2011-2012 トップリーグ 第2節 対 ヤマハ発動機ジュビロ
2011.11.09
「相手にプレッシャーをかけ続け、パターン通りにやらせない」ゲームからの多くの気づき
11月3日(木)、前日に来日したCTBマア・ノヌーが練習に参加することを聞いた社員やファンの方々、テレビ局の取材陣などが訪れ少しにぎやかなリコー総合グラウンド。第1節で、監督として初勝利をつかんだ山品博嗣監督は、第2節のヤマハ発動機ジュビロ(ヤマハ)戦のポイントをこう話した。
「まずはスクラムですね。今回布陣を考えるときに優先させたテーマ。そしてボールを前に運んでくる8番、9番、12番の選手をきっちりと止めること。これは対策というより、気持ちを前面に出し1対1に勝ってポジションを支配できるかどうか。
ノヌーの出場については、モチベーションのコントロールができていたので決めました。大きな目標を達成した後だけに、そこが気になっていましたが、しっかりしたものを持っていましたので」
キャプテンのHO滝澤佳之が怪我でメンバーを外れるということになったが、練習の雰囲気は、ゲームキャプテンに指名されたバイスキャプテン、FB河野好光らによっていつも通り元気な声のなか行われた。
「きちっとしたアタックのパターンを持つヤマハ。そこに、プレッシャーをかけ続けて、パターン通りにやらせないことが最も大切なことだと思っています」(FB河野好光)
5日12時、曇天の秩父宮ラグビー場。ヤマハのキックで試合が始まる。
左中間に蹴り込んだキックオフボールが密集で弾かれ、ヤマハサイドに転がる。これを拾った9番が鋭くリコー陣内に突入。ボールをつなぎ、最初のアタックをヤマハが仕掛ける。
リコーは、激しくタックルしボールキャリアーに絡んでいく。自陣右中間30m付近でノットロールアウェイの反則、いきなりゴールを狙える位置でヤマハはペナルティキックを得る。1分、15番が決め0対3とヤマハが先制する。
CTB金澤良のキックオフで試合再開。これをヤマハがマイボールにすると、FB同士のキックの蹴り合いの後、河野好光のキックがハーフウェイライン付近左サイドのタッチラインを割り、ヤマハボールのラインアウトに。これをキープするとヤマハが再びアタック左中間で突破を図る。何度目かのフェイズで、NO.8ジェームス・ハスケルがボールを奪いターンオーバー。リコーは最初のアタックを仕掛けるまでに、試合開始から4分を要した。
しかし、ボールをキープできず、どうにもリズムに乗れなかったが、NO.8ハスケルがハーフウェイライン付近の密集でボールを奪う。左中間でパスを受けたFLマイケル・ブロードハーストが一気にゲインし、さらにつないでCTB山藤史也、CTB金澤からのパスを受けたSOタマティ・エリソンらが縦に切り込み敵陣深くまで前進する。右サイド22m付近でFB河野につなぐと、パスダミーをひとつ入れすぐさま加速。ヤマハの11番と15番の間を鋭く抜け、一気にゴールラインまで走り中央にトライ。コンバージョンも決まり、10分、7対3とリコーが逆転した。
直後の13分、ゴール前のラックで、倒れた選手が放しかけたボールを奪いにいったNO.8ハスケルに対しホールディングの判定。ヤマハはペナルティゴールを狙い成功。7対6と1点差に詰める。
その後は互いに一進一退。ヤマハは鋭くラインブレイクを狙い、リコーはきっちりディフェンスする。反応よく前に出て、タックルを的確に当てていく。
しかしアタックでは、22mライン手前付近でボールを奪われる場面が続き、決定機がつくれない。18分には、自陣10mライン付近でペナルティを得ながらタッチキックでミス。相手にボールを渡してしまう場面も。
ヤマハの長いアタックに対し、反則をせず、前進も許さないリコーが、しのぎ続けた25分。リコー陣内10mライン付近ほぼ正面の位置でリコーがオフサイド。ヤマハはペナルティゴールを狙い成功。7対9と逆転。
