2010-2011 トップリーグ 第11節 対 NTTコミュニケーションズシャイニングアークス

2010.12.23

「競った試合を取る」に挑戦するリコーラグビー部

 今シーズン、接戦が続いているリコーブラックラムズ(リコーラグビー部)。トップリーグ10試合を闘い得失点差はプラス。ボーナスポイントも確実に獲得してきた。多くの選手から「自分たちのラグビーはできている」という声が聞こえてくる。だが、次なる目標として「接戦を勝ち切る」というテーマを口にする選手も増えた。

「『競った試合を取るには』というテーマのミーティングがありました。時間の使い方やエリアの取り方など、競った試合で相手を上回って終わらせるためにすべきことを確認しました」。前節のクボタスピアーズ戦終了後LO相 亮太は教えてくれた。終盤を迎え、プロセスだけではなく結果にこだわるリコーラグビー部は、もう一歩前進してシーズンを締めくくろうとしている。

「勢いのあるチーム。これまで勝ってきたけれど、そのイメージで闘ってはいけない」
HO滝澤佳之が警戒するNTTコミュニケーションズシャイニングアークス(NTTコム)とのゲームで、リコーは接戦を勝ち切るというテーマと向かい合った。

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 茨城県・水戸市のケーズデンキスタジアムは晴れ。メインスタンドを背に左から右、北東からの冷たい風がわずかに吹く。前半はその風をNTTコムが背負う。リコーは風に向かってFBスティーブン・ラーカムがキックオフ。右サイド深めに飛んだボールをキャッチしてNTTコムがまわす。中央付近からキックを狙うと飛び出してきたCTBタマティ・エリソンがチャージ。こぼれ球にFLマイケル・ブロードハーストが飛びつきマイボールにすると、LOカウヘンガ桜エモシが即、サポートして前進。捕まるが、大きく手を伸ばしボールをFBラーカムへパス。

中央から右サイドへ展開、WTB星野将利が内に切れ込みゲイン。さらにボールをつなぎ小松大祐が左サイドの突破を狙う。すると左中間22mライン付近のラックでNTTコムが倒れ込み。ペナルティを得たリコーは2分、SO河野好光が確実に決め3対0と先制する。

大外駆け抜けたエリソン、ラーカムへつなぎトライ

 直後の4分、中央ハーフウェイライン際、NTTコム陣内でリコーがオフサイド。ペナルティを得たNTTコムは自陣から15番が約50mのロングペナルティゴールを狙い成功。3対3の同点に。

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 リコーは敵陣左サイドに蹴り込んだキックオフボールのブレイクダウンで競り勝つ。直後にノックオンがありNTTコムボールのスクラムとなるが、コラプシングの反則でボールを取り戻す。左サイドゴール間近のタッチに蹴り出し、ラインアウトからバックスに展開。右サイドを突くが再びノックオン。ボールはNTTコムに。

スクラムからキックの蹴り合いに。NTTコムがじりじりと前進してリコー陣内に入ったところでリコーにレイトチャージの反則。10分、ほぼ正面10mライン付近からNTTコム10番がゴールに成功。リコーは3対6とリードを奪われる。

14分、リコーはCTBエリソンが自陣からの攻撃でゲイン。ゴール前に迫ると、22mライン付近でLOカウヘンガらが縦への突進でディフェンスラインの突破を図る。リコーはスクラムを得てさらに攻撃を仕掛け、ゴールに迫る。しかしNTTコムが守り切りタッチキックに逃れる。

17分、敵陣左サイド22mライン付近のラインアウトからFBラーカムに回しキック。NTTコムが処理にもたつく間にリコーがターンオーバー、マイボールにして右サイドタッチライン際をCTBエリソンが突破する。ゴールライン手前で内側へフォローに走っていたFBラーカムにパスし、そのまま右中間にトライ。コンバージョンも決まり10対6と逆転する。リコーは23分にPR伊藤雄大に替えて柴田和宏を送る。

