2009-2010 トップリーグ 対 サントリーサンゴリアス
2009.12.16
トップリーグ(TL)第10節サントリーサンゴリアス(サントリー)戦。リコーブラックラムズ(リコーラグビー部)は大きくスターティングメンバーを変え、SHに湯淺直孝、LOに馬渕武史らが入った若手中心の編成で臨んだ。
この試合がリコーラグビー部の選手として100試合目の出場となったHO滝澤佳之は、節目の日をゲームキャプテンとして迎えることになった。
「今回のメンバーはこれまで出てなかった選手も多く、それがモチベーションになっている。そういう部分でもまとまれるのではないかなと。FWについても面白い感じですよ。ここまでFWが圧倒してという展開はなかなかないので、残り試合少しでもそういう場面をつくっていきたい。FWの強いサントリーに対してどこまでやれるか楽しみです」
試合前々日の練習後、滝澤はそう話し強豪とのゲームへの意欲を語った。
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14:00、快晴の山梨県・小瀬スポーツ公園陸上競技場にホイッスルが響き、キックオフ。リコーラグビー部が開始早々攻撃を見せる。1分、22mエリア内ゴール正面でのサントリーが反則。するとSH湯淺直孝が素早くリスタート。密集ができると抜け出たNO8ロッキー・ハビリがゴール正面にトライ。
この日プレースキッカーを務めたFB津田翔太がコンバージョンを決め、電光石火の攻撃でリコーラグビー部は7対0と先制した。その後はサントリーが何度となく攻撃を見せるも、この日SOに入ったスティーブン・ラーカムの適切なキック処理や思い切りのよいディフェンスで、リコーラグビー部がしっかり守って得点を許さないまま10分が経過した。
しかし11分。サントリーは、ゴール正面のラックから左に展開し、11番が左隅からインゴールエリアに達し左中間にトライ。コンバージョンは外れたが7対5とする。リコーラグビー部はこの攻防で負傷したCTB山藤史也が退場、代わって金澤良がピッチへ。
17分、リコー陣内左中間22mライン手前の位置で、リコーラグビー部がノットロールアウェイの反則を犯すと、サントリーはペナルティゴールを狙い成功。7対8と逆転した。しかし、サントリーが主導権を握るには至らず、SOラーカムのキックなどでリコーラグビー部も反撃の機会をうかがっていく。
しかし22分、ノックオン、ハイタックルなど反則の繰り返しでサントリーにゲインを許す。24分、ゴール左の位置でスクラムのピンチをつくると12番がアタック。密集からのボールを受けた15番が右中間にトライ。コンバージョンも決まり、7対15とサントリーが点差を広げる。28分には22mラインゴール正面の位置でリコーラグビー部がオフサイド。サントリーはペナルティゴールを難なく決め7対18。リコーラグビー部は反則からの失点が続く悔やまれる時間帯となった。
しかし、前半ラスト10分はリコーラグビー部がペースをつかむ。33分、サントリー陣内22m付近ほぼゴール正面の位置のスクラムで得たペナルティでゴールを狙い、これに成功。10対18と追いすがった。
36分にはハーフウエイライン付近のラインアウトから展開したボールをCTBロイ・キニキニラウ、WTB小松大祐とつないで左サイドをゲイン。小松はゴロキックを蹴り、ボールはインゴールエリアに転がったが押さえきれず惜しくもトライならず。
攻撃はさらに続き、SOラーカム、NO8ハビリが自陣よりランでゲイン、一気にサントリー陣内左サイドへ侵入、相手ディフェンスの猛烈なタックルを受けながらギリギリのところで、SOラーカムがCTBキニキニラウにパスするが、キニキニラウは押し出された。しかし、ラインアウトでサントリーが反則。40分が経過したホーンが鳴る中、SH湯淺が再び素早くリスタート。NO8ハビリが縦の突進、相手ディフェンダーをジャンプしてかわしてゴール正面に飛び込むとフォローのFWが密集をつくり力強く押していく。ラック状態となり、最後はHO滝澤がグラウンディングに成功しトライ。コンバージョンも決まり、17対18と1点差に詰め寄り前半終了、試合を折り返した。
とても重要な後半の入り。リコーラグビー部は落ち着いたプレーを続ける。前半に比べキックを減らし、ボールを回してアタックを仕掛けてくるサントリーの攻撃に冷静に対応、ラインブレイクを許さない。4分にはサントリー陣内に攻め込み、SOラーカム、CTBキニキニラウと回してゴール前に迫るが、ノットリリースザボールの反則を犯し得点に結びつけられない。
