2011-2012 プレシーズンマッチ 対 近鉄ライナーズ

2011.10.20

「ディフェンスはセットスピード。アタックは精度だ」

 トップリーグ開幕まで2週間となった10月15日、土曜日。リコーブラックラムズ(リコーラグビー部)は近鉄ライナーズと今季最後のプレシーズンマッチを闘った。

前週のサントリーサンゴリアスとのゲームには敗れたものの、メンバー、スタッフは結果を冷静に受け止めている。
「アタックの実行力、精度が甘かったですね。ボールを奪ってはミスが出て、アタックができなかった。ディフェンスでは、相手がいいセットプレーをしていたこともあり、練習で積上げた"前に出るディフェンス"にまで至らなかった。
セットプレーを少しでも崩せていれば、前に出てディフェンスができたはず。前に出られていれば、ブレイクダウン(接点)でプレッシャーをかけることができる。プレッシャーをかければ、クイックボールを出させなかった。スローボールにすることができれば、アタックを減らせた。このサイクルに持ち込めなかったのが、今回の結果でしょう」

山品博嗣監督もアタック、ディフェンス、それぞれの問題点についてクリアに答える。
「今日の試合のテーマは、ディフェンスのセットスピードを上げること。アタックは精度」
これは就任直後、最初に掲げたテーマだ。チームのアウトラインを描いている段階から「勝つために必要なこと」として掲げ、選手に求めてきたテーマの重要性を、指揮官は改めて感じている。

「結局、行き着く所はそこなんですよね」

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 強い横風が吹く、曇天のリコー総合グラウンド。13時、ホイッスルが鳴り、CTB金澤良のキックで試合が始まった。横風に流されたボールは、バウンドして左サイドタッチラインを割る。

近鉄のラインアウトとなるが、ボールがこぼれる。密集内で近鉄にノックオン。リコーがスクラムを得た。安定感を感じるスクラムからボールを持ち出し展開。左中間でWTB小松大祐がラインブレイクを狙うと、近鉄にオフサイド。リコーは左サイドにタッチキックに蹴り、ゴール前ラインアウトのチャンスをつかむ。

ラインアウトをキープしたリコーはモールをしっかり組み、一気に前へ。力強い前進を見せ、ゴールラインを突破。LOカウヘンガ桜エモシが左隅にグラウンディング。開始2分で先制トライを奪った。SO河野好光が蹴ったコンバージョンは外れたが、リコーは5対0とリードした。

しかし10分、リコーの自陣からのキックがまたも風に流され、ダイレクトタッチとなる。22mライン付近の近鉄のラインアウトでこぼれたボールを奪ったが、SO河野が敵陣に蹴り込んだボールをキャッチした近鉄のバックスがカウンターアタックを仕掛ける。リコーのディフェンスラインの整備が遅れた左中間付近に食い込み、22mライン付近までボールを運ぶ。リコーも食らいついて、いったん前進を止めたが、一呼吸置いて近鉄10番が密集を縦に抜け出ると左中間にトライ。コンバージョンは外れたが、近鉄が5対5の同点に追いついた。

前半中盤、リコーのディシプリンに乱れ

 直後のキックオフで、ボール落下点で近鉄がペナルティ。リコーはタッチキックを蹴り、ゴール前のラインアウトを得る。一度ボールを奪われるが即座にターンオーバーするとボールを展開、FL柳川大樹、LOカウヘンガが突破を狙っていく。右サイドタッチライン際にポイントをつくると、カウヘンガがラックを飛び越え、前へ抜け出そうとするが惜しくもライン外に押し出された。

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 ここからリコーのディシプリンに乱れが。ラインアウトで反則を犯すと近鉄が素早くリスタート。一気にリコー陣内までゲイン。さらにグラバーキックを蹴りチェイス。ここでディフェンスがオブストラクション。ペナルティキックでリコーゴール前のラインアウトのピンチを迎える。ここはラインアウトのボールを奪い、WTBロイ・キニキニラウのキックで難を逃れた。

だが、タッチを割らなかったボールをキャッチした近鉄はまたもカウンターアタック。22mライン付近でボールを中央へ展開すると、ディフェンスにいったリコーにノットロールアウェイ。またもペナルティキックを蹴られゴール前ラインアウトに。なんとか相手のミスで難を逃れたが、リコーはディフェンスに追われる苦しい時間が続いた。

