2009-2010 トップリーグ 対 マツダブルーズーマーズ

2010.02.18

 1月9日(土)のトップリーグ(TL)最終節から1ヵ月。リコーブラックラムズ(リコーラグビー部)は、トップキュウシュウA1位でトップチャレンジ1(昇格決定戦)に出場、3位となったマツダブルーズーマーズ(マツダ)との入替戦に臨んだ。

チームは、1月20日(水)~21日(木)に合宿、30日(土)に紅白戦を行ったほかは、これまでやってきたことの再確認と精度のアップに取り組んだ。TL終盤に多く出た故障者も戻ってきた。

「最後の試合だけど、来季に向けたチャレンジマッチととらえる」(チームキャプテン・SH池田渉)

ただ勝つだけではなく、"TAFU"を存分に見せつけて勝たなければいけない試合である。

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 14:00、雪の混じる雨の中、CTB金澤良のキックで試合が始まる。寒さは厳しいが、スタンドの声援は両チームともにいつもに増して大きい。入替戦の空気が漂う。

最初の得点のチャンスはマツダに。4分、リコーラグビー部は自陣22m付近のスクラムでオフサイド。マツダは右中間からゴールを狙ったがバーに当たり得点はならず。

この後はリコーラグビー部の攻撃が続く。しかし、押し込みながらも反則や細かなハンドリングミス、昇格を目指すマツダの気迫あるディフェンスもあり、なかなか最初のトライが奪えない。

だが、SO河野好光が状況を打開する。12分、22mエリア左中間のスクラムからボールをもらうと、ゴール真正面の位置でゴロキック、同時に前方へ鋭く加速。ディフェンスラインの裏に転がったボールを自ら押さえ、トライ。コンバージョンも決まり7対0とリコーラグビー部が先制。

ペースをつかんだリコーラグビー部は、各選手が持ち味を発揮し始める。FWは強いプレッシャーで相手の自由なプレーを阻み、BKは鋭く飛び出し、相手ディフェンスラインのギャップを何度も突いていく。23分にはWTB横山健一が相手タックラーをジャンプしてかわし右サイドを駆け上がるとスタンドが沸いた。

25分、相手8番が一時的退場処分を受けると直後のスクラムでリコーラグビー部は一気に押し込む。左中間22mライン付近からぐいぐい前進してインゴールエリアへ。出血したNO8ピーティー・フェレラに替わって出場していたロッキー・ハビリがトライ。コンバージョンは外れたが12対0とする。

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 33分には、同じ左中間のスクラムから今度はBKへ展開。SO河野、CTB金澤、WTB横山健と鋭く速いパスがつながり、横山健が右隅に飛び込んでトライ。コンバージョンも決まり19対0。さらにリードを広げた。

36分にラインアウトモールからボールを持ち出したマツダ10番がライン裏にするりと抜け出し、サポートした2番にトライを許す。コンバージョンも決まって19対7とされたが、リードを保ち前半を折り返した。

後半に入っても雪の混じった雨は止まない。しかし、リコーラグビー部は気迫溢れるプレーを見せ続けた。3分、右サイドのラインアウトからボールを展開しタイミングをみて、河野が逆サイドの横山健にパス。さらにその外側をフォローしていたHO滝澤佳之にパスがつながると右タッチライン際を走りゴール間際までゲイン。ラックからFL相亮太がグラウンディングに成功してトライ。コンバージョンも決まって26対7。

9分には、自陣でPR長江有祐が相手のキックをチャージしてターンオーバー。つないだボールをSO河野が相手陣内に大きく蹴り込み一気にゲイン。さらにラインアウトのボールを奪うと河野はドロップゴールを狙っていく。惜しくも外れたが、悪コンディションの下でも持ち前の状況判断力をしっかり見せる。

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 リコーラグビー部は12分にモールを押してNO8ロッキー・ハビリがトライ、18分にはSO河野のグラウンド中央の鋭い突破をきっかけになだれ込みPR長江がトライを決め38対7。ここでFBスティーブン・ラーカムに替わり津田翔太、FL川上力也に替わり今季初出場となる相紘二。WTB星野将利に替わりロイ・キニキニラウとメンバーチェンジ。CTB小松大祐がWTBに回りキニキニラウはCTBに入った。フレッシュなメンバーを加えたリコーラグビー部は、相手陣内に攻め込みさらにプレッシャーをかけ続けた。LO田沼広之の大声をあげながらのチャージがミスキックを誘うとスタンドから歓声が上がる。

25分、またもSO河野の突破からボールをつなぎ、CTBキニキニラウが右サイドを抜けると回り込んでゴール中央にトライ、コンバージョンも決まり45対7。

だが34分、反則を繰り返し相手に自陣侵入を許すと、ゴール前のラインアウトから攻撃を仕掛けられマツダ3番にトライを奪われる。コンバージョンは外れたが45対12。

グラウンドに「ディシプリン!(規律を!)」の声が響き、気持ちを入れ替えたリコーラグビー部は最終盤に再び攻撃を見せる。36分には左中間のスクラムを押し込んでトライ。39分には自陣10mライン付近で相手パスを奪ったNO8ロッキー・ハビリが独走、左にサポートしたCTBキニキニラウにパスが通り、左中間にトライを決めた。

