2012-2013 トップリーグ 第3節 対 サントリーサンゴリアス
2012.09.18
3シーズン、挑み続け自信をつかんできた壁
トップリーグ第3節、リコーは昨シーズンのトップリーグと日本選手権をともに制したチャンピオンチーム・サントリーサンゴリアスと対戦した。リコーはこれまで、トップリーグ復帰以降このカードで勝利こそ挙げていないが、何かをつかむ起点のゲームがサントリー戦だ。
09-10シーズンは先制し、前半を1点差で折り返すと後半もスコアで引き離されることなく食いついた(22対38)。
10-11シーズンは初戦を落とした開幕2戦目で対戦。後半12分まで20対7とリードし、終盤逆転を許すもホーン後にフォワードがサントリーをゴールポストに釘付けにする猛攻をみせた(20対26)。「サントリーと、これだけ出来た」「やれるぞ」と、自信をつけたリコーは、その後浮上した。
後半2トライを挙げ2点差に詰め寄った(24対26)昨シーズンの対戦は記憶に新しい。試合後の山品博嗣監督の「リコーにとって『ターニングポイントだった』という試合になる」との言葉の通り、その後7試合を4勝1分2敗で闘い抜き、日本選手権出場まであと一歩のところまで迫った。
開幕から2戦続けて自分たちのラグビーが出来ず、苦しい立上がりとなっているリコー。チャンピオンと大胆に闘い、何かをつかめるか。今年もサントリー戦は重要な意味を持つ試合になった。
今季加入しトップリーグ初出場のCTBリキ フルーティーのキックで試合開始。直後、リコーが躍動感あふれるアタックでサントリーゴールに怒涛の攻撃を仕掛ける。両サイドに展開しフェイズを重ね、オフサイドを誘う。FLカウヘンガ桜エモシが突入。インゴールに迫ったが、惜しくもターンオーバーされサントリーボールに。
サントリーはキックを蹴り込み、さらに蹴り返しをキャッチしてアタック。さらにハーフウェイライン付近でリコーが反則すると速攻を仕掛け、リコー陣内に深く攻め込んだ。リコーはボールをなんとか奪い返しタッチに蹴り出す。ここまで約4分、互いにプレーを止めず、攻守の素早い切り替えに対応するスピーディなラグビーを見せる。
左サイド、22mライン手前の位置のラインアウトからサントリーがアタック。中央付近でパスを回しゲインするとリコーにオフサイド。リコーは素早く下がりアタックに備えたが5分、クイックタップからの再アタックで、左中間に15番がトライ。コンバージョンは外れたがサントリーが先制する。
直後、リコーはほぼ中央のスクラムで反則を誘いフリーキックを得る。FLカウヘンガが縦に猛烈な突進を仕掛けるが、ラックでボールを奪われ、さらにディフェンスでハイタックルの反則。ペナルティキックで自陣侵入を許し、再びディフェンスに回る。一度パスをインターセプトするが、風下のインゴールからのキックは伸びず、ピンチが続く。
サントリーはラインアウトからワイドにアタック。16分、ゴール正面の位置でリコーがオフサイドを犯すとショットを選択。ペナルティゴールで3点を追加し、0対8とした。
リコーはここからキックを蹴っていくが、うまく処理されエリアが獲れずチャンスにつなげられない。自陣でのプレーが続いた。だがゴール前のディフェンスでは集中力を見せ、身体を張ってよく守る。31分、負傷したPR柴田和宏に代わり高橋英明がピッチへ。
直後32分、リコーは自陣ゴール前でハイタックルの反則。サントリーはペナルティキックをタッチに蹴り出し、ラインアウトに。これをキープすると、ラックをつくりサイドを突き、10番が左中間にトライ。コンバージョンも成功させ0対15とした。
リコーは前半終了間際、敵陣でマイボールスクラムのチャンスをつかむと、サントリーにヘッドアップの反則。39分、SO津田翔太が正面やや右、20mの位置からゴールを狙う。静まり返った秩父宮ラグビー場。多くのリコーファンが固唾を呑んで見守った。が、無情にも僅かにポストの外側をボールが通過した。