再三攻め続けるが、トライに結びつかず
次の攻撃はリコー。ボールを回し、ギャップを見出してはFLブロードハースト、LOカウヘンガ桜エモシらが縦に力強く突破を図りゲインに成功する。
22mラインを越えると、相手反則が出て、タッチキックを蹴りゴール前ラインアウトのチャンスを得る。ゴールライン上までボールを持っていくが惜しくもトライを獲れず、ラックでターンオーバーを許す。
ヤマハのタッチキックは短く、リコーは22mライン付近のラインアウトから再びアタック。LOカウヘンガが再び力強くボールを前に運びポイントをつくるとバックスに展開し、ラインブレイクを狙う。しかし、ヤマハにラックでボールを奪われ、歯がゆい展開が続く。
ヤマハは自陣からこのボールをつないでアタック。リコーのフォワードとフォワードの間のギャップを12番が鋭く突き、一気にゴール前までせまる。トライかと思われたが、フォローしていた15番へのパスにWTB小松大祐が身体をぶつけ、ノックオンを誘った。
前半終了間際の37分、リコーは自陣でラインアウトを得て、FLブロードハースト→川上力也がボールを前へ運ぶ。さらにSOエリソンがヤマハ陣内深くへキックを蹴り、22mラインを越える。
ラインアウトでヤマハがノットストレートを犯し得た右中間のスクラムから、SH池田渉がブラインドサイドを突く。そこからボールを回し、リコーは突進を繰り返す。ゴール前の攻防が続いたが、40分経過のホーンが鳴る直前にヤマハにオフサイド。ほぼ正面の位置からFB河野がペナルティゴールを決め、10対9と再逆転に成功。ハーフタイムへ。
マア・ノヌー、後半14分に登場
後半早々、リコーが攻め込み、スクラムでも力強く押してコラプシングを誘ってタッチキックを蹴りゴールに迫る。しかしラック戦でヤマハの粘り強いディフェンスにあい、リコーにノットリリースザボール。攻守が入れ替わる。
リコーはヤマハのラインアウトを再び奪いアタックを仕掛けるが、倒されたLOカウヘンガがボールを置いたところで、ヤマハ5番がジャッカル。ここから反撃を浴び7分、展開され左サイドを破られ、11番にトライを許す。コンバージョンも決まって10対16。リコーは再びリードを奪われた。
リコーも攻勢に転じ、ヤマハ陣内に攻め込みボールを回すと、ヤマハにハンドリングミス。スクラムでも優勢を保ち相手反則を誘うと14分、左中間22mライン付近からペナルティゴールを狙うが僅かに外れる。キック後、リコーはFL覺來弦とマア・ノヌーを投入。ノヌーの登場に、秩父宮が大歓声に包まれた。
短いドロップアウトでボールをキープしたヤマハは、細かいつなぎから前に前にボールを運んだ。リコーがノットロールアウェイを犯すと、キックで一気にリコー陣内深くゲイン。ラインアウトからモール、ラックと状況を変えながらもヤマハはボールを保持し18分、展開し中央を12番が抜けてトライ。コンバージョンも決まり10対23と点差が開く。
キックオフボールをキープしたヤマハは、これをつなごうとしてノックオン。リコーはヤマハ陣内左中間22mの先でスクラムを得る。NO.8ハスケルが、すかさず持ち出し右へ展開。SOエリソン、FB河野、そして大外のWTB小吹祐介に回す。
21分、小吹はディフェンダー2人が外に向かってプレッシャーをかけてくるのを外し、内側に切れ込んでトライ。角度のあるコンバージョンを河野が決め、17対23とリコーが喰らいつく。この後リコーはLO山本健太に替えて柳川大樹をピッチへ。残り20分の勝負となった。
リコーのペナルティに乗じたヤマハが一気にペースをつかむ。
25分に左右にボールを振り、空いた右サイドを14番が破ってトライ(コンバージョンは失敗)。31分にはリコーのノットロールアウェイで得た正面やや左25m付近からのペナルティゴールに成功。34分には縦の突破でつくったゴール前中央のポイントから大外に振られてトライを奪われ、39分にはリコーが攻め込みながらもボールを奪われ、ヤマハが自陣からアタック。21番のビッグゲインへの反応が遅れ整わないリコーのディフェンスを尻目に、アタックラインを整えたヤマハが確実にボールを回し、9番が右隅にトライ。
