2012-2013 トップリーグ 第1節 対 パナソニックワイルドナイツ
2012.09.04
優勝目指すシーズンの船出は、昨季準優勝チームへの挑戦
ジャパントップリーグ2012-2013が開幕した。リコーブラックラムズの開幕節の相手はパナソニックワイルドナイツ。昨シーズンの対戦では、リコーは組織的なディフェンスを見せたが、要所でパナソニックが試合巧者ぶりを発揮し10対32で敗れている。ここ数年はシーズン終盤に当たることが多かったが、今シーズンは互いに固さが出る初戦での対戦となった。硬さと折り合いをつけ、自分たちのペースで試合を進めたほうが勝利に近づく。試合のポイントの一つはそこにあった。
先制したのはリコー。パナソニックの短めに蹴ったキックオフボールのこぼれ球を確保し、フェイズを重ね敵陣10mライン付近までボールを運ぶと、右中間からSO河野好光のグラバーキック。ルーキーのWTB渡邊昌紀が反応し、ボールを処理した選手と右サイド深めの位置で激しくファイトする。ここは倒れ込みの反則とられたが、タッチキックを経て10mライン付近でマイボールラインアウトを得ると、リコーが再びアタックし、パナソニックにオフサイド。3分、ゴール正面やや右約22mのペナルティゴールを確実に決め3対0とした。
ゴール後はしばらく膠着状態が続く。リコーはキックと連動しプレッシャーをしっかりかけ、パナソニック陣内に攻め込む。相手10番のキックが前方にスペースの空いたFB小吹祐介のところに飛び、キャッチすればカウンターアタックのチャンスだったが惜しくもこぼれタッチを割りパナソニックのラインアウトに。
パナソニックは自陣10mライン付近からアタックを継続しリコー陣内に侵入。7分、リコーはゴール前の突破を阻止するも惜しくもノックオン。パナソニックはリコー陣内22mライン付近の中央スクラムから展開、鋭くパスをつなぎリコーのタックルをかわすと11番が左隅にトライ。ゴールも成功し3対7。14分にも孤立したリコーのボールランナーに絡み反則を誘い、ペナルティゴールに成功。3対10とした。その後、リコーはスクラムでの相手の反則などを生かし、パナソニック陣内に侵入。ボールを回すとFLカウヘンガ桜エモシ、CTB山藤史也らが果敢にクラッシュしていく。しかし、激しいディフェンスにあいトライはならず。
20分、リコー陣内パナソニックのラインアウトのこぼれ球を、FL覺来弦が拾いアタック。SH池田渉のハイパントを、飛び出したWTB渡邊昌紀がキャッチ。ラックからつなぎCTB小松大祐がゲインを狙うと相手ディフェンスが倒れ込んで止め、ゴール正面約30mのペナルティキックを得る。ゴールを狙ったが惜しくも左に外れる。
その後もセットプレーが安定しないパナソニックの隙を突き、リコーはチャンスをつくった。しかしゲインラインを突破する場面はつくれずにいると、パナソニックが反撃。自陣に侵入されたリコーは35分にアタックを止めにいきノットロールアウェイ。さらに37分には自陣深くに蹴り込まれたボールをSO河野が自ら前方に運ぼうとしたところ素早く寄せてきたパナソニックの選手に絡まれノットリリースザボール。自陣の2回の反則からゴールを決められ、3対16とされた。
リコーはホーン後の41分、相手正面ゴール前に攻め込み反則を誘いゴールに成功。6対16で前半終了。最後の攻防で相手8番が不当なプレーを犯し一時退出処分が科された。
10点差で始まった後半。得点差を縮めたいリコーだったが、最初の得点はパナソニックに。2分、ビッグゲインした12番を止めにいったNO.8コリン ボークのタックルが相手をつかもうとしていない危険なタックルとしてペナルティの判定。ゴール正面約25mのペナルティキックを決められ6対19。NO.8ボークにも一時退出処分が科された。
リコーはゲームプランに沿って、キックでエリアを獲っていく。しかしパナソニックの分厚いディフェンスに阻まれ決定機をつくれない。リコーは8分にFLカウヘンガに替えて野口真寛をピッチへ。
11分、ハーフウェイライン付近からパナソニックがアタック。フェイズを重ねてできた中央のギャップの目前でパスを受けた14番が突破。ゴール前に迫りグラバーキックを蹴る。これを追おうとした14番に対しリコーがレイトタックル。ペナルティゴールを決められ6対22。
14分、リコーはパナソニック陣内中盤に攻め込むとラックで相手に反則。タッチキックでゴール前に攻め込む。しかしここまで安定していたラインアウトでノックオン。相手にボールを渡しチャンスを逸する。
