2012-2013 トップリーグ 第13節 対 ヤマハ発動機ジュビロ

2013.01.15

歯がゆい流れ断ち切る勝利を目指した、久々のホームゲーム

 アウェイでの試合が続いた後半節だったが、最終節のヤマハ発動機ジュビロ戦は久々のホーム・秩父宮ラグビー場での戦いとなった。日本選手権出場を懸けたワイルドカードトーナメント進出は既に決まっていたが、最終節を自分たちのラグビーで締めくくり、歯がゆい試合の続いた後半節の流れを断ち切ろうとするチームにとって、非常に重要な試合だった。

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 CTBリキ フルーティーのキックで試合が始まる。自陣スクラムで組み勝ち、ペナルティを奪いタッチキックで前進したリコーは、ハーフウェイライン付近のラインアウトからFWが突破を図る。しかし、激しいディフェンスに遭い、突進したFLカウヘンガ桜エモシが倒されラックでターンオーバー。

ヤマハ発動機はフェイズを重ねると中央リコー陣内10mライン付近でリコーにノットロールアウェイ。さらにクイックリスタートを仕掛けるとリコーが下がることができずノット10メートルバックの反則を重ねた。5分、正面やや右30m弱のペナルティゴールを決めたヤマハ発動機が先制する。

そのすぐあと、リコーはキックオフ直後に敵陣でのスクラムを獲得。右サイドタッチライン際のブラインドサイドを突くと左に展開。22mラインの内側で連続攻撃を仕掛けた。左サイドタッチライン際をSO河野好光、CTB山藤史也、WTB小吹祐介とつなぎゴールラインに迫ったがおしくもここはノックオン。最初のチャンスは得点につながらなかった。しかし、その後もリコーはスクラムを優勢に組み勝ち、ヤマハ発動機ゴール前でアタックを繰り返す。

14分、反則を出しタッチキックで押し戻されたリコーは、相手のゴロキックを処理してマイボールにすると、ヤマハ発動機陣内10mライン付近でフェイズを重ねた。するとヤマハ発動機にホールディングの反則。左中間ヤマハ発動機陣内10mライン付近で距離はあったが、リコーはペナルティゴールを狙う。CTBフルーティーが低い弾道のキックを蹴り、これに成功。3対3の同点に追いついた。

リコーはキックを使って敵陣でプレーしていたが、10mライン付近のラックでターンオーバーされる。プレーを切りにいった相手15番のキックをFL川上力也がチャージに成功するが、こぼれ球を拾った相手5番が抜け出し、一気にゲイン。リコーもよく走り、食らいついて止めにいったが、素早くアタックラインをつくったヤマハ発動機がテンポよくアタック。ディフェンスに追われたリコーは中央22mライン付近でオフサイドを犯す。

ヤマハ発動機は再びペナルティゴールを狙う。しかしこれがポストに当たり跳ね返り、このボールにFB横山伸が駆け寄ったが、ヤマハ発動機がプレッシャーをかけると直接蹴ってタッチに逃れた。

左サイドゴール前のラインアウトから、ヤマハ発動機はモールを組んでプッシュ。リコーも低く当たり対抗したが、モールは左中間を進む。20分、ゴールラインを越え8番がトライ。コンバージョンも成功しヤマハ発動機が勝ち越した。

リコーも23分に自陣スクラムから展開、FB横山伸からパスを受けたWTB星野将利が右サイドを突きゲインする。ハーフウェイライン付近でポイントをつくり、再びアタックを仕掛けるとヤマハ発動機にオフサイド。CTBフルーティーがタッチキックをゴール前に蹴り、右サイドゴール前のラインアウトのチャンスをつかむ。

ここで列の後方から前方に進んできたNO.8コリン ボークにHO滝澤佳之が投げ入れ、ボークはフェイクを入れて滝澤に戻すと右サイドを突破。25分、右中間インゴールに飛び込みトライ。コンバージョンは外れたが、リコーは8対10として食いついていく。

引き続き敵陣に入って攻めるリコーだったが、29分にLO山本健太の密集でのプレーにイエローカード。10分間の一時的退場を科された。

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 リコーは、このプレーで与えたペナルティキックで自陣に攻め込まれる。さらにノットロールアウェイの反則を重ね、32分にゴール前ラインアウトからモールで押し込まれる。崩れたところのディフェンスの乱れを突かれ9番にトライを奪われた。コンバージョンは外れ8対15。

さらに直後の35分、リコーは敵陣でのディフェンスでターンオーバー。CTBフルーティーがゲインし、22mラインの内側に侵入。これを起点にゴール前でアタックを仕掛けた。しかしHO滝澤佳之がラックからなんとか出したパスが乱れる。これをうまく拾ったCTB山藤史也だったが、LO馬渕武史へ出したパスがインターセプトされ、12番に独走を許し、リコー陣内中盤で左をフォローした14番にパスを通されトライを奪われた。コンバージョンは外れた。