ホーンが鳴り、コンバージョンも決まったところでノーサイド。リコーはトップリーグ第2節ヤマハ発動機ジュビロ戦に17対45で敗れた。
ノヌー選手は、日本で初のピッチに立った。一つひとつのプレーに、スタンドが大いに沸いた。
ただ、ファンの皆さんが期待していた、ノヌー選手が本来持っている華麗なステップや前への突進は、次のホンダヒート戦以降での楽しみとなった。
「少しずつ、自分たちのやりたいことができなくなっていった」
「後半は、ヤマハのプレッシャーを受けてしまった。試合を通じブレイクダウン回りの修正ができなかったのが敗因です」(山品博嗣監督)
「前半はアタック、ディフェンスともにリコーらしいラグビーができたと思う。後半はコミュニケーション不足もあって、プレッシャーを受けてしまった」(FB河野好光)
試合後の記者会見に出席した両者は、ヤマハのアタックのプレッシャーに対しリアクションを速く保てず受けに回ってしまった部分に敗因の一つがあったと話した。
河野が一定の評価を下したように、前半、相手の前進をぴたりと止めるディフェンスは安定感があった。なかなかゲインできないヤマハは焦れているようだった。スクラムもラインアウトも、相手を上回る出来だった。ただ、そこからボールを奪いアタックにつなげたり、ミスを突くという場面は少なかったようにも映った。
「うーん。それでも前半はトライを獲られていないし、あれはあれでよかったのかな、と思うんですけどね。ディフェンスしているうちに向こうの人数がどんどん少なくなっている感じもありましたし。まだビデオで確認してみないと何とも言えないですけれど」(CTB山藤史也)。
反則を出さず規律を守るというテーマとの兼ね合いを考えれば、難しいところなのかもしれない。
後半、トライを決め、最後まであきらめずディフェンスし続ける姿が印象に残った小吹祐介はこんな感想を述べた。
「後半は少しだけど足が止まったかもしれない。足が止まって、人と人の間が広くなって、コミュニケーションがとりにくくなって。少しずつ自分たちのやりたいことができなくなっていった気がする。相手に対し一歩遅れるだけでも、それを取り返すのはすごく大変。本当は相手にそういう思いをさせないといけなかった」
初のフル出場を果たしたNO.8ジェームス・ハスケルは激しくブレイクダウンに絡んでいったが、この試合をどう感じたか?
「日本のラグビーは展開がめまぐるしく変わる。ブレイクダウンでも、ディフェンスのスペーシングでも、基礎に従って万全にやれていないとすぐに立場は入れ替わってしまう。そんな怖さがあるのが日本のラグビーなのかなという印象を持ちました。
シーズンが始まって2試合目なので、パニックになる必要はないと思うけれど、ラグビーにおいてディフェンスは最も大事なもののひとつ。フォーカスしたテーマについては、80分間しっかり継続できるようにならないといけない。トップリーグの試合を視ていると『10分間で3トライ』というような場面もある。だからなおさら『80分間』を通じてしっかりプレーするということが大切」
開幕戦からの秩父宮3連戦の第2戦、リコーにとって悔しい結果だった。来週、再来週と試合は続くが、アフターマッチファンクションを終えた山品監督は選手を集め声をかけた。
「引きずらないように。来週のホンダ戦に向けてしっかり準備を。しっかりリカバリーして、心身ともにリフレッシュしよう」
次戦は11月12日(土)12時から、秩父宮ラグビー場でのホンダヒート戦。今シーズン再昇格を果たしたホンダは、残留を懸け強い気持ちでぶつかってくる。そんな相手に負けない熱い、リコーのスピードラグビーをグラウンドで披露し、"加速"のきっかけをつかんでほしい。
(文 ・ HP運営担当)