2009-2010 トップリーグ 対 三洋電機ワイルドナイツ

2009.09.17

 13時の開場を前に、NDソフトスタジアム山形には、楕円のボールを持った小中学生が集まっていた。今季唯一の山形県で行なわれるトップリーグ(TL)の試合を心待ちにしていたであろうラグビー少年たち。その笑顔が並ぶ正門前とは対照的に、会場内の選手たちには緊張感が漂う。

「13試合のうちの1試合。今は選手全員、目の前のゲームに集中していると思いますよ」(クラブキャプテン・WTB小吹祐介)

しかし、日本選手権を二連覇する国内最強チームの一つ、三洋電機ワイルドナイツとの闘いに心が沸きたたない者など、いない。頭は冷静に、だが心は熱い――。

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 15:00、三洋電機がリコー陣内左サイドにボールを蹴り込み、試合が始まる。落下地点にできた密集でボールを取った三洋電機はすぐさまボールを展開、22mライン付近でアタックを仕掛けた。リコーラグビー部は相手を良く見てディフェンス。FBに入ったスティーブン・ラーカムのキックで最初の危機を回避し、冷静な立ち上がりを見せた。

続く3分にも再び22mエリア内への侵入を許したが守り切り、リコーラグビー部が反撃。相手陣内右サイド10mライン付近のラインアウトから攻撃を仕掛ける。素早いサポートでボールを繋ぎ、じりじりとゲイン。そして6分、22mライン手前で三洋電機側にボールがこぼれ、タッチを試みたところをチャージする。左中間インゴールエリアに大きく跳ねていったボールを、PR長江有祐が押さえてトライ。コンバージョンは外れたが5対0とリコーラグビー部が先制した。

16分にペナルティゴールを決められて5対3と点差を縮められたが、ここからはリコーラグビー部の時間となる。

19分、FBラーカムとWTB小吹祐介のコンビネーションで相手のディフェンスラインを破りゲイン。中央22mライン付近でボールを受けたSO河野好光がドロップゴールを狙ったが、惜しくもポストに当たり外れた。

しかし、リコーラグビー部は主導権を掌握していた。ラーカム、河野らが的確なキックを繰り返し、相手選手をワイドに動かしエリアを得ては、BK陣が隙を見出しうまく突いていく。

24分、中央22mライン手前付近でSO河野からのボールを受けたWTB小吹が縦に突破しゴール中央にトライ。コンバージョンも決まり12対3とリードを広げる。

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 30分には中央22mライン付近で得たスクラムから出たボールがFBラーカムを経てWTB小吹へ。右サイドを破った小吹は右中間へ再びトライした。コンバージョンも決まって19対3。

34分にゴール正面でペナルティを与えると三洋電機がゴールを決めて19対6となる。

37分には、敵陣右サイドに蹴り込まれたボールにWTB小吹が飛び込んでボールを奪うと、リコーラグビー部はモールで数メートル押し込む。22mライン付近で、SH池田渉がゴール正面付近に駆け込んだSO河野へとボールを出し、再びドロップゴールを狙うと、今度は成功。22対6と点差は16点へと広がる。

39分、相手左WTBに左サイドを破られて1トライ1ゴールを許すも、22対13とリードを保って前半を終え、試合を折り返した。

 後半は、昨シーズンの覇者・三洋電機が牙をむく。

1分、リコー陣内でのラインアウトでボールを奪って大きく展開。右WTBが右サイドを破ると独走してトライ。コンバージョンも決まり、22対20と三洋電機が詰め寄る。

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 ここで粘りたいリコーラグビー部だったが、風下の陣地に変わり、また雨も降り始めるという悪コンディションに泣かされ、前半のようなキックで相手を動かしていく攻撃ができない。随所にチャンスを見出しては仕掛けていくが、三洋電機は冷静に対応、攻撃の芽を摘まれた。

9分、リコーラグビー部は自陣ゴールライン際のスクラムから出たボールをキック。これをチャージされ、ボールを得た相手NO8がゴール中央に飛び込んでトライ。コンバージョンも決まり22対27と逆転を許す。11分にはPR田村和也が負傷、替わって住田圭が入った。

避けたかった連続ポイントでペースは完全に三洋電機へ。14分にはリコーラグビー部のキックをセンターライン付近で受けると、ブレイクダウンに連続して勝ってじりじりとゲイン。頃合いを見て左サイドをゴロキックで破ると、駆け込んできたFWが拾い左隅にトライ。コンバージョンも決まり22対34となり、点差は一気に開いた。

リコーディフェンスも声をかけあい、相手をよく見て的確に当たっていた。タックルも低く気迫に満ちていたが、相手の圧力をとどめることはできなかった。

その後も24分、ゴール前右サイドからモールで押し込まれて1トライ1ゴール、終了間際にペナルティゴールを決められて計10点を追加された。

リコーラグビー部は終盤、勝ち点1の条件である「4つめのトライ」を求め高いモチベーションで闘い続けた。しかし、勢いを得た三洋電機のディフェンスに最後まで阻まれた。結局、22対44でリコーラグビー部は三洋電機に敗れた。

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 試合後、バックヤードには、歯を食いしばり、悔しさをにじませた選手たちがいた。ロッカールームからは自分を戒める大きな声も聞こえた。覇者相手に前半堂々たる闘いを見せていただけに、その悔しさは一層大きいものとなった。

それを見ていたチームキャプテンの池田は言う。
「コーチが分析して準備してくれたプランが的中して、かなり効果的な攻撃ができていました。後半もそれを続けられれば良かったんですが、実行できなかったのは選手の責任ですね。でも、2月の日本選手権(3対59で敗戦)から約半年でここまで来れた。負けてしまったけど、やっていることは正しいんだって、また自信がつきました。
選手があれだけ悔しがるんですよ。前回みたいな負け方だったら、悔しい気持ちすら湧いてきませんよ。それも成長の明かしだと思います。もちろん、勝ち点は取りたかったですけどね」

リコーラグビー部の目標は、昨シーズンに引き続いての日本選手権への出場である。そこに、三洋電機の姿があるのは間違いないだろう。トッド・ローデンヘッドコーチ(HC)がシーズン当初からプランしてきた、「シーズンを闘い抜き、その中で進化を続けていく」形を達成すれば、一皮も二皮もむけたリコーラグビー部が、覇者にさらに肉薄してみせるチャンスが訪れる。目標が新たな具体性を帯び、新たな楽しみができた――そう信じたい。

三洋電機の飯島均監督は、記者会見で下記のような内容のコメントを残した。
「前半、ルーズボールがリコーに行くことが多かったのは、運だけではない。リコーの選手の待つ位置や姿勢がよかったから」

リコーラグビー部の"attitude"は名将にも伝わっている。次の闘いでは、さらなる成長を見せ脅威となることで、賛辞に応えられたらといったところである。

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応援席の応援風景、ファン(子供)との交流

(文 ・ HP運営担当)

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