2009-2010 網走合宿 対 NTTコミュニケーションズ

2009.08.18

 北海道・網走スポーツトレーニングフィールドで行われた夏合宿の最終日。リコーブラックラムズ(リコーラグビー部)は、昨季トップイースト(TE)2位のNTTコミュニケーションズとの試合に臨み、12日に及ぶ合宿を締めた。

試合前、ある出来事があった。この日リコーラグビー部は、ホワイトジャージでゲームを行う予定だった。しかし、対戦相手のジャージの色を実物で確認した結果、より見分けやすいブラックジャージで行おうという判断が急きょなされたのだ。

トッド・ローデンヘッドコーチ(HC)は、出場予定選手がウォーミングアップを進める中、この日リザーブに入っていない選手を集め、宿舎へ仲間たちのブラックジャージを取りにいってくれないかと依頼した。すると、選手は同じ部屋に滞在するもの同士で確認を取ると、すぐさまバスで宿舎へ。鮮やかな段取りでジャージがグラウンドに届けられた。

ジャージを渡す選手たちと袖を通す選手たちに向かい、ローデンHCは、「こういう突発的な事態にもチームで対応すること、そして集中を維持することはとても大事。これも意味のあるチャレンジだ」と声をかけ、グラウンド内外の連携プレーを称えた。思わぬ形でチームの一体感が発揮されるという、いつもとは少し違う空気の中、14:30に試合が始まった。

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先手はリコーラグビー部が取った。敵陣左サイドゴールライン付近からの相手のキックを、センターライン付近でWTB小松大祐がキャッチ。そのままカウンターアタックを仕掛け、ディフェンスラインのギャップを突いて一気にゴールエリア左サイドへ。試合開始3分で最初のトライを奪う。コンバージョンも決まり7対0。

続く6分、センターライン付近右サイドでのマイボールラインアウトから、リコーラグビー部がボールを展開。敵陣10mライン付近で数回攻撃を仕掛け相手のディフェンスラインを崩すと、CTBジョエル・ウィルソンが左サイドを抜け出し、ゴール中央へトライした。コンバージョンも再び決まり14対0と点差を広げた。

13分、今度は左サイドで攻撃を繰り返すと、敵陣22mライン付近でSH池田渉がボールを右へ出す。CTB金澤良からCTBウィルソンへとボールをつないでゴール右隅へ迫る。直前でディフェンスに捕まったが、しっかりとサポートしていた金澤に戻してトライ。コンバージョンは外れて19対0。

テンポの良い攻撃で、縦横無尽にグラウンドを駆け回るリコーラグビー部。点差が広がっても攻撃の手を緩めない。15分にはCTBウィルソンのグラバーキック、18分にはSO河野好光のハイパントなどが絶妙な位置に蹴り込まれ、敵陣深く攻め込む。惜しくもトライはならなかったが、いい形が相次いだ。

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 23分過ぎ、この試合でほぼ初めてと言えるディフェンスの局面が到来。センターライン付近でのリコーボールのラインアウトを奪ったNTTコミュニケーションズが、リコー陣内10mライン付近の混戦の中ボールをキープ。そこからCTBが力強く突破を図る。しかし、リコーラグビー部も落ち着いて対応。低く的確なタックルを繰り返し、22mライン付近で前進を止めた。その後も、数分間NTTコミュニケーションズは攻撃を仕掛けたが、リコーラグビー部は統率のとれたディフェンスで守りきった。

すると27分、攻撃に意識を向けていた相手の隙を突き、リコー陣内10mライン付近でSH池田がNO.8ロッキー・ハビリにボールを出すと中央を縦に突破、60m近く独走してトライを奪う。コンバージョンも決まって26対0とさらに点差は開いた。

37分、SOに入ったスティーブン・ラーカムを起点に敵陣右サイド22mライン付近からボールを展開。FB津田翔太からボールを受けた途中出場のWTB横山健一が左隅へトライ。コンバージョンも決まり、33対0として試合を折り返した。