アタックへの意思見せ、ついに出たリコーらしいアタック
ロッカールームで「攻める意識」を確認し迎えた後半。開始直後のサントリーのアタックをしのいだリコー。FL覺來弦、SO津田らが思い切りのいいアタックを仕掛けゲイン。敵陣に攻め込むとオフサイドを誘う。
正面やや右22mライン手前の位置からCTBフルーティーがペナルティゴールを狙うが、ゴールポストに当たり跳ね返る。サントリーはこれを拾いタッチに蹴り出した。
リコーはここで、CTBフルーティーから河野好光に、WTB星野将利をロイ キニキニラウに交代。さらにその後、前半36分にFLカウヘンガに代わり入っていた柳川大樹を、相 亮太に交代した。
リコーはラインアウトから再びアタックを仕掛ける。LO山本健太の突進などでゴールラインに迫ったがラックでボールを奪われる。風下からのタッチキックは距離が出ず、さらにもう一度、リコーのラインアウトに。10分、HO森 雄基の安定したスローイングでキープすると、右サイドから展開。SO津田の素早いパスを受けたCTB河野がタックルを浴びる寸前で鋭くさばき、FB小吹祐介にパスをつなぐ。小吹は激しいディフェンスを受けたが、左隅に飛込んでこの試合リコーの初トライを生んだ。秩父宮ラグビー場は、「リコー」「リコー」の大声援に包まれた。コンバージョンは外れたが5対15とした。リコーは12分にNO.8野口真寛に替わり川上力也が入った。
ここからサントリーは中央の密集の近場を縦に突き、リコー陣内に侵入。連続ポイントで競り合いに持ち込みたいリコーは、試合の流れを決める重要なディフェンスの局面を迎える。
冷静によく守ったリコーだが、サントリーは粘り強くアタックを繰返す。17分、右中間ゴール前で短いパントキックをライン裏に蹴り、ゴールライン上で激しいボールの奪い合いになったがサントリー5番がグラウンディングする。コンバージョンも決まり5対22。
勢いに乗ったサントリーは、23分にも中央のギャップを突きビッグゲイン、ペナルティゴールに成功。29分にもハイパントのこぼれ球を確保したサントリーがリコー陣内に一気になだれ込む。フェイズを重ねディフェンスを揺さぶると、右隅のスペースを突きトライ。コンバージョンも決め5対30とした。
残り11分。リコーは、ここからあきらめずに反撃を開始する。サントリーがキックオフボールの処理でオブストラクション。タッチキックを蹴り、ラインアウトからテンポのよいアタック。FL覺來 弦がサントリーのタックルをかわし、独特のステップでアタックセンスを見せるなど、リコーらしいアタックを継続しフェイズを重ねていく。
反則からのリスタートを挟み、左サイドをWTBキニキニラウが突く。素早くボールを出し展開し33分、長いパスをつなぎ右サイドまでもっていくと、内に切れ込んだSO津田がパスを受け右中間に飛び込んでトライ。河野のPGも決まり意地を見せる。
リコーの気持ちはその後も切れなかった。自陣でのラインアウトを奪われ中央を抜けて1トライを奪われるが、リコーはあきらめず右サイドを中心に攻め続ける。これまで2試合では見られなかった連続攻撃で、サントリーディフェンス陣の足が止まりかけた。間近で声援を送るバックスタンドのファンの歓声が最高潮に大きくなっていく。
ホーン後の42分。22mライン内側のスクラムを押し、SH神尾卓志にボールを託されたWTBキニキニラウは、密集を突き進むとインゴール右隅に倒れるように飛込む。アシスタントレフェリーへの確認後、リコーのこの試合3つ目のトライ。応援団の「ブラックラムズ!!」の大声援が、選手の心の奥底まで突き刺さった瞬間だった。最後まで諦めないリコーの直向なラグビー。この後の厳しいトップリーグの中で、必ず効いてくるに違いない。難しい角度のコンバージョンを河野が決めたところでノーサイドのホイッスル。
