2012-2013 トップリーグ 第2節 対 神戸製鋼コベルコスティーラーズ
2012.09.11
昨シーズン拮抗した好敵手との北陸での激戦
トップリーグ第2節、リコーブラックラムズは空路石川県金沢市へ。石川県西部緑地公園陸上競技場で、神戸製鋼コベルコスティーラーズと対戦した。昨シーズンの最終成績では、勝ち点で並びながら得失点差でわずか8及ばず後塵を拝した。
今シーズンの序盤は、昨シーズン上位だったチームとの対戦が続く。調整課題を残す時期であり、また湿度が高くボールが滑る9月のコンディションの中で、確実な試合運びをしてくる相手に、受けに回らずチャレンジする姿勢を貫けるか。勢いをつける序盤とするためには、冷静かつ、ハートで相手を上回っていくプレーが必要だった。
試合の入りは神戸製鋼FWが激しさを見せる。神戸製鋼ボールのキックオフ、落下地点でキャッチの姿勢に入るFLカウヘンガ 桜エモシに、猛然と襲いかかりプレッシャーをかけていく。リコーはキックに逃れ、神戸製鋼がラインアウトをキープ。今度はモールを押すとリコーがこれを引き落とし反則、さらにオフサイドを重ねる。2分、神戸製鋼は正面やや左25m付近からPGを狙ったが、これは左にはずす。
5分、蹴り合いとなり自陣左中間22mライン付近でリコーが神戸製鋼のキックキャッチミス。神戸製鋼はスクラムサイドをFWがアタック。パスを使わず突進するダイレクトなプレーでフェイズを重ねていく。2分を超える長いアタックとなったが、最後はリコーがノットリリースザボールを奪い守りきる。
SO河野好光がペナルティキックを大きく蹴り出し、敵陣10mライン付近までボールを戻す。このラインアウトで神戸製鋼にボールが渡り、相手7番がディフェンスラインが整う前のギャップを抜ける。そのまま走りきって左隅にトライ。ゴールも成功し0対7。神戸製鋼が先制する。
リコーは直後、キックを相手が落球し敵陣でスクラムを得る。さらに神戸製鋼がコラプシングの反則。FLカウヘンガがクイックタップして突進し、ラックから展開。BKが仕掛けるがボールをこぼしフェイズを重ねることなくターンオーバー。神戸製鋼はタッチに逃れる。神戸製鋼陣内10mライン付近まで戻されるが、ラインアウトで神戸製鋼に不当な妨害がありペナルティキックを得る。16分、距離はあったがSO河野がゴールを決めて3対7と点差を縮めた。
互いにフィジカルに長けた選手のボールキープとキックで突破口を探っていく。24分、神戸製鋼がリコー陣内でのブレイクダウンでBKに激しく絡んで、30分にはリコーがラインアウトから展開しゴール前でアグレッシブなアタックを見せて、互いにペナルティキックを得てゴールを狙ったが、両チームともはずしスコアは動かず。
34分、リコーの自陣でのオフサイドから神戸製鋼がペナルティゴールを決め3対10。その後、互いに隙を突き22mラインを超えるチャンスをつくったが得点は生まれず前半を終えた。
リコーはSH池田 渉から神尾卓志に交代し後半へ。入りはリコーがペースをつかむ。リコーのキックオフボールを神戸製鋼がタッチに出すと、リコーが左サイドのラインアウトからアタック。展開し右サイドに運んだところでノックオンが出たが、スクラムからのパントをキャッチしSO河野がアタック。再び攻め込むとグラウンドをワイドに使い崩しにかかる。ボールを左右に大きく回し、フェイズを重ねたのち右サイド22mラインを越えたあたりでラックがアンプレアブルとなり、リコーのスクラムになる。
3分、このスクラムをよく押すと、NO.8マイケル ブロードハーストがスクラムのオープンサイドを鋭く縦へ。さらにFLカウヘンガにつなぎ突進。そのまま相手ディフェンスをひきずりながら力強く前進。右中間にトライ、ゴールもSO河野が決め10対10の同点に。
インパクトプレーヤー WTBロイ キニキニラウが勝ち越しトライ
再開後、さらにリコーが攻める。神戸製鋼のキックオフがダイレクトでタッチラインを割り、リコーのセンタースクラムに。スクラムから出したボールをSH神尾がグラバーキックで敵陣深くに蹴り込むと、これがうまくタッチを割り一気にゲインする。さらにラインアウトで神戸製鋼がノットストレート。右中間22mラインの内側でリコーのスクラムとなる。これも優勢に組むとリコーが展開。速いパススピードのパスをつなぎ左サイドを突く。しかし惜しくもノックオン。
神戸製鋼はスクラムから出したボールをタッチに蹴り出すが距離が出ず、リコーのチャンスは続く。ラインアウトをキープし展開。NO.8ブロードハーストのダイビングパスからSO河野、今シーズン新加入のCTBワイナンド オリフィエとつなぎアタック。激しいディフェンスに遭い、一度は神戸製鋼にターンオーバーされたがノックオン。リコーは右中間22mライン付近のスクラムを得る。
10分、LO山本健太を生沼知裕に、NO.8ブロードハーストを野口真寛に、WTB渡邊昌紀をロイ キニキニラウに交代が認められる。山品博嗣監督が早めに動く。
直後、スクラムから出たボールをSH神尾卓志がショートサイドのWTBキニキニラウへパス。11分、タッチライン際を走り、寄せてきたディフェンスを押しのけて突破。そのまま回り込み右中間にトライ。ゴールは失敗したが15対10とリコーが勝ち越しに成功する。バックスタンドで観戦する大勢のリコーサポーターから歓声が巻き起こる。
