2011-2012 トップリーグ 第6節 対 サントリーサンゴリアス

2011.12.16

昨シーズンの6点差を、さらに縮めたチームの成長

 一昨年は後半離され16点差(22対38)となったものの、前半は先制し1点差で折り返した。
昨年は6点差(20対26)で後半のホーンが鳴り響いた。ここからリコーはボールをキープし、5分間にわたりサントリーにアタックを継続。相手ゴール下に釘付けにし、逆転トライまであと一歩まで迫った。

トップリーグ復帰以来、リコーブラックラムズはサントリーサンゴリアスに勇気を持って立ち向かい、気持ちの入ったゲームができている。自らが成長するための"何か"をつかむ機会にしてきた。

「今週はディフェンス中心です。アタックはこれまで通りでいい。自分たちの身に付いているものの実行力を高めていこうという判断です。昨シーズンのチャンピオンチームですが、今の自分たちの力を出し切れば勝てると思います」(山品博嗣監督)

しばらく戦列を離れていたLOカウヘンガ桜エモシが復帰。前節はメンバーから外れたCTBマア・ノヌーも戻ってきた。山梨中銀スタジアム(山梨県小瀬スポーツ公園陸上競技場)の天候も無風、快晴。全力でぶつかることができるステージは整った。

守ってペースつかむ。11分、FB小吹が先制トライ

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 13時、サントリーのキックで試合が始まる。最初のブレイクダウンでボールを獲ったサントリーは、ボールを回しアタック。リコーはこれに対応しディフェンス。こぼしたボールを獲りターンオーバーする。LOカウヘンガを縦に突かせた後、SO河野好光のキックで前進を図ったがこれがチャージされ、22mラインの内側に転がりタッチラインを割る。このラインアウトがジャンパーの手に当たりサントリー側にこぼれ、サントリーがアタック再開。だが、これもよくディフェンスしボールを奪いピンチを逃れた。試合の入りから鋭いパスを通し持ち味のアタッキングラグビーを見せるサントリーに対し、リコーはしっかり前に出て止めるラグビーを実践した。

4分、リコーは中央ハーフウェイライン付近のスクラムから展開し、左サイドをWTB小松大祐が突きラインブレイクかと思われたが、惜しくもスローフォワード。

リコーの執拗なディフェンスに、キックを織り交ぜ始めるサントリー。リコーもこれを確実に処理し、SO河野、FB小吹祐介らが巧く蹴り返しゲインにつなげていく。ブレイクダウンではLOカウヘンガ、山本健太らが激しく絡んでいき相手にノットリリースザボールの反則を誘う好プレーもあった。

11分、相手バックスのキックを左中間ハーフウェイライン付近で、プレッシャーを受けずに拾ったWTB小松が、内に向かってカウンターアタック。中央22mライン付近まで前進するとすぐさまFL覺來弦、川上力也らがサポート。SH神尾卓志が素早く右へ展開。SO河野からNO.8ジェームス・ハスケルへ。ハスケルがギャップを突き相手を引きつけ、横に走り込んできたFB小吹に短いパス。これが通りラインブレイク。小吹は右中間インゴールエリアまで駆け抜けトライを決めた。コンバージョンもSO河野が決め、7対0とリコーが先制した。

サントリーは15分、リコーがスクラムからボールを出そうとしたところでボールを奪うとボールを回しアタック。リコーもよくディフェンスしたが、ミスなくつなぎフェイズを重ねるサントリーがじりじりと前進。22mライン上での攻防がしばらく続いたが、16分にスピードに乗った15番が左中間を抜ける。リコーが捕えると素早くダウンボール。9番が確実に拾い外に。7番が受けて左隅にトライ。むずかしい角度のコンバージョンを12番が決め7対7と同点とした。

19分、リコーは敵陣のスクラムでコラプシング。ペナルティキックで自陣侵入許すとラインアウトから展開され、左中間を6番がラインブレイク。20分、一直線に走りゴール左脇にトライ。コンバージョンにも成功し7対14とサントリーがリードを奪った。

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 リコーは敵陣に侵入するが、ミスとペナルティで得点につなげられない。だがディフェンスでは安定感を維持。前に出て止め、攻め上がりを許さなかった。27分、ついにはサントリー陣内正面10mライン付近の位置でノットリリースザボールを誘い、SO河野がゴールを狙い成功。チャンピオンチーム相手に堂々10対14と4点差に縮めた。

