2012-2013 トップリーグ 第11節 対 NTTドコモレッドハリケーンズ
2012.12.19
連続攻撃決め、3連続トライでリード広げる
近鉄戦は2点差、九州電力戦では1点差。接戦を落とす悔しすぎる週末が続いた。
敗れたもののディフェンスは安定し、メンバーは身体を張った献身的な前に出るディフェンスでプレーを継続した。オフサイドなどの反則や、攻め上がる際のやや軽いプレーで相手を勢いづかせてしまった場面はあったが、リコーらしさを感じるプレーが十分あった2試合だった。トップリーグは、お互いに死にものぐるいでプレーする中で、1秒でも長く自分たちのラグビーを貫けるか。そのせめぎあいが勝敗を分けている。
雨があがり曇り空の滋賀県・皇子山総合運動公園にホイッスルが響き、第11節、NTTドコモレッドハリケーンズ戦が始まる。
最初のトライはリコー。
3分、NTTドコモのアタックのこぼれ球を確保しキックで前進。リコーは右サイド22mライン手前のラインアウトからアタックを仕掛ける。フェイズを重ねると、右サイドのラックから展開。CTBリキ フルーティーからFB横山伸一、CTB山藤史也とつなぎ左中間をブレイク。CTB山藤はインゴールを回り込み中央にトライ。コンバージョンをCTBフルーティーが決めて7対0。リコーが先制する。
リコーは自陣からキックを蹴り、攻め上がる際のオフサイドや、NTTドコモのバックスのうまいタッチキックでアタックを浴び、ディフェンスに回る。
これを守りきり14分、SO徳永亮が自陣浅めの位置から上げたハイパントをWTB星野将利が鋭く追い、キャッチしたNTTドコモの選手に激しく絡んで倒す。リコーFWのサポートが入り激しく押すと、ボールを乗り越えカウンターラックでターンオーバー。
右中間22mライン手前から素早くボールを出し展開。左サイドをWTB小吹祐介が突く。ラックをつくり再び右へ。NO.8コリン ボーク、SO徳永、FL柳川大樹らがダイレクトに縦に突きながら順目にボールをつないでいく。右サイドのタッチライン際に回ったNO.8ボークが力強く突破。右中間にトライを決める。コンバージョンも決めて14対0。リコーがテンポのいいアタックで2本目のトライを奪った。
リコーはその後、再び自陣侵入を許しアタックを浴びたがよく守る。25分、攻めあぐねたNTTドコモは、ライン裏を狙いBKがキックを蹴るがFB横山伸がキャッチ。敵陣インゴールまで転がるキックを蹴り返し、ピンチを脱する。
NTTドコモ陣内22mラインから、ドロップアウトをキャッチして攻めたリコーは直後の27分、右サイド敵陣浅めの位置のスクラムから展開。SO徳永が鋭いパスをWTB星野に通し左中間のギャップを破る。星野はその外をフォローしたFB横山伸にパス。そのまま左隅にトライ。コンバージョンははずれたが19対0。
リコーはさらに35分、右サイドのラインアウトからLO山本健太の突破を起点に攻撃右サイドのラックから展開し、左中間を抜けたFB横山伸がゴール前にボールを運び、最後はFL柳川がトライを決めた。コンバージョンも成功、26対0。
NTTドコモは前半終了間際、リコーの倒れ込みのペナルティから右サイドゴール前でラインアウトのチャンスをつかみ、モールを押し、一度倒されたがラックでボールをキープ。そこからボールを素早く出すとほぼ中央にトライを決めた。コンバージョンも成功したところで試合を折り返す。この攻防で負傷したFL柳川に替わり赤堀龍秀が入った。
厳しい時間を耐え、冷静にコントロール
後半の入りはNTTドコモが制する。キックオフボールの蹴り返しをキャッチすると、ボールをキープし前進。リコー陣内に侵入して、パスカットを狙ったリコーがボールをはたきこれが反則。NTTドコモはタッチキックを蹴りゴール前へ。ラインアウトからモールを押し、インゴールまでドライブ。リコーはこれに食らいつきグラウンディングを阻む。
5mスクラムで再開するとスクラムでリコーに反則。NTTドコモはクイックリスタートで攻めたがノックオン。リコーはスクラムからNO.8ボークが縦に突き、さらに展開。FB横山伸が自ら前にボールを運んだ後、キックを蹴りエリアを取り戻す。
7分、NTTドコモはこの左サイドハーフウェイライン付近のラインアウトをキープ。キックを蹴り込み、チェイスした選手がキャッチしたFB横山伸に激しく絡みターンオーバー。リコー陣内でフェイズを重ねると、右サイドに生まれたギャップを12番が抜けてトライ。コンバージョンも決め26対14と点差が12点に縮まる。
前半から2本続けてのトライで12点差とされたリコー。悪い流れを断切りたいリコーは、NO.8ボークを滝澤佳之、WTB小吹祐介をロイ キニキニラウに交代。滝澤がHO、川口顕義がFL、赤堀がNO.8に入った。キニキニラウらの果敢なランでチャンスはつくるが、NTTドコモのアグレッシブなディフェンスに苦しみ攻めあぐむ。
この状況を見て17分、敵陣浅めの位置のラックでNTTドコモがハンドを犯すと、リコーは正面やや左40mほどの距離があったが、CTBフルーティーがペナルティゴールに成功。29対14とし、リコーは2トライ2ゴール以上の差を取り戻す。この日ゲームキャプテンを務めたCTB山藤の冷静な判断が光った。
NTTドコモは積極的に攻め続けた。中央で激しいぶつかり合いが繰り返されたが、ギャップをこじあけようとするアタックに対し、リコーはディフェンス中心で耐える時間帯が続く。21分にPR柴田和宏を高橋英明に、25分にSO徳永を津田翔太に交代。