しかし16分、神戸製鋼はリコー陣内中盤のラインアウトをキープし、モールで前進。22mラインを越えたあたりでボールを出し展開。左右に振りアタックを継続し、最後は左サイドを破った11番がトライを決める。ゴールも成功させ15対17と逆転した。
僅差となり両チームともにキックでエリアを獲りにかかるが22分、状況を打破しようとキックをキャッチしたFB小吹祐介が自陣から攻め上がろうとする。しかし、神戸製鋼は複数の選手が素早く小吹に迫り、リコー陣内を出る前にノットリリースザボールを奪う。リコーは後続選手のサポートが遅れた。神戸製鋼は正面やや右10mライン付近からのペナルティゴールを決め15対20とリードを拡大。
リコーはこの後、敵陣のラインアウトからアタック。倒れ込みの反則を奪うとFLカウヘンガがクイックタップして突進。だがよく対応した神戸製鋼は前進を許さずカウヘンガは横へ流される。リコーはボールをつなぎ二次攻撃をかけたが、ノットリリースザボールで神戸製鋼ボールとなる。
このチャンスを逸すると神戸製鋼ペースに。30分、ラインアウトからハイパントを蹴り、チェイスした選手がボールを確保。そのまま右サイドを走る。追いすがったリコーはゴール前で追いついたがラックに横から入る反則。ボーナスポイントを獲るべく神戸製鋼はタッチに出しラインアウトからアタックを仕掛ける。リコーは止めにいく際に反則を重ねた。正面に近い位置でモールを引き落とすと神戸製鋼はショットを選択ペナルティゴールを蹴り成功。15対23とした。
リコーは35分にゴール前に迫りはしたが、テンポが上がらずスローなアタックとなり突破はできず。逆に38分にペナルティゴールで追加点を奪われ15対26とされ、そのままノーサイド。80分間の激戦は終わった。リコーは昨シーズンの最終戦、ワイルドカードトーナメントの雪辱を晴らすことはできなかった。
「(次節は)胸を借りるつもりで。大胆な試合をする」(山品博嗣監督)
「今日は試合を通じてミスタックル、ドロップボールが多かった。こういった大味な試合をして勝てるほど、自分たちは強くない。先週もそうでしたが、アタックブレイクダウン。サポートの遅さからノットリリースザボールを取られるケースが多過ぎました。周りの選手がラック周辺で見てしまう。加えてミスも出てしまい、フェイズを重ねられないのでアタックの形がつくれていない。
(選手交代は?)ロイ(キニキニラウ)を生かすには、12番にしっかりパスを取れる選手が必要。相手の足が止まって来たら、あの形にしてロイを走らせるゲームプランは最初からありました。FWがラインアウト、スクラムともによく闘えていたからというのもあります。FWの成長は感じています。ただ、まだゲームフィットネスが足りない」(山品博嗣監督)
「1~2フェイズで途切れるアタックが多かった。サポートの遅さもあるし、ボールキャリアがもう少し頑張る必要もある。そこを修正しないとトライまで持っていけない。回数は少なかったけれど、フェイズを重ねられたときはいいアタックができていた。東京に帰って、皆でビデオなど試合を振返ってイメージを取り戻したい」(小松大祐キャプテン)
「相手のFWがラックサイドをアタックしてくるというのは予想していました。序盤は対応できなかった場合もありましたが、だんだん止められるようになったと思う。ラインアウトやスクラムでも負けていなかったと感じている。
(汗でボールは滑ったか?)この時期、それはわかっていること。集中すれば対応できます。ミスもそうだけれど、今日はいらないペナルティが多かった。トライ数は同じなのにこれだけ点差がついてしまったのはペナルティの部分。修正したい」(HO森雄基)
「キックを蹴られたあとのチェイスが少なくなっていたので、その部分の注意の指示を受けて入りました。あとはいつも通りテンポよくプレーしようと。
結果論ですが、相手ゴール前でペナルティもらったとき(後半28分あたり)、クイックで攻めようとするのを止めて、3点を確実に獲っていたらまた展開も変わっていたかもしれない。あの判断は難しかった。ペナルティを減らすというテーマもそうですが、ベテランや中堅の選手はああいう場面の冷静な判断役にならないといけない。(次はサントリーとの対戦だが)毎回同じような課題が出ている。次のステップに進める試合にしたい。何かを残したい」(SH神尾卓志)
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湿度の高さで乾きにくい汗が、ハンドリングミスの原因かという質問に対し、HO森をはじめ多くの選手は「言い訳してはだめ」と反省の弁を残した。だが、ジャージは常に汗で濡れた状態にあり、互いにタックルやつかみ合いを繰り返しているのだから、手のひらは常時滑りやすい状態にあったと考えるべきだろう。条件は平等とはいえ、難しい環境だったことは間違いないはず。
「胸を借りるつもりで。大胆な試合をする」。山品監督は次節、9月14日(金)19時30分キックオフのサントリーサンゴリアス戦に向けて意気込む。残暑は続くが、環境に適応してリコーらしいアタックで、毎シーズン接戦を演じてきた相性の良いサントリーに勝利するゲームを期待したい。
(文 ・ HP運営担当)