だが直後の30分。ハーフウェイライン付近からカウンターアタックを仕掛けたFB小吹が捕まり、密集でリコーにノットリリースザボール。ペナルティキックで自陣に侵入を許すと、ラインアウトからサントリーが連続攻撃。31分、左中間のギャップを12番が突き、残り10mまで前進すると外に出し11番が左隅にトライ。コンバージョンは外れたが10対19とサントリーがリードを広げた。

リコーはここから攻めたてる。35分に相手5番がシンビンで一時的退場となり数的有利を得て大きなチャンスを迎えた。相手ゴール間近の位置でフォワード、バックスが一体となってアタックを繰り返した。リコーは、選手同士で常に声を出し、見応えのあるフォワードの攻防が続いた。サントリーも必死のディフェンス。まさに、昨シーズンのサントリー戦、終了間際の凄まじい攻防の再来だった。しかし、残念ながらトライは奪えないまま前半終了の笛。

集中して攻めた後半の入り。しかしトライはサントリーに……

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 リコーは選手交代をせず、前半と同じメンバーでWTB金澤良のキックで後半が始まる。先に攻勢をかけたのはリコー。鋭いパス回しでサントリーのディフェンスを崩しにかかり、ギャップを見出したNO.8ハスケルやCTBノヌーが身体をねじ込んでいく。しかし、サントリーもブレイクダウンで激しく絡み、クイックボールがなかなか出せず、突破には至らない。

5分近く猛攻を見せたリコーだったが、サントリー陣内中央10mライン付近でパスが乱れノックオン。スクラムからサントリーがアタック。ハーフウェイライン付近で一進一退が続いたが、12番が左中間のギャップを突き突破、5番につなぎ、さらにゲインし中央22mラインの内側へ侵入。ポイントをつくると素早く外に展開。8分、人数の余ったラインに回し右中間に7番がトライを決めた。コンバージョンも決まり10対26。

これ以上離されるわけにはいかない。リコーは12分、自陣で得たペナルティキック(オブストラクション)でサントリー陣内へ。直後にSH神尾に替えて池田渉を送る。

左サイド15m付近のラインアウトからアタックを仕掛けるとサントリーにオフサイド。再びペナルティキックを蹴り、ゴール前ラインアウトのチャンスをつかむ。
HO滝澤佳之は、これを一番前のLOカウヘンガに合わせるとすぐ戻させ、タッチライン際のブラインドサイドを突く。これはサントリーが詰めラックに。SH池田はラックサイドでLOカウヘンガ、NO.8ハスケルの突進の指示を出す。膠着状態になりかけると素早く展開、SO河野、CTBノヌー、タマティ・エリソンとつなぐ。これが乱れたところで、アドバンテージをとっていたラック戦でのサントリーのオフサイドの笛。

15分、リコーは再びタッチキックを蹴り、再びラインアウトからトライを狙う。このラインアウトを前に、リコーは傷んだLO山本健太を馬渕武史に負傷交代。
このラインアウトはサントリーがスチール。しかしタッチを狙ったキックが短く、22mラインの内側で再びリコーのラインアウトに。チャンスは続く。

ここでさらに選手交代。NO.8ハスケルをマイケル・ブロードハースト、PR伊藤雄大を高橋英明、HO滝澤を森雄基、FL覺來弦を金栄釱へ、一挙に4選手を交代し勝負に出た。

このラインアウトをキープ。モールを組み左中間を前進。ゴールラインが迫ると最後尾でボールをキープしていたLOカウヘンガがオープンサイドに飛び出す。16分、ゴール左にグラウンディング。トライの笛。コンバージョンも決まり17対26と点差を縮めた。

このトライの後、サントリーが攻勢。22mラインの内側で鋭くアタックを仕掛け、ラインブレイクを狙うが、リコーのディフェンスの意識は依然高く、替わったフレッシュな選手たちが絡んでいき、ノットリリースザボールを誘う。タッチキックを蹴り、さらにラインアウトからキックを蹴り込み、ボールをサントリー陣内に戻す。さらに、回して攻め上がるサントリーはスローフォワード。スクラムでコラプシングと、サントリーはミスとペナルティを重ねる。リコーはタッチキックを蹴り、左サイドゴール前ラインアウトのチャンスを得る。ここでリコーはノットストレート。サントリーボールのスクラムとなる。一気に攻めたい場面で惜しいミスとなった。このプレーで攻守が入れ替わる。サントリーのアタックが続き、リコーはディフェンスに追われた。

30分過ぎに、ボールを奪うと一気にリコーのアタックの局面に。激しいディフェンスに遭いなかなかゲインはできなかった。リコーはペナルティを出さず我慢して攻め、すこしずつ前へ。ゴールラインまで残り10mまできて一度ターンオーバーされる。36分、FB小吹に替えて山藤史也。