リコーラグビー部は59対12で勝利し、TLへの残留が決定した。

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「このコンディションで9トライ。よく頑張ったんではないですか?」

今季の試合をすべて終えたトッド・ローデンヘッドコーチ(HC)はシーズンを振り返った。

「今季、私たちはトップ6にもプレッシャーをかけて闘えていたと思います。印象に残っているのは、サントリー(サンゴリアス)戦ですかね。それから三洋電機(ワイルドナイツ)戦も。
ただ、いい試合はできたけれども、『結果』は出せませんでした。私たちに欠けていたのは、最後の10%の部分だと考えています。"ゲームプランをしっかり守ること"だとか、"ラインアウトの実行力"だとか、"ルールを守りきれず、ペナルティが多かったこと"など。そのどれもが少しずつ足りなかった。(1つの目標としてきた)6位と12位の差はそこにあったと思っています。
また、強く感じたのはTLのどのチームもが、私たちに対ししっかりと準備をしてきたということです。それは、力を認められたということですから誇りに思うべきことでしょう。学ぶことは多くありました。必ずそれらを力に変えて、来シーズンはまた違ったリコーラグビー部を見せたいと思います。結束力のあるチームをね」

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 リコーラグビー部史上最もタフなシーズンとなる――ローデンHCの言葉は、まさにその通りとなった。しかし、得たものは大きい。FBスティーブン・ラーカムは言う。
「飲み込みのはやいチームだと思う。毎週、試合ごとに問題を修正する力がある。僅差の試合で勝つには、何よりも経験が大きな力となります。今シーズンの経験は、これからのためにとても価値あるものです」

――シーズンを通し、グラウンド上で選手とコミュニケーションを取っていましたね。
「個人的な話ですが、かつてジョージ・グレーガン(現サントリー・サンゴリアスSH)にコミュニケーションの重要性をよく説かれ、怠れば叱られたものです。今思えば、私のキャリアにおいて、そうしたコミュニケーションによって得たものは本当に大きかった。互いに何をしようとしているのかを共有することは、あるプレーが正解か不正解かを見極める前に必ず必要な作業ですから。
チームのコミュニケーションレベルを上げることは大切なことですが、そうした点で最も成長を感じたのは河野(好光)かな。僕がチームに入った頃は静かな感じを受けましたが、今では率先してコミュニケーションをとっていますよ」

――若い選手には、もっと伝えたいことがありますか? もっと聞きにきてほしいとか?
「今ちょうどいい感じかな。一度に情報を与えると処理しきれず、パンクしてしまうこともあるものですが、そういうことは起きていませんしね。彼らのラグビーを学ぶ姿勢はいいバランスにあると思います」

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「頑張れよ! お前ら、頑張れよ!」

この試合で現役引退を表明した田沼広之は、グラウンドで胴上げされた後、スタンドの後輩選手たちに向かって叫んでいた。

「感慨? なかったですね。今日の試合の位置づけが、来季に向けての第一歩というものでしたから。そこに立つ以上、後輩たちがいいスタートが切れるようにって集中していたんで。
本当にね、スタンドにいる選手たちにも、グラウンドに立ってほしい選手いっぱいいるんですよ。その気持ちが強いから、そういう言葉が出てきたのかな。でもね、トッド(ローデンHC)が来たとき、本当に厳しい練習をやったんだけど、誰一人逃げずに乗り越えていたから。それを見ているから安心しているというか。これなら、大丈夫だなって思っていますよ」

チームキャプテンとして1シーズンを過ごしたSH池田渉の言葉。
「残留戦って、最後残るために頑張ろうってなると思うんですけど、僕らはチャレンジマッチと考えて、しっかりチャレンジしようって。気持ちとしては来シーズンのスタートでしたね。
今季は、三洋に前半リードしたり、東芝を後半追い上げたり、サントリーに80分間いい試合ができたりと、いいところはたくさんあったと思う。今日もコンディションは悪かったけれどやりたいことの一部はできたので。もちろん課題はありますが、それは明確なので、来季が楽しみな終わり方ですね。
メンバーが固定されていないこのチームが、それでもチームとしてプレーできているのは、普段の生活における結束力を生かしているから。そういう絆で結ばれた仲間とプレーするのって本当に楽しみなんです」

チームは束の間のオフに入る。しかし、「来季に向けたチャレンジマッチ」の言葉が示すように、闘いは既に始まっている。リコーラグビー部史上最も厳しいシーズンを乗り越え、たくましさをました選手たちは夢の実現に向かい"TAFU"に前進する――。来季もさらなる声援を送りたい。

(文 ・ HP運営担当)

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