2009-2010 トップリーグ 対 神戸製鋼コベルコスティーラーズ

2009.09.29

「どこに目がついているんだろうって(笑)」

9月24日(木曜日)、神戸製鋼コベルコスティーラーズ戦前日の全体練習後。FBスティーブン・ラーカムと共にトップリーグ(TL)でプレーすることへの感想を聞くと、CTB金澤良はそう答えた。「周囲の状況を完全に把握して、要所要所でとんでもないプレーをしてくれる」。
学生時代には、テレビに映るラーカムのプレーを見て、チームでサインの出し方を真似たこともあるという金澤は、TLの舞台で再認識したそのすごさを感慨深そうに話した。

そのラーカムが出場停止で不在となる今節。どうしても、そこに注目が集まってしまう状況があった。

「確かに頼りになる存在ですが、いなくてもやれるところを絶対に見せたい。FBに入る津田(翔太)もキックの処理をうまくやれているし、気合いも入ってますよ」。

リコーブラックラムズ(リコーラグビー部)が高めてきた、全員で闘う力――。それが試されるゲームを前に、金澤の言葉は力強かった。

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 翌日の19:30。平日の夜、仕事帰りとおぼしきラグビーファンが多く詰めかけた秩父宮ラグビー場で、神戸製鋼戦がキックオフした。
試合開始直後の2分、ここまでの3戦に続き、またもリコーラグビー部は先制する。ラインアウトからできた密集で、神戸製鋼がレイトチャージの反則。左サイド22mライン手前からペナルティゴールを狙い、SO河野好光がこれに成功。3対0となる。

7分、今度は同じくラインアウトからの攻防でリコーラグビー部がオフサイドの反則。センターライン間際の距離のある位置だったが、神戸製鋼はゴールを狙って成功。3対3の同点となる。

9分にはFB津田翔太が敵陣左サイド深くにキックを蹴り込むと、LOホッティ・ロウがボールを確保し突進。SH池田渉、WTB小吹祐介、CTB金澤とつないでゴールに迫ったがディフェンスに捕まり、ノットリリースザボールの反則。神戸製鋼はキックでセンターライン付近までボールを戻し攻撃に移る。ここでリコーラグビー部は今度は倒れ込みの反則を取られ、神戸製鋼は再度キックで陣地を稼ぎ、ゴール近くまで一気に迫った。22mエリアでの相手ボールのラインアウトというピンチを迎えたリコーラグビー部だったが、ここはディフェンスで相手の反則を誘いしのぎきった。だが、神戸製鋼はこの後ペースをつかむ。

13分、リコー陣内22mライン付近のスクラムから出したボールをSO河野がキック。自陣でボールキャッチした神戸製鋼は、リコー陣内10m付近までランで運ぶと、ドロップゴールを狙っていくが外れた。

リコーラグビー部は再びキックを蹴り込むが、ブレイクダウンでボールを奪えず、神戸製鋼がボールをキープする。リコー陣内右サイドでスクラムを得ると、ボールを展開、ディフェンスラインのギャップを突いて突破する。インゴールエリア中央に持ち込みトライかと思われたが、直前のパスに対しスローフォワードの判定が下る。

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 リコーラグビー部のスクラムとなったが、ここでボールを奪われてしまう。加えて反則を侵し、一転ゴール間際で神戸製鋼ボールのスクラムというピンチに。FWは踏ん張りスクラムでの前進は許さなかったが、その後の密集で痛恨のハイタックルの反則。すると17分、神戸製鋼のSHが素早いリスタート。そのまま自ら持ち込み中央付近にトライを決めた。コンバージョンも決まって3対10となる。

リコーラグビー部はここであわてず、じっくりとチャンスをうかがい、SO河野のハイパントなどで相手陣内に攻め込んでいく。相手のタッチキックが2度ダイレクトタッチになるなど、プレッシャーがかかり出す。しかし、敵陣深めの位置でのラインアウトからの攻撃は反則などで続けて失敗。流れは得たが、得点には至らない。

31分にはスクラムで神戸製鋼が反則を犯すと、即座に攻撃に移る。SH池田からボールを受けたFB津田がステップを切って相手陣内へ侵入。ボールがPR長江有祐を経てSO河野に回ると裏のスペースにゴロキック。一気にゲインする。