だが37分、リコーはキックオフボールのブレイクダウンからこぼれ出たボールを拾ったNO.8ボークが右中間を突進。相手を引きずりながら一気にインゴールまで達しトライを奪った。コンバージョンは外れたが13対20として前半を折り返した。

ブレイクダウンでの劣勢続き、追う展開から脱せず

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 1トライ1ゴール差と大きくはない点差で、後半の入りをどちらがとるかで試合の流れが見えてきそうな展開となったが、先にスコアに成功したのは、ヤマハ発動機だった。0分、SO河野が自陣22mライン内側から右サイドに蹴り込むと、ヤマハ発動機が左サイドから右へボールを展開しカウンターアタック。12番が鋭く加速し右中間をラインブレイクし、そのままインゴールに飛び込んでノーホイッスルでトライを奪う。コンバージョンも成功し13対27。

リコーは4分、SO河野が敵陣中盤でハイタックルを受け、タッチキックでゴール前ラインアウトのチャンスをつくる。しかしラインアウトモールを押し返され、タッチラインの外へ押し出される。ヤマハ発動機がタッチに蹴り出しリコーは敵陣のラインアウトを得てチャンスが続く。アタックを仕掛け、ラインブレイク寸前の場面もつくりながら前進。しかしヤマハ発動機のディフェンスは固く、なかなか破れない。12分、22mライン手前でヤマハ発動機がオフサイドを犯すと、リコーはペナルティゴールを選択。SO河野のキックで3点を加え、スコアを詰め16対27。リコーはこのゴールの後NO.8ボークを覺來 弦に、WTB小吹をロイ キニキニラウに交代。覺來がFLに、カウヘンガがNO.8に入った。

しかし14分、ヤマハ発動機はリコー陣内中盤で激しいアタック。リコーも低いタックルを決めて対抗する。そこでヤマハ発動機がライン裏に蹴ったゴロキックが、ボールを確保しにいった両チーム選手の手を弾きながら不規則に転がりリコーインゴールへ。最後にセーブしにいったWTBキニキニラウとボールの間に身体をねじ込んだヤマハ14番の胸の下にボールが入る。アシスタントレフェリーのジャッジでトライが認められた。コンバージョンは外れ13対32。その後は互いに攻めあう時間が続く。リコーは23分にPR柴田和宏を高橋英明に、HO滝澤を川口顕義に、SO河野を徳永 亮に交代した。

24分、中盤のディフェンスでターンオーバーしたヤマハ発動機は、ライン裏へのキック。双方ボールを追いかけた先のブレイクダウンにヤマハ発動機が勝つ。22mラインの内側に入ると、右中間から素早く展開、ディフェンスの揃わない左サイドを突きトライを決める。コンバージョンも決まって16対39とヤマハ発動機が突き放した。28分にLO山本を生沼知裕に、SH池田 渉を湯淺直孝に交代。

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 リコーは敵陣ゴール前のチャンスをつくるがじりじりと押し戻され、さらに自陣からのキックがダイレクトタッチとなりさらに後退。しかし自陣でよくディフェンスしノットリリースザボールを奪うと、ペナルティキックで前進。ハーフウェイライン付近のラインアウトからアタックを仕掛け、こぼれ球を拾ったWTBキニキニラウが右中間を抜け出し、ゴール前までゲイン。22mラインの内側でダイレクトに縦の突進を重ねじりじりとゴールに迫る。左中間でラックのボールをピックして縦に突いたCTB山藤のダウンボールをSH湯淺が素早くボールを出し、すぐ横のFB横山伸へ短いパス。33分、横山伸は密集の脇を鋭く抜けインゴールへ達しトライ。CTBフルーティーのゴールは外れたが、21対39とした。

残り約5分、4トライ目を狙うリコーだったが、ヤマハ発動機がアタックを仕掛け、36分にゴール前ラインアウトからモールを押しトライを奪った。そのまま40分経過のホーンを迎え、21対46でリコーは敗れた。

「残り2週間はやることをはっきりさせる。アタックのブレイクダウンとモールディフェンス」(山品博嗣監督)