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 ラインアウトからアタックを試みるもターンオーバーされる形が数回続いたが、相手のキックミスでリコーのチャンスは続く。37分、左サイド15m付近のラインアウトから左中間にポイントをつくる。HO森らが数回縦に突いた後、展開。SO河野がオープンサイドのCTBノヌー、エリソンとつなぎラインブレイク。右中間のギャップをエリソンが抜け、次々と追いすがるサントリーのデイフェンダーをハンドオフ。ゴール右にトライ。コンバージョンが決まり24対26。2点差に迫る。

一気に盛り上がる山梨・中銀スタジアム。キックオフボールが飛ぶ。右サイド22mライン付近でキャッチすると、パスを受けたSO河野がキックを蹴り込む。サントリーがこれを蹴り返す。リコーはボールを回すがパスが乱れる。しかしこぼれ球を拾いにいったサントリーがノックオン。

リコーはスクラムからボールをキープし最後のアタックを仕掛けると、ほどなくホーン。リコーは、最後のワンプレーにかけ、ボールを回し続ける。サントリーディフェンスのギャップにアタックを繰り返し、ゲインを図っていく。
しかし、サントリーの必死のディフェンスにノックオン。無情にもノーサイドのホイッスル。24対26――。サントリーを追い詰めたリコーだったが、勝利はこの瞬間その手からこぼれてしまった。

滝澤は『心と心も鎖で結べ』と。今足りないのはそれだけだ

 「(感じたのは手ごたえか、課題か)両方ですね。手ごたえはディフェンスのところ。組織が崩される場面はあまりなかった。クイックボールを出そうとしてきたチームに対して、しっかりファイトして、球出しを遅らせて自分たちのペースに持ち込むことができた。アタックでは、ディフェンスで少し疲れてしまい、パターンを実行しきれなかった部分はありました。それから一番感じたのは、ボールキャリアとサポートの距離が離れてしまって、それでクイックボールが出なかったこと。ハーフタイムで、そのあたり意識して臨もうという話しました。ディフェンスが長くて、前からの課題なんですけどね。(それでも、2点差にまで迫ったが)今日は勝ちきらないと」(FL川上力也)

「経験ですかね。試合中、状況はどんどん変わりますが、一番大事なことは何なのかが常にチーム内で共有できるよう、成長する必要はまだあると感じます。滝澤が抜けたあと、チームが同じ方向を向けるような決定力のようなものがもう少しあるといい。全体的にはフォワードを中心にみんなよくファイトしてくれて、後半はテンポよくトライが獲れた」(SH池田渉)
それでもスコアは2点差。しかし、この試合での勝点差は実に「4」。

「滝澤キャプテンが、プレーヤーとプレーヤーの横のつながりを"チェーン(鎖)"に例え、ディフェンス時などにばらけないよう声を掛け合ってきたんですが、『実際のプレーだけじゃない。心と心も鎖で結ばないとダメだ』って。今チームに必要なのは、まさにそこの部分。技術や戦術、そういう部分の差はあまり感じません」(SH池田渉)

「自分たちのプレーができれば、やれるんだという手ごたえはあった。ただ今日は、それができたのが80分間ではなくて70分間ぐらいだった、ということ。上のチームには80分間やり続けないと勝てない。ミスを僕らからしていてはいけない、というのはありましたね。
次の相手の近鉄には春から繰り返し闘って勝っています。向こうは気持ちを入れてぶつかってくると思う。それを受けてしまわず、今日のように僕らからディフェンスを仕掛けられれば、アタックでも流れがくると思う。相手によってプレーの質に差が出てしいまわないように」(WTB小松大祐)

手ごたえと課題。その両方を得る一戦となった今年のサントリー戦。試合後の山品監督の第一声は力強かった。
「気持ちがすべてだった。いいプレーができました。リコーにとってはシーズンが終わったとき『ターニングポイントだった』と思える試合になったと思います。多くの得るものがありました」

試合の感想を述べる表情は、新監督として、試行錯誤を経ながらつくりあげてきたチームが進む道が、正しく目標につながっているのだという確信がうかがえた。

次節は12月18日(日曜日)13時からの京都・西京極競技場での近鉄ライナーズ戦となる。「個の力を生かしてくる」(FL川上力也)相手に対し、"チェーン"となって全力でぶつかるリコーの力強い闘いをぜひ、見届けていただきたい。

(文 ・ HP運営担当)

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