2011-2012 トップリーグ 第8節 対 パナソニックワイルドナイツ

2011.12.28

精度高いキックで、エリアマネジメント

 ホームチーム・パナソニックワイルドナイツのチームカラーが赤から青に変わったことにともない、太田市運動公園陸上競技場のスタンドも青く染まった。しかし、数こそワイルドナイツサポーターには届かないが、試合前から元気のよい声援を送るリコーブラックラムズのサポーターが身にまとう黒もなかなかの存在感だ。チャンピオン・サントリーサンゴリアスへの肉薄、近鉄ライナーズとの激闘の末、勝利を経て迎えた今シーズン2度目のトップ4チームへのチャレンジに対する期待が、熱気を生んでいるようにも感じる。

天候は晴れ。好コンディションの中、試合開始のホイッスルが鳴る。
キックオフはパナソニック。落下地点のボールの争奪でパナソニックにノックオン。さらにスクラムでアーリーエンゲージ。自陣右サイド22mライン付近で、リコーがペナルティキックを得る。これを、タッチを狙わずパナソニック陣内にまっすぐ蹴り込む。

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 互いにエリア獲得を狙いキッキングゲームに。両チームは確かなキックを蹴り、攻撃の糸口を探る。数回蹴り合ったところで、最後列に下がったLOカウヘンガ桜エモシにボールを回し、リコーがカウンターアタック。ディフェンスラインを真正面から突き破りにかかる。数歩食い込んだところでサポートが入ってポイントをつくると、リコーがボールを回し連続攻撃。右サイドでWTBロイ・キニキニラウが、左サイドでNO.8ジェームス・ハスケルが力強く突破を図るなど、フォワード、バックスが一体となったアタックで前進。パナソニック陣内22mラインに迫る。

しかし、パナソニックディフェンスも集散よく動き続け、人数はそろったまま。
やや攻め手を失い始めたところで、FB小吹祐介が中央から右サイドに向かってゴロキック。これが22mラインを越えてタッチを割る。

パナソニックはラインアウトをキープすると、すぐにタッチキック。しかし距離が出ず、リコーが敵陣22mライン付近でラインアウトのチャンスを迎える。

だが、パナソニックがスチールに成功し、すぐさまパントキック。リコーはこれを自陣浅めの位置で処理しカウンターアタック。しかし、やや孤立気味のアタックとなってしまい、パナソニックの激しいディフェンスをうけ、グラウンドほぼ中央でターンオーバー、一気に攻勢を受ける。

5分、パナソニック13番が持ち出し右サイドに抜け出すと15番、12番とつないで右中間にトライ。コンバージョンは外れたが、0対5とリコーは先制される。

リコーのキックオフで試合再開。すると左サイドの落下地点でパナソニックが再びノックオン。続くスクラムでコラプシング。リコーはペナルティキックをタッチに蹴り出し、左サイドゴール前ラインアウトを得る。

高くリフトされたFL覺來弦がボールをキャッチすると、LOカウヘンガが密集のすぐそばを縦に突く。展開し中央でNO.8ハスケル、大外右サイドでWTBキニキニラウが突破を図る。キニキニラウは相手を引きずりながらパワフルに突破を図りゴールライン間際まで迫る。しかしアンプレアブルとなりパナソニックボールのスクラムに。

スクラムからパナソニックが左へタッチキック。これの距離が出ず、リコーは右サイド22mラインの内側でのラインアウトとチャンスが継続。リコーは これをキープすると左に展開。CTBマア・ノヌーが左中間のギャップに身体をねじ込みラインブレイクを狙うが破れず、ノックオンでパナソニックボールに。パナソニックはスクラムからボールを出すと左サイドに蹴り出した。ハーフウェイライン付近までボールを戻す。

リコーは右サイドのラインアウトから左中間まで回し、NO.8ハスケル、CTBノヌーが縦に突き、食い込むことに成功、再びパナソニック陣内に踏み込みをかける。さらに俊敏なステップでSO河野好光が、優れた判断力に基づく鋭い飛び出しでHO滝澤佳之が、突破を狙っていく。

ボールに激しく絡んできたパナソニックにノットロールアウェイの判定が下るとLOカウヘンガがリスタート。力強く、左サイドで相手ディフィエンスにぶつかっていく。サポートが加わりライン際にラックをつくったが、ボールが選手の足が触れ、少し転がりラックの外にこぼれる。