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 ゴール前に迫るチャンスを何度かつくるもNTTコムの精度の高いディフェンスにミスやペナルティを誘発させられトライを奪えないリコー。31分には自陣のラックでノットリリースザボールを犯すと、NTTコムが右中間10mライン付近からゴールを狙う。10番のキックはバーに当たりノーゴールも、勢いづいたNTTコムは直後に得たゴール前ラインアウトからアタックを繰り返す。リコーもディフェンスに集中しよく守る。LOカウヘンガのタックルが決まるとNTTコムがノックオン。

しかし、スクラムでリコーがコラプシング。38分、NTTコムは右サイド22mラインのやや内側からペナルティゴールを決め10対9と点差を詰める。その後はキックを蹴り合い互いに攻撃の糸口を探るがそのまま前半が終わる。

堅守見せるNTTコム。後半ももつれる

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 後半、リコーはNO.8川上力也に替えて金 栄釱を送る。NTTコムのキックオフで試合が再開するとリコーはブレイクダウンで強さを見せる。ターンオーバーを繰り返し敵陣へ侵入。5分にLOカウヘンガに替えてハレ・ティーポレ、FBラーカムに替えて横山伸一。

リコーは、LOにブロードハーストと相 亮太、FLに覺來 弦と金、ティーポレがNO.8。WTB小松がCTB、CTBエリソンがFBに入り、横山伸はWTBへ。アタックのテンポアップを狙う。

リコーは22mライン付近でアタックを繰り返す。しかし前半同様厚い壁と化すNTTコムのディフェンスライン。ラックサイドを繰り返し突くが破れず、SH池田渉が動きショートパント。しかしNTTコムは冷静に処理し、タッチに蹴り出す。

左サイド10mライン付近のラインアウトからリコーが展開。バックスでアタックを仕掛ける。この対応でNTTコムがノットロールアウェイ。8分、左サイド10mライン付近からのペナルティゴールをSO河野が成功、13対9とする。

次のチャンスはNTTコムヘ。リコーはキックオフボールをWTBからCTBへコンバートした小松がキャッチ、SO河野につなぐがノックオン。さらに22mライン外側相手ボールのスクラムからの攻撃でノットロールアウェイ。ミスとペナルティが重なる。11分、NTTコムは正面やや右からゴールを狙うが、これを10番が外す。

15分、NTTコムのスクラムからのアタックへの対応で危険なプレーがあったとしてリコーにペナルティ。タッチキックでゲインされゴール前ラインアウトのピンチを迎える。そのディフェンスで倒れ込みの反則。リスタートで判断よくギャップを突いた9番が中央にトライ。コンバージョンも決まり13対16とNTTコムが再逆転する。

17分、リコーも落ち着いて反撃。SO河野のキックオフボールを追ったFL金栄釱が右サイド22m手前でボールを確保、サポートしたHO滝澤佳之がパスを受け突進するとNTTコムがオフサイド。右サイド22m、約45度からSO河野がゴールを狙う。これは惜しくも外れる。

ドロップアウトで再開。キックからカウンターを仕掛けるとFBの位置に入ったエリソンがスペースを見出し最後列からランでゲイン。左サイド22mラインに迫ると、止めに行ったNTTコムがハイタックルの反則。リコーはほぼ正面からのペナルティゴールに成功。19分、16対16の同点に追いつく。

だがシーソーゲームは続く。リコーは自陣スクラムでNTTコムがコラプシングを犯すとタッチに蹴り前進を図る。ハーフウェイライン付近のマイボールラインアウトとするが、これを奪われる。さらにNTTコムのアタックに対しハイタックル。23分、NTTコムはグラウンドのほぼ中央から15番がゴールを狙い成功。16対19とリコーは再びリードを奪われる。

ここ一番でエリソンのビッグプレー

 リコーは、今シーズン重ねて来た接戦の経験を終盤に活かした。
キックオフボールをLOに入ったブロードハーストが追いプレッシャーをかけ、ミスキックを誘う。左サイド22mライン付近のラインアウトからアタック。右中間でスクラムを得てさらに攻める。ゴールライン間際の右中間で反則を誘うと、CTB山藤史也がリスタート、トライを狙うが惜しくも届かない。リコーはボールをキープし、数分にわたりラックサイドを繰り返し突く。しかしNTTコムのディフェンスは堅い。

