いいたします。


(文 ・ HP運営担当)

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