19対37。
リコーはサントリーに敗れた。
「自分たちのラグビー信じ、貫き通せば、自然と結果につながる」(津田翔太)
SO津田翔太
「スタンドオフでスターティングメンバーに入るのは初めてでした。先週の試合後には言われていました。サントリー相手にディフェンスが多くなるのはわかっていました。でも、もちろん守っているだけではだめで、攻撃的なラグビーをやらないと勝てない。前半はそういう思いがプレーで出しきれなかった。後半40分はそれが出せたのかなと。その部分は大きな収穫です。(後半、自ら仕掛けてゲインしていたが?)狙っていたとかではなく、FWが内側で前に出てくれていて、その分相手のディフェンスが内に寄っていたので(仕掛けた)。
(ゲームプランなどの判断面は?)前半最初のゴール前でもらったペナルティキックは、ゴールを狙ってもよかった。でもフォワードの勢いを信じた判断です。
グラウンドに立つ選手が、自分たちのラグビー信じて、貫き通せばそれが自然と結果につながると思う。(試合後、スタンドのファンが勝ったかのような歓声で迎えていたが?)あれは本当にすごかったです。声援に応えるような試合を見せたいです。本当にありがとうございました。次、頑張ります」
SH神尾卓志
「(津田と)一緒にやるのは公式戦(トップリーグ)では初めて。前半終えて、ロッカールームではアタックしないとプレッシャーを与えられない。とにかくダイレクトに攻めようとみんなで確認しました。前半は中盤でもハイパントも使って敵陣に入ろうという考えもありましたが、攻めていこうと。
次節の相手のNTTコムはいい試合をしてきています。自分たちが今日の後半のようなプレーをしてどれだけプレッシャーをかけられるか。敵陣入ったら必ずスコアする。取りきることが大事」
LO山本健太
「自分たちのやり方を貫いて、勝てれば流れは変わると思ったのですが、勝ちにつながらない。ただ、3試合の中では一番いいゲーム展開だったと思う。全員、気持ちではサントリーに負けていなかった。あと少し、結果がついてくれば変わる。
チームとしてはスクラムハーフの選手にプレッシャーかけるという狙いはうまく機能していました。前節の試合後、サントリーの選手がラック周辺で激しくプレーされて苦しんだ話をしていたので、そこを意識した結果、BKに展開にされる機会を減らして、突っ込んでくるアタックをしのげばいいという形にできた。それはチームのプランを実行できたと思う。それから個人的には、昨シーズンの5試合目となるサントリー戦で骨折していたので。熱くなる部分もありました。
(次節にむけて)勝つことはもちろん、リコーは若い選手が機会を得て、経験を積むという段階にもあるので、競った試合で自信をつけていきたい」
*
次節は、9月21日19時30分からのNTTコミュニケーションズシャイニングアークス戦。2週続けて秩父宮ラグビー場での金曜のナイター試合となる。
山品監督も「しっかり攻めればスコアしていける」と話し、リコーのアタックの形は明確な像を結びつつある。この日の試合の最後、河野がコンバージョンを決めたとき、バックスタンドは大歓声に包まれた。
最後まであきらめないリコーの姿勢。
これを貫けば、それを称え、声援を送ってくれるファンに支えられた環境でラグビーができること。そうした感謝の思いは、勝利で返すしかない。3連敗の中でつかんだものは少なくないはずだ。
リコーは、ファンの皆さんと闘い切ってすべてを出し切るチーム。3試合待たせた分、大きなプレゼントをリコーの大ファンの手元に届ける番だ。
今シーズンの初勝利に懸ける。
(文 ・ HP運営担当)