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 31分、リコーはゴール正面で相手ペナルティを得るとアタックを一旦切り上げゴールを指差す。SO河野がこれに成功。19対19と再び追いつく。なおNTTコムは6番が反則の繰り返しで10分間の一時的退出を科される。

攻め続けるリコー。33分、左サイドハーフウェイライン付近の相手ラインアウトを奪いモールで前進しSH池田がパント。NTTコムはこれをキャッチし、リコー陣内深くへキック。これに追いついたFBエリソンが、22mライン付近から右サイドへ蹴り返す。ボールは無人のNTTコム陣内右隅で弾みタッチを割る絶妙のタッチキック。

22mライン付近のラインアウトをキープしたNTTコムは、バックスに回しタッチキックに逃れる。しかし距離が出ずほぼ同位置で今度はリコーのラインアウトに。

ラインアウトから出たボールはFBエリソンに。正面やや右、距離は約35m。足元にボールを落とし、右足を振り抜く――。ボールは弧を描きクロスバーを越える。36分、ドロップゴール成功。22対19。

残り4分、リコーの集中力は途切れない。キックオフボールをつなぎ、WTB横山伸が敵陣深くキックを蹴り込む。リコーは攻め上がるNTTコムに激しいプレッシャーをかけると、ハーフウェイライン付近でターンオーバー。ボールはSO河野からFBエリソンへ。ステップを刻みディフェンダーをかわし、トップスピードに加速。大歓声を浴びながらそのままインゴールエリアへ達し、左中間へ駄目押しトライ。37分、コンバージョンも決まって29対19。最終盤で試合を動かしたリコーはそのままリードを守り切ってノーサイド。トップリーグではチーム史上最多となる5勝目を記録。初のワイルドカードトーナメント出場を大きく引き寄せる勝ち点4を手にした。

「前半(10対9)は余計なペナルティがあって、それをスコアにつなげられていましたが、よく体を張り、ボールを動かしていたという意味ではいい感触でした。ここまで前半によいパフォーマンスを見せられない試合もありましたが、それに比べるとかなりいい入りができていると思っていました」(SH池田渉)

点差はつかなかったが、前半の闘いに池田は手応えを感じていた。後半から出場したFL金 栄釱にはこんな指示があった。
「求められていたことは明確。アタックのテンポを上げること、相手にクリーンなボールを出させず相手のアタックをスローダウンさせること。あとはムードをつくっていくこと。
ポイントポイントに顔を出せたとは思うのですが、もう少しプレーの精度を上げたかったですね。でも、チームとしてトップリーグで初の5勝という1つの歴史をつくれたのはうれしい」

ノーサイドの瞬間、グラウンド上で、スタンドで、メンバーたちは腕を突き上げ歓喜の声を上げた。だが、控え室に戻ってきた選手たちはすでに次を見据えていた。
「ここまで上位チームとも十分やれています。次に闘う三洋電機とだって、去年は前半リードして折り返すところまでいった。ペナルティコントロールの部分を修正できれば、もっといい試合ができるはず。チームに連戦の疲れ? 最年長の僕が走っているんですから(笑)。やってもらわないと」(SH池田渉)

これで勝ち点は27に伸び7位に浮上。次節は12月26日(日)13時から群馬県・太田市運動公園陸上競技場でトップリーグ王者・三洋電機ワイルドナイツに挑む。準備は万端だ。熱量に満ちたリコーラグビー部が、壁を越え新たな歴史をつくる。

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HO野口真寛選手の母校で、茨城県つくば秀英高校ラグビー部の監督、選手のみなさんをトップリーグ第11節リコーブラックラムズ対NTTコミュニケーションズ戦に招待しました。

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リコーブラックラムズは、トップリーグ第11節リコーブラックラムズ対NTTコミュニケーションズ戦で今シーズン2回目となる、(株)リコー、リコーグループ会社の社員のお子様にエスコートキッズを務めていただきました。

(文 ・ HP運営担当)

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