リコーの選手よりも先にディフェンスをしていたパナソニックの13番が気づき、ブラインドサイドに足を伸ばし小さく蹴る。ボールがリコーアタックラインの裏へ転がると、13番がこれを自ら拾いラインブレイク。フォローしていた7番へ渡すと右サイドを独走。PR長江有祐が食らいついたが13分、右隅にトライ。コンバージョンも成功し0対12と点差が広がる。

WTBマーク・リーがトップリーグで初トライ

 ターンオーバーからトライを奪われる形が続いたリコーだったが、エリアマネジメントには成功しており、敵陣でアタックを仕掛ける時間はつくることができていた。2つめのトライの後も優勢を維持し、攻め込んでアタックを見せる。

FB小吹の右隅へのゴロキックをWTBキニキニラウが追う。プレッシャーを受けた相手バックスがステップでかわそうとしたが、ラインを踏む。リコーは右サイドゴール前でラインアウトを得る。キープし、密集の近場の右中間をNO.8ハスケルが縦に突進。ここから連続攻撃を仕掛けたが、パナソニックのディフェンスは割れない。リコーは攻め続けたがノックオン。19分、負傷したWTB小松大祐に替えてマーク・リーがグラウンドへ。

スクラムから出したボールをパナソニックがリコー陣内へ大きく蹴り込む。ボールを処理したFB小吹が右隅へ蹴り返ししっかりチェイス。パナソニックのタッチキックは短く、リコーは右サイド22mライン手前でラインアウトを得る。

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 21分、これをキープして左サイドへ展開。CTBノヌーのタックルを受けながらのパスはCTB山藤史也を経てFB小吹へ通るやいなや、左隅へゴロキック。入ったばかりのWTBリーがこれをチェイス。ボールは対面の相手11番に渡ったが、前方へ蹴ったボールはタッチを割らず、ライン際を転がる。これを拾ったFB小吹がカウンターアタック。ディフェンスをステップでかわしゴール前までゲイン。最後はフォローしたWTBリーが左隅に飛び込み、トップリーグ初トライを挙げた。コンバージョンもSO河野が決め7対12。仕掛け続けたアタックがようやく実る。

その後、一度自陣に攻め込まれたが、タッチキックとモールでエリアを取り戻すと、ハーフウェイラインを過ぎたあたりで、パナソニックにハンドの反則。ほぼ正面とはいえボールが倒れるほどの強風に加え50mほどの距離があったが、リコーはSO河野がペナルティゴールを成功させる。31分、10対12と詰め寄る。

しかし35分、リコーは自陣10mライン付近のスクラムからサイドアタック。この密集でオーバーザトップ。さらにタッチキック後のラインアウトのディフェンスでリコーにハンドの反則。パナソニックは15mの位置から、リコーが"与えてしまった"ペナルティゴールに成功。10対15とする。

リコーはその後22mラインの内側でスクラムというチャンスを得たが、ミスで相手にボールを渡してしまい、逆にハーフウェイライン付近までボールを戻される。さらにオフサイドを犯す。パナソニックに自陣からペナルティゴールを狙われたがこれは外れ、前半は終了した。

セットプレーが不安定。後半は無得点でノーサイド

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 後半も前半同様の勢いで攻めていくリコー。開始早々、ハーフウェイライン付近のラインアウトから、モールで押し展開。CTBノヌーからFB小吹へ通し右サイドを突く。しかしここはボールを失い、リコー陣内へキックを蹴られ後退した。

しかし、自陣のラインアウトからSO河野が敵陣深くにボールを蹴り込む。パナソニックが展開してアタックを仕掛けると、ディフェンスは出足よく前に出て止めていく。プレッシャーを与え続けるとキックがダイレクトタッチとなり、パナソニック陣内侵入に成功する。

ラインアウトでミスが出てパナソニックのスクラムとなるが、ここでボールを奪い獲りFL覺來、LO柳川大樹が縦に抜けゲイン。ポイントをつくると、22mライン付近でリコーがアタックを繰り返す。そしてCTBノヌーから左サイドを走ったWTBリーへのパスが通り、ゴール左隅へ迫ったが惜しくもトライはならず。

リコーは敵陣でのラインアウトからモールで攻めると、ここでオブストラクション。さらに自陣でのディフェンスでノットロールアウェイ。反則を続けペナルティキックを与えると9分、正面やや左45mからゴールを決められ、10対18となる。

直後の11分、キックオフボールの争奪でパナソニックにノットリリースザボールの反則。正面やや左22mの位置でペナルティキックを得ると、リコーもゴールを狙う。しかしこれが惜しくも外れ、点差を詰めることができない。

