2010-2011 トップリーグ 第9節 対 神戸製鋼コベルコスティーラーズ

2010.12.09

「もっと何かやれたんじゃないか」を残さない

 前節はトヨタ自動車ヴェルブリッツを追い詰め、確かな手応えを感じるとともに、越えるべき最後の壁を認識したリコーブラックラムズ(リコーラグビー部)。トップリーグ第9節・神戸製鋼コベルコスティーラーズ(神戸製鋼)戦の前々日、選手たちは強い風の吹くリコー総合グラウンド(砧グラウンド)で調整を行う。

「(チームは)状態もいいし、雰囲気もいい。でも上位のチームには勝てていない。サントリーにしてもトヨタにしても負けた後、もっと何かやれたんじゃないか、というのが残っていたんです。それは出し切れてないということ。自分たちのラグビーはできていると思う。だから、あとはいかに出し切るか」。WTB小松大祐は話す。

スターティングメンバーに名を連ねたLO坂本明樹は、公式戦初出場となるゲームに向け、コーチ陣から期待の声をかけられたという。
「始めの30分で出し切ってもいいから思い切ってやれと。緊張? はやめに『いくぞ』って言われていたので、もうないです」

photo

 快晴の高知県・春野総合運動公園陸上競技場。13時、試合開始のホイッスルが響き、神戸製鋼のキックオフで試合が始まる。右サイドに高く上がったボールをキャッチしたリコーは、SO河野好光に回しボールを蹴り返す。これを神戸製鋼がチャージ。ボールはタッチラインを割り、22mライン付近でのラインアウトとなる。リコーはLO坂本がキャッチ、今度はSO河野がしっかりと蹴り出す。

左サイド10mライン付近のラインアウトから神戸製鋼が展開。右サイドでボールがこぼれるとCTB山藤史也が鋭く反応しマイボールに。リコーはすぐに攻撃へと切り替え、SO河野が右サイド22mラインの内側にロングキック、大きく敵陣へのゲインに成功。ラインアウトは神戸製鋼が確実にキープしロングキック。リコーはこれを処理し、カウンターアタックを仕掛けるが自陣でノックオン。この後互いにアタックでノックオンを繰り返し、チャンスをつぶし合う。

前半から「リコーのラグビー」実践、2トライ奪う

 最初の決定機はリコーに。6分、自陣右サイドのスクラムからボールを出し、FBタマティ・エリソンがロングキック。神戸製鋼はカウンターを仕掛けるがCTB山藤がハーフウェイライン付近で相手選手を捕えリコーはボールを奪う。すかさずキックを蹴り込み、ボールが敵陣インゴールエリアに転がる。WTB小松が相手と競り合いながら押さえにいきボールに触れるも接地できずノックオン。

次のチャンスもリコーに。敵陣左サイド22mラインのラインアウトをスティール。すぐさま展開し右サイドを突く。ラックができると神戸製鋼がハンド。ペナルティキックをタッチに蹴り出し、ゴール前右サイドのラインアウトからボールをつなぐ。左サイドでFLマイケル・ブロードハーストが縦に突破を図りゴールに迫るが、神戸製鋼ディフェンスが人数をかけて阻む。ラックになるやSH池田渉がクイックボールを出す。ワイドに展開しボールを右サイドへ。FBエリソン、WTB星野将利、大外を走っていたHO滝澤佳之とつなぎ右中間インゴールに達し14分、トライを決める。コンバージョンも成功し7対0に。リコーが先制する。

photo

 18分には自陣22mラインそばのラインアウトからの神戸製鋼のアタックでCTB山藤が再びボールを奪う。自らキックを蹴りタッチを狙うがこれがダイレクトタッチに。

20分、10mライン付近から再び神戸製鋼のラインアウトになるが、リコーはこぼれたボールを奪いパントを上げる。FBエリソンが敵陣でキャッチするとディフェンスラインのギャップを抜けて中央を独走しトライ。コンバージョンも決まり14対0と点差を広げた。