FB横山伸一

「最初はやりたいことがやれていました。悪い流れになりそうなところでバーキー(NO.8ボーク)がトライを獲って引き戻してくれたんですが。後半の入りがターニングポイントだった。ミスというよりもシステムがうまく働かなくなり、やりたいディフェンスがやれなくなっていた。同じ人を見てしまった。ノミネートができていなかった。僕はメンバー間で話せていなかったことが問題だと思う。ラグビーは15人でやるので、コミュニケーションを密にしなければ、ディフェンスはうまくいかない。特に疲れているときや、ハーフタイムを挟み一度流れが止まったとき。(4連勝のラグビーと今のラグビー、何が違うのか?)……それはチーム全員で話をしたんです。出てきた答えは、慢心じゃないですけど、人ってそういうものをなくさないと、プレーに出てしまうのだということ。チャレンジャーらしく、東芝に勝っても『もう一度勝たなければ意味がない』という姿勢で戦わなければいけなかった。シーズンが終わって、そこで初めて強くなったのかどうかを考える。そういうもの。
今日、パスをインターセプトされて奪われたトライ(前半35分)がありました。パスを奪われたことは残念だったけれど、突破したランナーに対し、みんながあきらめず止めに行きましたよね。あのプレーは前半節の必死さを思い出した。自分たちはチャレンジャーであるという意識は取り戻せてきていると思う。あと少し」

SO河野好光

「アタックのときのブレイクダウンだけですね。プレーしていて、きづいたのは何よりもそれ。速いボールが出てくれば、自分たちのラグビーはできたと思うので、ブレイクダウンの2人目のサポートが相手の2人目のジャッカルしてくる(ボールを奪いにくる)選手に負けていた。(それは技術的な問題?)意識じゃないですかね。(それは前の試合ともつながっている問題?)同じですね。トヨタ自動車戦と。自分たちのラグビーを見せる前の、ブレイクダウンのスキルというか激しさというか。そこさえ修正できれば、速い球さえ出るようになれば、前半節のような自分たちのラグビーができるはず」

レオン ホールデンヘッドコーチ

「試合に入り込めなかった。というか、ポゼッションなども渡しすぎてしまった。ラッキートライを与えすぎてしまったところもあるかなと。いつも追いかけているような感じでした。残り2週間は、今日できなかったことを修正していく。アタッキングブレイクダウン」

山品博嗣監督

「試合をしっかり見直したいが、モールのところはひとつの大きな問題。モールディフェンス。あとはアタックのブレイクダウン。(記者会見ではメンタルの問題とも話していたが?)そこはスキルの問題。その場所にいるのだけど、ボールキャリーがダウンするまで待ってしまっている。そこに(相手の)2人目にふたをされてしまうような形。そこは変えていかないといけない。
(ヤマハ発動機に対する対策のようなものは?)ディフェンスが整備されていて、特別な穴はありませんでした。自分たちのラグビーをやろうという意識で準備しました。でも、2つ目のラインアウトからのトライ(前半25分)は、相手選手の傾向をつかんでいたので決まったといえるかも。(奪ったトライ3つはいいトライに映ったが?)ヤマハさんはこちらのディフェンスのプランを把握して攻めてきていたし、エモシ(FLカウヘンガ桜エモシ)に対してもダブルタックルで止めてきていた。これまでも狙われることはあって、それでも対策できていたのだけど今日はまともにもらってしまった。
2週間、やることはっきりさせて、アタックのブレイクダウンとモールディフェンス。それをターゲットにやっていきます」

2012-13シーズンのトップリーグ13試合が終了した。5勝8敗、勝ち点28の第10位。昨シーズンから勝ち点は10減り、順位を3つ下げた。トライ数も10減って43。
「リコーのラグビー」の確立を図るとともに、優勝を目指した今シーズン。結果はその道の険しさを示すもの終わった。

だが、リコーブラックラムズが歩んできた道は決して間違っていない??。そう思わせる試合やプレーは、随所で見られた。選手も、スタッフも、全員が自分たちのラグビーを信じる姿勢を13試合貫いた。勝った試合も、敗れた試合も、どの選手が出ても、出なくても、目指すラグビーは変わらず「基本的なプレーの速度の上に拠って立つ、スピードラグビー」だった。それは断言できる。

2年前の就任時、山品監督は上位で安定して力を発揮するチームを「まずベースがあり、その上に個々のチームらしい強みを築きあげている」と評した。リコーが目指した「スピードラグビー」は、そうしたチームに追いつくための、ベースづくりと、その延長線上にある強みづくり、両方を意味するものだったと言える。2年にわたりこの方針は変わることなく、必要なことを一つずつ、チームは積み上げてきた。結果こそついてこなかったが、「リコーが何をしようとしているのか」は、昨シーズン以上に、観る者にしっかりと伝わった13試合だった。

トップリーグでの戦いはこれで終わるが、チームは日本選手権出場を懸けて近鉄花園ラグビー場で行われるワイルドカードトーナメントに挑む。1月20日(日)14時からの近鉄ライナーズ戦、26日(土)12時からのヤマハ発動機ジュビロ戦に勝利すれば、日本一を決める選手権への出場が可能になる。

今シーズンのリコーには、取り戻すべき自分たちのラグビーがある。シーズン最後のチャレンジで、チームはもう一度そこに立ち返り、ひとつに結集する。


(文 ・ HP運営担当)

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