直後、スクラムから抜け出した8番のゲインなどでエリアを獲り返してきたパナソニックに対するディフェンスで、リコーはハーフウェイライン付近でオフサイド。パナソニックは17分、距離のあるペナルティゴールを蹴ったがこれは外れた。
その後リコーは前半から続く相手のラインアウトなどのミスを突き、WTB長谷川元氣らが右サイドを突きチャンスをつくった。20分にはNO.8ボークに替わり生沼知裕、WTB渡邊に替わりワイナンド・オリフィエがCTBに入り、小松がWTBに。
シュアな試合運びから一転、テンポアップして攻めるパナソニック
ここからパナソニックがテンポを上げ、ボールを回してフェイズを重ねるとリコーのディフェンスラインが乱れる。リコーのタックルをパスでかわすとタッチライン際を15番が突破。24分、内側を走った14番にゴール前でパスし右中間にトライ。ゴールも決まり6対29と点差を広げた。リコーは26分にPR高橋英明を伊藤雄大に、SH池田を神尾卓志に交代。
パナソニックは29分に14番がステップを切ってギャップを突破して、31分にはディフェンスでプレッシャーをかけ、こぼれ球を奪う形でトライを決め6対41と一気にリードを広げる。
30分にHO森雄基に替えて川口顕義、SO河野に替えて津田翔太を送ったリコーは34分、敵陣のラックでSH神尾卓志がターンオーバーしアタックを仕掛ける。中央22mライン付近でボールを受けたFL覺来が、スピンして相手をかわすと、ギャップを抜けそのままトライ。ゴールも決めた。
だが、反撃はこのトライに留まった。終了間際、ゴール前のディフェンスでペナルティを犯しゴールを決められ、13対44とされたところでノーサイドのホイッスル。セットプレーなどの優勢を生かしチャンスをつくってみせたリコーだったが、試合を通じ安定感を見せたパナソニックの堅いディフェンスに阻まれ、開幕戦勝利はならなかった。
「自分たちはチャレンジャーとしてこの試合に臨みました。その気持ちが出し切れなかったのが敗因だと思います。80分間チャレンジし続けなければ勝てない。そこをもう一度みんなで確認して、次の試合に臨みます。(チームの雰囲気は?)いいです。昨日のキャプテンズランが、今年一番じゃないかと思うほどいい雰囲気で、そのまま試合に入れました。若手、シニアプレーヤー、外国人選手いずれもが“Team First”“One Team”というテーマを共有できていると思います。
ただ感じたのは、経験のある選手は、若手選手が冷静な判断するための声をかけないといけないということ。相手チームはそれがうまくできていた。序盤は無理をせず試合中盤からテンポアップして一気に攻める巧い試合運びを見て、ベテラン選手の経験がチームに共有されていると感じました」(CTB/WTB小松大祐)
「後半残り20分から30分あたりから、アタックを仕掛けてきて、そこで1対1のタックルで(ミスが出て)アタックを許してしまった。ただ、やろうとしていることができている部分もありました。スクラムも組んでいる感じは悪くなかった。『8人で組む』というテーマで練習してきましたが、その言葉の意味を実感できたスクラムもありました。もちろん、さらに数段階上を目指す必要はありますが、止まっている場面では多少プレッシャーをかけられた部分もあると思っています」(PR高橋英明)
「パナソニックには関東学院大学の先輩も多いので、負けたくないという思いでやりました。相手のアタックは大学とはレベルが違うもので、ディフェンスは難しかった。自分の強みは走ることなので、アタックでもう少しボールをもらえるような動きをできればよかった。
試合前は緊張していましたが、先輩の元氣さん(長谷川元氣)『最初から思い切っていけ』とアドバイスをもらったこともあり、試合に入ってからはそこまで緊張せずやれました。これからも出られる機会があったら、結果を残してレギュラーを獲りたい」(WTB渡邊昌紀)
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「来年1月までにこの差を詰めて、またチャレンジしたいと思います」
試合後の記者会見を山品博嗣監督はそう締めた。その言葉と冷静な表情は、現時点での昨年の準優勝チームとの差を確認し、長いシーズンを見据えトータルに準備していくための材料を得たようにも感じられた。
次戦は9月8日(土)18時キックオフの石川県西部緑地公園陸上競技場での神戸製鋼コベルコスティーラーズ戦。昨シーズンはリーグ戦で勝利したが、ワイルドカードトーナメントで敗れ日本選手権出場を阻まれた。リコーにとっては、リベンジと今季初勝利を懸けたゲームとなる。“One Team”を体現する一丸となったプレーでの勝利をぜひ期待したい。
(文 ・ HP運営担当)