神戸製鋼のエンジンもかかる。フォワードを中心とした攻撃を仕掛け、20分過ぎからリコー陣内でプレーを続けた。リコーは神戸製鋼のスクラムでのペナルティで相手陣内にボールを押し戻すが、直後にオブストラクション、ノットロールアウェイとペナルティを2つ重ねピンチを招き29分、ゴール前のラインアウトからモール攻撃を受ける。ここはフォワードがこらえたが神戸製鋼はすかさずモールサイドを突く。リコーは一度は止めたが、今度はバックスへ展開され、中央を10番が抜けトライ。コンバージョンも決まり14対7と神戸製鋼が点差を縮める。32分にリコーはPR伊藤雄大に替えて高橋英明。

さらに神戸製鋼は力で攻め入る。リコーはディフェンスに追われた。前半終了直前の39分、ラインアウトをキープした神戸製鋼は4番に回すとラインブレイクし左中間にトライ。コンバージョンも決まり、14対14と追いつく。リコーと神戸製鋼、それぞれがペースを握りあい前半は終了した。

自信に満ちた後半の入り。河野のナイストライ

photo

 CTB金澤良のキックで後半が始まる。神戸製鋼が自陣でノックオン。リコーは敵陣10mライン付近で得たスクラムからサイドアタック。ボールをキープしながら、22mライン付近のディフェンスラインに繰り返し攻撃を仕掛け突破を図る。神戸製鋼も必死のディフェンスで対応する。WTB星野が右サイドタッチライン際を突くがライン外へ押し出された。リコーはトライこそ奪えなかったが、自信に満ちた猛攻で後半も上々の立ち上がりを見せる。3分、LO坂本明樹に替わり覺來弦がグラウンドへ。

5分、ペナルティキックで陣地を取り戻した神戸製鋼のラインアウトを奪うと、リコーはハーフウェイライン付近から展開。クイックボールを出しながら連続攻撃を仕掛け、前進する。右中間22mライン付近のラックからSO河野は、俊敏な動きで縦に抜けラインブレイク。一気にインゴールエリアへ達しトライ。コンバージョンも決めて21対14と再びリードを奪う。

ここから試合は一進一退となる。神戸製鋼の攻撃を冷静にディフェンスするリコー。キックを織り交ぜながらエリアをマネジメントし、決定機をつくらせず上手く試合をコントロールする。13分にFL川上力也に替えて金栄釱がグラウンドへ。

photo

 18分、FBエリソンのタッチキックで神戸製鋼陣内に攻め込む。神戸製鋼はラインアウトを確実にキープし展開。右サイドを自陣からアタックを仕掛けディフェンスラインを突破。リコーは22mラインで捕まえるもペナルティ。タッチキックを蹴られゴール前ラインアウトのピンチを迎える。再び反則が出て神戸製鋼のスクラムに変わるとサイドアタック。ラックでボールをキープしながら神戸製鋼が突進を繰り返す。リコーも粘り強く守ったが、神戸製鋼は突進を継続し19分、8番がゴールポスト下にトライ。コンバージョンも決まり21対21と神戸製鋼が追いつく。リコーはWTB星野に替えて横山伸一、NO8ハレ・ティーポレに替わりジョエル・ウィルソンを送る。

終盤が近づき、両チーム試合を決めるべく、チャンスをうかがい合う。25分、神戸製鋼がラインアウトからボールを回すと、リコーはこれを前に出て止めハーフウェイライン付近のラックでボールを奪う。左サイドを攻め上がるがPR長江有祐がタッチラインの外へ押し出される。直後の神戸製鋼陣内のラインアウトからの密集でPR高橋英明がコラプシングの反則。危険なプレーと見なされ10分間の一時的退場処分となる。

直後の27分、相手ラインアウトのこぼれ球をマイボールとして自陣から攻撃を仕掛けたリコーにペナルティ。神戸製鋼は中央10mライン付近からゴールを狙い成功。21対24。リコーはこの日初めて、神戸製鋼にリードを許す。