迎えた29分。
リコー陣内22mライン付近のNTTドコモのアタックでボールがこぼれリコー側に入る。これを獲ったSO津田翔太が前がかりになっていたアタックライン裏に抜け出して、そのまま一気に敵陣へ快走。左をフォローしたWTB星野が走りきり、追いかけてきたディフェンダーにつかまれながらも左中間にトライを決めた。勝利の流れを一気に引き寄せる貴重なスコアが刻まれた。コンバージョンははずれたが34対14と20点差となる。
リコーは35分、自陣から仕掛けたNTTドコモのランナーからノットリリースザボールを獲りペナルティゴール成功。さらに39分、敵陣ゴール前での激しいディフェンスでターンオーバーを決めると、即、中央をスルスルと抜出しCTBフルーティーがど真ん中にトライ。コンバージョンを決めた直後にホーン。44点を奪ったリコーはNTTドコモに大差をつけてノーサイド。
後半の序盤で主導権を失いかけながらも、うまく流れを取り戻す冷静な試合運びを見せたリコー。今シーズン5勝目を挙げた。マンオブザマッチには激しさと身体を張ったプレーが光ったPR柴田和宏が選ばれた。
「全ての選手に可能性。それを示せた試合だった」(SH池田渉)
CTB山藤史也
「(公式戦初の)ゲームキャプテンは緊張しました。勝たなければいけない試合だったので。
(後半、ショットを選択した場面は?)うまく攻められていなかったので点差も考えて決めました。もしはずしても22mラインのドロップアウトからなので、敵陣でのプレーはできると考えました。
ディシプリンについては、ラインオフサイドを出さないように、ディフェンスの立ち位置を一歩下げることを徹底しました。みんなしっかり守ってくれて、結果的には逆にラインディフェンスのスピードが上がっていた場面もありました。それ以外にもペナルティ全般は意識しましたが、具体的に意識したのはラインの部分。また同じようにできればいい感じで闘えると思います。
とにかく今日だけにしたくはない。ケガ人も出ているけれど、不安から士気を下げることのないように。次の試合のモチベーションをうまくコントロールしていきたい」
SH池田渉
「選手みんなに可能性があることを示した試合だった。プレーして楽しかったし、チームの底上げを促す試合だったと思います。徳永は津田とも河野ともまた違ったタイプのスタンドオフで面白かったです。ボールを持つ前に、前に出る。ラーカムのようなタイプなんです。
(ラインディフェンス時の飛び出す際は)できるだけレフェリーに確認をとるようにして、立ち位置に問題がないか、確かめるようにしていました」
HO、FL川口顕義
「いつも通りをこころがけて。アップ中は少し緊張していたかもしれない。試合中はいつも通りできた。(FLでプレーしたが?)大学時代にはやっていたので。いざというときにはプレーできるというのは自分の強み。今日は辛抱強く耐えることができたと思います。キックとエリア、という声を常にかけあっていました。切るところは切ろうと」
HO滝澤佳之
「試合から離れていたので、ミスも多くて周りに助けてもらってしまいました。でもこうやって戻ってこられてうれしいです。(多くの新しい選手が活躍する試合になったが?)頼もしいですよ。その中で自分に何ができるかを考えていきたい。ケガ人も出ているけれど層は厚くなっています。波に乗っていきたいです」
FB横山伸
「リコーは常に挑戦者。チャレンジ精神を常に忘れません。相手がどうこうではなく、自分たちのプレーができるように。強いチームはそれが普通にできている。1mのゲインだったり、1秒速くラックに入るだとか。練習でもこれでいいだろうと思うことのないように引き締めます。接戦を落としたことから学ぶことは多かった。新しい選手も出てきたし、チームとして強くなるチャンスだと思う」
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「ウインドウマンス(11月)に、いいトレーニングができていたから」
山品博嗣監督が多くの若手選手を起用した理由はシンプルだ。
「11月17日のNECとのオープン戦でも、いいプレーをしていました。徳永は以前から、ディフェンスという課題があったのですが、しっかりと向き合って努力していた。今日もディフェンスで身体を張ろうという強い気持ちが表れていました。川口も課題はセットプレーでしたが、今日の試合ではよくリードしていた。リザーブに入った赤堀にしても、小浜にしても、ずっと準備を続けていましたから」
課題を直視して向き合うこと。それはチームにおいても、個人においても、成長のためには欠かせない。試合に出場してきたメンバーは連敗を通じ課題を探した。チャンスを得ようとしてきたメンバーは、自らの課題に取組み準備を続けた。こうした動きが、ひとつの輪となり“勝てる”チームの文化は築かれていく。この日の試合は、その途上の風景を見せてくれるものだった。
次節は12月23日12時、ホームズスタジアム神戸でのトヨタ自動車ヴェルブリッツ戦。今シーズンの行末を大きく左右する大一番。
昨シーズン最終節の同カード、瑞穂での3点差を守りきっての勝利は今でも鮮明に残っている。
リコーは、ノーサイドまで「スピードラグビー」を貫いて、ブラックラムズファンを魅了してほしい。
(文 ・ HP運営担当)