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 後半は一転、一進一退の展開となった。

試合が動いたのは8分。敵陣右サイドをCTBウィルソンが一気に突破、22mライン手前まで到達するが、そこで捕まりターンオーバー。NTTコミュニケーションズは攻め上がっていたリコーラグビー部のライン裏のスペースへグラバーキック。このボールに追い付かれ、リコーラグビー部はこの試合初めてトライを奪われた。コンバージョンは決まらず、33対5。

14分にはリコーラグビー部が取り返す。敵陣左サイドをモールで押し込むと、そのサイドを突いたLOエモシ・カウヘンガがトライ。コンバージョンも決まって40対5。その後はSH池田、SO河野、PR長江有祐らの突破など、見せ場を何度もつくったが、全体的にはやや攻めあぐねる時間帯となった。

終盤、両チーム選手交代を繰り返しながら攻撃を仕掛けあった。次の得点はリコーラグビー部に入った。33分、22mライン付近でのFL相亮太、NO.8ハビリらの突進で相手ディフェンスラインに乱れを生じさせると、CTB重見彰洋がその隙間を突いてトライを奪う。コンバージョンも決まり47対5まで点差を広げた。

36分、NTTコミュニケーションズはリコー陣内ゴールライン間際のラインアウトからラックを形成。ライン上での激しい攻防となったがそこから抜け出してトライ。コンバージョンも決めて47対12。試合はこのまま終了した。

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 12日にわたる合宿の最終日、当然溜まっているであろう疲労を「合宿の総括を」という思いが生みだす活力で上回った――そう思わせる、高い“Attitude”をこの日のリコーラグビー部は実践し続けた。

声もよく出ていた。繰り返し聞こえてきたのはFW陣の「順目! 順目!」という言葉。「アタックを順目に仕掛けよう」という、チームキャプテンSH池田渉らが、前日の試合から提案していたテーマへのFW陣の強い意識が感じられた。

選手の表情には、充実感、手ごたえを得たことによる自信が漂う。前半にトライを奪い、随所で思い切りのいいアタックを見せたCTB金澤は「8日のコカ・コーラウエスト戦で敗れて、みんな気持ちを入れ直したと思います。点差が開いても軽いプレーが増えなかったのはその表れでしょう」と、SO河野も「ディフェンス時のコミュニケーションがよく取れていたのはよかった。帰ってからやるべきことはまだありますけど。昨日(横河武蔵野戦)、今日は気持ちが入っていたんじゃないですか」と手ごたえを述べた。

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 試合後、選手を集めたローデンHCは、「いい終わり方ができたと思う。これまでの指示についてよく整理できていたし、やってやるという強い気持ちも感じられた。確実にレベルアップしている。でも、まだまだできる。さらなるチャレンジを」と、評価と激励の言葉で締めた。

トップリーグ(TL)の開幕まで1ヵ月を切っている。春から一貫して、ローデンHCは「開幕の時点で100%を目指すのはむずかしい」として、細かな連携プレーなどが完成形になるのはシーズンに入ってからでいいと言い続けてきた。逆に言えば、それだけ高いレベルの組織力を求めているということでもある。

この日のリコーラグビー部は、一部のポジションの選手だけではなく、グラウンド全体から声がかかり、その内容も、それぞれの選手が「こうすべきではないか」という気づきを、チームに対し提案する類のものだった。これは、春先のゲームとは大きく異なる。チームがやろうとしていることを自分の中で咀嚼し、実行し、そして成功して自信を得る。そうしたステップアップを選手が着実に果たしている証拠でもある。自信がなければ、チーム全体に気を配ることなどできないからだ。

もちろん焦りは不要である。しかし、ローデンHCが想定する上昇曲線を上回る進化を、リコーラグビー部は見せてくれるのではないか? この日、北の大地の美しい芝生の上で躍動する面々を見ていると、そんな期待を禁じ得ない――。

(文 ・ HP運営担当)

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