直後の34分、神戸製鋼にゴール前でオフサイドの反則が出るとゴールキックを選択し、SO河野が成功。リコーラグビー部が6対10と点差を縮めた。この後も、CTB金澤、WTB小吹、FB津田らBK陣の息のあった連携などでアップテンポに攻撃をしかけていく。得点は奪えなかったが、いいムードで前半を終えた。

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 後半が始まると、前半最終盤のプレーで傷んだCTB山藤史也に替わり星野将利を投入。WTBだった小松大祐が山藤の位置に移り、星野はWTBに入った。

わずか4点差。試合の流れを決めるであろうと思われた後半最初の得点は、神戸製鋼に入る。7分、自陣10mライン付近ほぼ中央でリコーラグビー部がオフサイド。神戸製鋼は間を置かずゴールを指すと、キックを成功させる。6対13と点差が広がった。

勢いに乗る神戸製鋼は追加点を狙い攻撃をしかけてきたが、TL開幕以来安定感をキープするディフェンス力を見せ、リコーラグビー部はよく守った。的確なノミネートや低く効果的なタックル。そしてSO河野、WTB小吹らのキックの精度はプレッシャーを受けても高く保たれ、ピンチを何度も救っていた。

しかし、神戸製鋼の粘り強い攻撃も続く。展開とアタックを繰り返しては、ブレイクダウンに勝ち続け、じりじりと前進。集散をタフに規律正しく繰り返すディフェンスラインも容易にゲインを許さないが、ボールを奪うことはできない。

この我慢比べに勝ったのは神戸製鋼。22mライン付近でFBが右サイドを抜け出すと回り込んで中央付近にトライ。コンバージョンも決まり6対20に。

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 14点差とはいえ、残りはまだ20分。LOの相亮太に田沼広之、FLピーティ・フェレラにエモシ・カウヘンガ、WTB小吹に横山健一と選手交代を行ない、リコーラグビー部は状況の打開を図る。田沼の声を挙げながらのチャージ、カウヘンガのパワフルな突破。横山健は独走状態になりかけた相手をその快足で止めるビッグプレーを見せ、チームに活気を与えていく。残り時間と反比例して増すスタンドのサポーターの声援に応えようと、最後まで闘志を失わなかったリコーラグビー部は、結局ラスト20分の失点はペナルティゴールによる3点に抑えた。

しかし、後半は得点を奪うことはなかった。40分経過のホーンが鳴った後、FB津田の突破からHO滝澤佳之につなぎゴールに迫るプレーで執念を見せたものの、結局、決定的なチャンスはこれを含めて数えるほどしかなく、アタック面では課題を残した。TL第4節、リコーラグビー部は6対23で神戸製鋼に敗れた。

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 ノートライでの敗戦という厳しい結果になったが、リコーラグビー部は随所に光るものを見せた。ラーカムに替わる出場に、「プレッシャーはありました」と話すFB津田はそれをはねのけアグレッシブな動きを見せた。クラブキャプテン・WTB小吹も「バーニー(ラーカム)がいないから自分たちのプレーができない、というのはまったくない」と話し、自分たちのラグビーへのプライドを見せる。「でも反則が多かった。そこはなんとかしないと」。

反則については、FL後藤慶悟も話していた。
「神戸製鋼のモールに、FWとしてどう対応するかを考えていました。徐々に対応できて、モールでトライを与えなかったのは良かったと思う。でも、ペナルティがかさんでしまったのはダメでしたね。どんなにプレッシャーをかけて深く攻め込んでも、2つペナルティを続ければ、あっというまに自分たちのゴール前ですから。
ペナルティを減らすためにどうするかは、これからみんなで話さないといけない。でも、個人の感触としては、練習時の反則に対する感覚・意識は、試合でそのまま出るものだと思っています。ここのところそこが甘かった気がする。プレーの一つひとつについて、ペナルティなのかどうか、厳しい姿勢を持って練習に臨めば、減らすことはできると思う」

次は2週間のインターバルを挟み、10月11日(日曜日)の東芝ブレイブルーパス戦だ。毎節続くTLでのタフなゲームが、どれだけリコーラグビー部を進化させているのか――。昨シーズンのTL王者との闘いはそれを計るのにもってこいのゲームとなるだろう。

(文 ・ HP運営担当)

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