押し込まれながらも粘り強く守ったリコーは、前半終了直前の40分、リコー陣内10mライン付近で、強烈なタックルでWTB小松がアタックを仕掛けた相手を倒すと、ボールを離さず近鉄に反則。リコーはキックで前進し、敵陣22mライン手前でラインアウト。ボールをキープしたリコーは連続攻撃に出る。中央22mライン付近で近鉄が反則を犯すと、リコーはすぐリスタート。FLマイケル・ブロードハースト、柳川、LOカウヘンガらが次々にディフェンスラインのギャップをこじ開けにかかる。そしてついに右サイドを突破すると、SO河野がステップを切り右隅にトライ。コンバージョンも決め、苦しい時間を耐えたリコーが7点を追加、12対5でハーフタイムに。

カウヘンガが、力強くゲイン突破を連発

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 後半開始直後、リコーは好調なLOカウヘンガの突破でチャンスをつくるが、反則を2つ続け自陣に攻め込まれる。

ゴール前でのディフェンスの局面を迎えたが、WTB小松、FB小吹が、相手がノックオンしたこぼれ球をつないで走りゲイン。ピンチを脱した。

10分、リコーはメンバー交代。相亮太がNO.8ロッキー・ハビリに替わりFL。FLのブロードハーストがNO.8に。神尾卓志が池田渉に替わりSHに入った。

15分には、自陣22mライン付近でNO.8ブロードハーストがボールをジャッカル。ここからボールをつなぎ、SO河野が一気にゲイン、さらにサポートしたLOカウヘンガがボールを受けるとディフェンダーをなぎ倒して前進、左中間に飛び込みトライ。コンバージョンは外れたがリコーが5点を追加し17対5とリードを拡げた。

20分、リコー陣内10mライン付近のスクラムでリコーが反則。近鉄は素早くリスタートすると一気にディフェンスラインをすり抜けた。14番が右隅にトライ、コンバージョンも決め17対12と再び点差は縮まった。

直後、リコーはLO山本健太、カウヘンガに替えて、川上力也と馬渕武史を投入。川上はFLに、替わって柳川がLOのポジションへ。さらにHO滝澤に替わり野口真寛がピッチへ。

30分、近鉄陣内10mライン付近のスクラムから、CTB山藤史也のアタックでポイントをつくり、SH神尾からWTBキニキニラウにつなぎ右サイドを突破。タックルを仕掛けたディフェンダーを3人ハンドオフで退け、一気にゴールラインを越えトライ。コンバージョンも決まり、リコーが24対12とした。

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 このトライの後、リコーは再び選手交代。PR高橋英明に替わり柴田和宏、LO柳川に替わり金栄釱が入りFL、相亮太がLOへ。SO河野に替わり徳永亮、WTB小松に替わり横山伸一を送る。

最後の10分、一度ゴール前まで攻め込まれるピンチを迎えるもFL金栄釱らのアグレッシブなタックルが決まるなどして守り切り、リコーは24対12で近鉄に勝利した。

やろうとしていることがうまくいったときは、これまでよりもずっといい(CTB金澤良)

 この試合、気がついたのは"バックス発"の声の多さだ。

「フォワードは献身的にしんどい仕事やってくれている。でも、フェイズを重ねていく中でより最適な形で動くためには、状況が見えているバックスが声を出して指示する必要がある。それは練習中から心がけているのですが、そこはもう少しかな」(CTB金澤良)

「ユニットそれぞれではうまくいっているけれど、チームとしてのプレー、例えばキックした後、フォワードとバックスが一体になって上がって行き網を張る、壁をつくるというようなプレーでは、まだ精度を上げていく必要がありますね。
声を出していた? それは自分のこれまでの経験からできる予測を、チームに伝えたりはしています。ここのところテレビゲームみたいな感じで、試合が客観的に見えるようになってきたんですよ。3Dで。その視点から見えたことは、声にしています」(SH池田)

夏合宿で、レオン・ホールデンヘッドコーチが「車はできました。これからガソリンを入れるところ」と、フィットネス強化を目的とした合宿を前に、チームの現状をそう表現した。
ベテラン選手らが中心となり、試合中に細かな指示を交わす様子は、ヘッドコーチの比喩を借りるならば、「ドライバー(=メンバー、スタッフ)が、ミラーやシートの位置を合わせたり、ハンドルの遊びを確かめている段階」といったところか。

「自分たちがやろうとしていることがうまくいったときは、これまでよりもずっといいラグビーができていると感じています」(CTB金澤)

"新車"のポテンシャルには、選手も手応えを感じている。10月29日のトップリーグ開幕戦、秩父宮ラグビー場での披露まで残り2週間を切った。

(文 ・ HP運営担当)

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