その後、一進一退の時間帯が続いたが、リコーラグビー部はまたも反則から失点を喫する。リコーラグビー部陣内10mライン付近でオフサイド。サントリーはタッチキックでゲインし、22mエリアのラインアウトからモールで押す。ここでリコーラグビー部がコラプシングの反則。11分、サントリーは再びモールで攻撃を図り、今度はそのまま押し込んでインゴールエリアに達しトライ。コンバージョンも決まって17対25。リコーラグビー部は、展開上絶対に取りたかった後半最初の得点を奪われてしまった。
しかし気迫では負けず、アグレッシブなプレーを維持するリコーラグビー部はあきらめない。19分にはサントリー陣内左サイドのラインアウトから展開、CTBキニキニラウが縦の突破を図りゴール正面に飛び込む。素早くフォローが入り22mエリア内のラック戦となるが、ここでノットリリースザボールの反則。攻撃の機会を逸した。
25分過ぎ、ややリズムに乗り出したサントリーの攻撃に押されてプレッシャーを浴び、自陣からのキックがダイレクトタッチとなりピンチを招く。
27分、サントリーは22mエリア左サイドのラインアウトから、モールで押す。頃合いを見て右サイドへ展開し、SO(21番)が右隅へトライ。コンバージョンは外れたが、連続ポイントを許したリコーラグビー部は、17対30と13点を追う形に。
31分、リコーラグビー部はサントリー陣内左サイドに攻め込むと、ラインアウトからのモールでサントリーが反則。SH湯淺がまたも素早いリスタート。今度は自らギャップを抜け、インゴールエリアに飛び込んでトライ。コンバージョンは外れたが22対30として、リコーラグビー部は試合ラスト10分に総力を傾ける。
しかし、次のトライは無情にもサントリーに生まれる。ミスキックで与えた自陣でのラインアウトからサントリーがライン攻撃。これが決まって突破され、最後は12番が右中間にトライ。コンバージョンはリコーラグビー部の猛烈なプレッシャーによって外れたが、22対35と点差は開いた。終了間際の43分にはサントリーがペナルティゴールを決め、結局22対38でリコーラグビー部はサントリーに敗れた。
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「今日は若手にチャンスを与えました。彼らもそのチャンスを生かしたと思います。リコーラグビー部の未来に向けては良い結果でした。サントリーはスクラムで知られていると思いますが、しっかりと闘えていましたしね」
敗戦にも、記者会見でのトッド・ローデンヘッドコーチ(HC)の言葉は前向きだ。ペナルティの連続でゲインを許し、結果的にトライを与えてしまったことに対する苦言はあったが、若いメンバーたちの奮闘に一定の評価を与えていた。
「試合が終わって改めて感じましたが、リコーには明るい未来が待っている」
試合後、出場した選手たちはどんなことを感じていたのだろう。
「とにかく、やるだけ、と思って。意識していたのはディフェンスですね。しっかりと肩を当てて、体を寄せていくという。それはできたと思います。(リコーの未来を担う期待については)うーん、先のこと考えるというより、この試合でどうアピールするかを考えていましたけどね。
ただ、チームとして前を向く姿勢を打ち出すために、若いチームが編成されたのかな、とは感じていました。そういう期待には応えられたのではと思います。でも、もっとできたなという部分はありますね。ペナルティを簡単に与えず敵陣でプレーしていればチャンスはもっと広がったはずだし」(SH湯淺直孝)
「自分たちの力でも十分通用するっていうのは、肌で感じることができた。それはうれしかったですね。スクラムでは体格ほど負けてはいなかったですし。モールはやられてしまった部分もあったけれど、全体的に見て自信になるいい試合だったと思います」(LO馬渕武史)
ゲームキャプテンを務めたHO滝澤佳之からは、メンバーに対しこんな言葉が聞かれた。
「長江(有祐)、伊藤(雄大)の両PRが頑張って、まず個人で勝ってくれていたので助かりました。予想通り、モチベーションは皆高くてよかったですね。
ただ、気持ちとか、そういうものは申し分なかったんですけど、ペナルティの多さという個人の意識でしか変えられない部分で課題があります。ペナルティで乗っている勢いを消してしまうのは、前節から続いていること。練習の中で、ペナルティをペナルティだと認識するようなことをしていかないと減らないと思う。やっている本人は、ペナルティではないと思ってやっているわけだから。減らさないと強いチームには勝てないです」
リコーラグビー部に、TL上位陣にも負けないアグレッシブさが備わりつつあるのは間違いない。残り3試合、ペナルティという壁を乗り越えようとするチームの奮闘と勝利に期待したい。
次戦は12月19日(土曜日)、秩父宮ラグビー場で14:00から行われるクボタスピアーズ戦。1つでも上の順位を目指すために絶対落とせない、勝ち数で並ぶチームとのゲーム。激戦は必至だ。
当日会場にてファンと交流するWTB 横山伸一選手とPR 田村和也選手
(文 ・ HP運営担当)