リコーは31分、CTB山藤に替えロイ・キニキニラウ、FLウィルソンに替え森雄基を送り終盤の逆転に懸ける。一人少ないながらもリコーは一歩も退かず、気迫溢れるタックルでターンオーバーを繰り返し敵陣に侵入。相手のダイレクトタッチとなるミスキックと反則を突きゴール前のラインアウトを得る。しかしここで反則。神戸製鋼ボールのスクラムに。蹴り返してきたボールをWTB小松がクイックスローでつなぎ、自陣からもう一度アタックを仕掛け、右サイドをCTBキニキニラウが突くあと一歩という場面をつくったが、神戸製鋼が止めてタッチラインの外へ押し出す。

photo

 後半もすでに37分。ラインアウトからのアタックでまたもターンオーバーしたリコーはWTB横山伸がランで中央をゲイン。リコーがハーフウェイラインを越えると、神戸製鋼はディフェンスでオフサイド。リコーはゴールを狙う。

ほぼ正面わずかに左。だが距離は約40m。風はないが大きなプレッシャーがかかるペナルティキック。静まる観衆の視線は、丁寧にボールを置くSO河野へ注がれる。後方へゆっくり下がり、始動。蹴られたボールはゴールに向かい一直線に飛び、ゴールを越えた。成功。リコーは後半39分の土壇場で24対24の同点に追いつく。

ラストワンプレーで、まさかの失点

 残り1分、続きがあった。キックオフボールを左中間でキャッチしたリコーは、ボールを回す。ここで後半40分経過を告げるホーンが鳴る。ボールをタッチに出せば試合はドローで終わる。だが、リコーはアタックを仕掛ける。リコーが目指したのは勝利だった。

しかし、右サイドハーフウェイライン付近のラックで神戸製鋼がターンオーバー。逆襲を浴びる。ボールを回し逆サイドまで展開すると、ここでリコーのディフェンスライン裏へ22番がロングキック。ゴール前に転がるボールに飛びつきセービングするFBエリソンが次のプレーに移るべく立ち上がったとき、相手7番がタックル。サポートした22番がボールを奪う。神戸製鋼はラックをつくり、その右のスペースに20番が飛び込みトライ。

コンバージョンも決まり24対31。ホーン後、ラストワンプレーでのまさかの失点でリコーラグビー部は敗れた。

「今日ラグビーをしっかりやれたのは、リコーだと思っています。今まででもかなり高いレベルでやれたと思う。残念ながら結果だけがついてこなかった。(ラストワンプレーについては?)攻撃的なメンタリティを持っていた。あの位置からでも攻撃をしたかった。それが正しいか、間違っているかはそのチームの判断です」
トッド・ローデン監督兼ヘッドコーチは、人数が少ない状態でも果敢にプレーするなど、試合を通じ攻める姿勢を失わなかった選手達の"Attitude"への評価を結果よりも優先した。

この試合、リコーが相手にリードを許したのは後半27分から37分の10分間のみ。多くの時間を優勢に進めた「勝てた」試合。そう考えれば結末への歯がゆさはつのる。

だが、ここ数試合の課題だったモールへの対応、先に2トライを奪ってみせた前半の試合運び、受けず前に出て止めるディフェンス、高い精度を保ち続けるSO河野好光のプレースキック……成長を見せる選手にチャンスを与えながら、課題に取り組み、強みはさらに伸ばす――現在のリコーの充実が伝わってくる試合でもあった。
「今日は受け入れるしかない。毎試合、成長は感じています。いい試合をしても勝てない時に大事なのは(気持ちを)折れないようにすること。一つひとつのプレーを練習通りやれるようにすること。(勝ちきるためにすべきなのは?)毎日の積み重ねをやめないことです」(SO河野好光)

次節は12月11日(日)13時からの山梨県・小瀬スポーツ公園陸上競技場でのクボタスピアーズ戦。続く惜敗にも折れることなく、勝利に向かいアグレッシブにプレーするリコーラグビー部の健闘が結実することを祈りたい。

(文 ・ HP運営担当)

PAGE TOP