リコーはセットプレーが安定せず、ラインアウトやスクラムからの攻撃に精度が欠け始める。前半に比べ敵陣でプレーする時間が減り、この試合で初めて自陣に押し込まれディフェンスに追われる時間を迎えた。

だが、集中力を保ってパナソニックのアタックを止めていく。WTBキニキニラウが激しくディフェンスしターンオーバー。SO河野のキックで見事ピンチを脱し反攻。FB小吹、SO河野らが鋭くラインブレイクを狙っていく。窮地で集中力を発揮し、粘って逆転に望みをつなぐ。18分、リコーはPR高橋英明を伊藤雄大へ、NO.8ハスケルをマイケル・ブロードハーストに交替。

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 しかし、しばらく停滞したが27分に試合が動く。リコー陣内右中間22mライン付近からSO河野がキックを蹴ると、これを13番がキックチャージ。拾って7番につなぐと左サイドを破り左中間にトライ。コンバージョンも決まって10対25。リコーは28分、HO滝澤を野口真寛、SH池田渉を神尾卓志に交替。

なんとか点差を詰めていきたいリコー。33分にはPR伊藤が左サイドを突いて来た相手選手にタックル。倒されない相手をずるずると後ろに後退させる闘志あふれるプレーなどはスタンドを沸かせたが、セットプレーの安定感は取り戻せず、攻撃の糸口を見つけられない。34分にはLO柳川に替わり馬渕武史。

36分、リコー陣内右サイド22mライン付近のスクラムから展開、10番がギャップを突きゲインする。ゴールライン間際で一度止めたが、ラックからボールを持ち出した13番が、左中間にトライ。コンバージョンも決まって10対32。最後、WTBリーがSO河野からのパスを受け、左サイドを突いたがラインブレイクできずそのままのスコアでノーサイドを迎えた。

「崩されたトライはない。でも点差がついたのは事実」(FL覺來弦)

「ターンオーバーからのディフェンスの練習は今週ずっとやってきましたが、実際の試合ではうまくいかないことも出てくる。ディフェンスシステムとしては今までと同じ形で対応できていました。崩されてとられたトライはなかったですし。(そのあたりに手ごたえが?)それはないです。結局点差が開いてしまっているので、なぜ相手がターンオーバーできていて、うちができていないのか。相手はトライをとれて、うちが獲れないのか。そういう部分はパナソニックが圧倒的に勝っていたところ。年末で1週間空きますが、そこを修正したい」(FL覺來弦)

「パナソニックが、トップクラスの成績を残し続けているチームだという話はずっと聞いてきました。リスペクトすべき点は確かに多くありましたが、だからといって、覆しがたいほどの大きな差があるとは感じません。違ったのは、レフェリングへの対応力、ターンオーバーからのグッドフィニッシュでしょうか。現在、トップ4のチームに勝つための一番大きな敵は、自分たちの内側にあると感じています。それに勝てば、必ず勝てる」(NO.8ハスケル)

「そんなに力の差は感じなかった。今日はチームとして動くことを心がけました。そのテーマについてはできていたところもあったと思う」(LO柳川大樹)

「相手のスタンドオフはエリアマネジメントが巧いと分析していて、そこは負けないように意識していました。前半? そうですね、うまくいって勝っていたと思う。(ノヌーからのパスを受けてアタックを繰り返していたが?)練習していることなので。今日はそのプレーが多くありましたが、ほかにもオプションはあります。
チームの雰囲気は…ブレが少ないですよね。いいとき、悪いときの波がなくなっていている。スタンダードが上がってきているんだと思います。一戦一戦成長していこうという意識も感じられるのもいいことだと思う。(チームとして「大人」になった?)うーん。まだかな。大人になろうとしている、というところですかね」(FB小吹祐介)

リコーはディフェンスを完全に崩される場面はほぼなく、しっかりと守った印象を受ける試合だった。しかし、それでもターンオーバーからしっかりトライを挙げ、相手にポイントを与えず、フルポイントを獲得する、パナソニックの持ち味が光る結果となった。

「パナソニックは、選手一人ひとりが、勝つためにすべきことを知っているチーム」と、SH池田渉が評価しているように、パナソニックは"成長を見せる今のリコーに" 勝つためにすべきことを確実に遂行したと言える。FB小吹が「大人になってはいない」と話すのも、こういった差を感じてのことかもしれない。

次節は第9節、2012年1月9日(祝)14時からの神戸製鋼コベルコスティーラーズ戦。昨シーズンは同点でホーンを迎えながら、土壇場で勝ち越しトライを奪われた相手。紙一重だった差を、確実に反転させ、成長の証としたい。

(文 ・ HP運営担当)

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