2009-2010 春オープン戦 対 サントリーフーズ / 近鉄ライナーズ

2009.06.26

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 九州電力キューデンヴォルテクス戦から2週間。リコーブラックラムズ(リコーラグビー部)は、この期間を3度のオープン戦で浮かび上がった課題の修正に使った。

「かなり雰囲気よく練習できていました。この調子で試合もいきたいな、と思って試合に臨みました」と話したWTB小松大祐のほか、2週間に充実を感じた選手は多かったようだ。前戦終了後、選手の顔に少しうかがえた戸惑いの色はもうない。不安な点の抽出、解消は順調に進んだとみられる。

この日は昨季トップイースト(TE)7位のサントリーフーズサンデルフィス、トップリーグ(TL)9位の近鉄ライナーズとの2試合が行われた。近鉄との試合は今回で34度目となる定期戦。TLの前身、全国社会人ラグビー選手権でその頂点を繰り返し争った1970年代より続く由緒ある試合だ。さらに、今季トップ6入りを狙うリコーラグビー部にとってTL中位の実力を持つ近鉄との試合は、その目標までの距離を計る試金石の一つ。この日も東京・世田谷のリコー総合グラウンドには、多くのファンが訪れた。

まず11:00より、サントリーフーズ戦が始まる。

「フォワード、激しさを!」SH湯淺直孝らの声が飛ぶ中、その声に応えるかのようにリコーフォワード陣は試合開始からサントリーフーズを攻め立てる。相手陣でモールで押し込み、いきなりゴールに迫る。前戦同様、今日もホワイトチームのテンションは高い。

最初の得点を奪ったのはリコーラグビー部。11分、サントリーフーズの執拗な攻撃を防ぐと、自陣右サイド22mライン付近で相手のミスを突きボールを奪取。ボールを受けたCTB山藤史也が右サイドを独走し右隅にトライ。コンバージョンも決まり7対0。

トライで勢いに乗ると、リコーラグビー部はキックを攻撃的に用いながら前進、20分過ぎには繰り返しゴールに肉薄。しかし、トライには至らない。

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 逆に守りきったサントリーフーズが攻撃に転じる。32分、リコーラグビー部は自陣中央、22mライン付近でのスクラムを崩され後退。その右サイドを鋭く突いたサントリーフーズのNO.8にトライを与えてしまう。

その後、リコーラグビー部は積極的に攻撃を繰り返しながら再び相手ゴールに迫る。40分、敵陣深い位置で相手ボールのラインアウトからこぼれたボールを奪うと、FL末永敬一朗がゴール中央へトライ。勝ち越しに成功したところで前半が終了。

後半もリコーラグビー部の攻撃が続く。しかし、闘志を燃やすサントリーフーズの必死のディフェンスにトライが奪えない。

すると再び逆襲を受ける。27分、リコー陣内右サイド、22mライン付近のラインアウトからサントリーフーズがモールを押し込み、そのまま右隅にトライ。コンバージョンは外れたが、14対12と2点差に迫られる。

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 絶対に逆転は許されない。残り10分、リコーラグビー部は意地を見せるべくギアを入れ替える。終盤も運動量は決して落とさず、CTB山藤、WTB星野将利らの突破など攻撃を繰り返す。しかし時間は過ぎ、そのままノーサイドを迎えた。

得点を許した場面以外はほとんどチャンスを与えておらず、リコーラグビー部は集中してよく闘った。しかしこの2点差という結果は、上位打倒を目指したサントリーフーズの"ハングリーさ"がもたらしたものだろう。どんな状況でも、ハングリーに闘うことで状況は打破しうることを再認識させられる試合だった。

 13:00。近鉄ライナーズ戦がキックオフ。

先手を取ったのはリコーラグビー部。SO河野好光が魅せた。近鉄が自陣10mライン付近のスクラムからボールを展開させキック。河野はこれに即座に反応してチャージ。22mライン付近でこぼれたボールに自ら追いつくと、左へ走り込んでいたWTB小松大祐へパス。小松はディフェンスラインを破り左隅にトライ。開始3分、鮮やかな先制劇にスタンドが沸いた。

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 このトライで近鉄が目を覚ます。テンポのよい攻撃でリコー陣内に侵入。16分、ラインアウトから左サイドを重量FWが、モールで強く押し込み反則を誘うと、ゴール間際で素早くリスタート。ボールを受けたWTBが強烈な突進を見せトライ。コンバージョンも決まり、リコーラグビー部は5対7と逆転を許す。

さらに近鉄ペースは続く。これぞTLというスピーディな攻撃。当たりも激しさを増す。リコーラグビー部にとってはまさに我慢の時間。

しかし耐えきれず。33分、自陣ゴール前のラックでボールを獲得し、インゴールエリアからキック。これをセンターライン付近で相手がキャッチ。ディフェンスラインが整っていないのを見ると、近鉄は直線的にカウンターアタックを仕掛ける。11番と6番がそれぞれ20mほど縦に突破してゴールほぼ中央にトライした。コンバージョンも決まって5対14。その後は両チーム得点を奪えず、9点差で前半を終えた。

後半が始まる。「倒れるまで、全部出しきろう!」。LO田沼広之がチームに活を入れる声が響く。徐々に、守備に追われた前半とは様相が変わってきた。リコーラグビー部が試合をコントロールしはじめたのだ。

23分、相手陣左サイドのラックから縦への突進を数度繰り返しゴールに迫る。そしてゴールライン上の混戦に持ち込むとFL相亮太がラックサイドに飛び込みトライ。コンバージョンも決まり12対14。その後の32分、自陣でのキックをチャージされ、こぼれ球を近鉄にさらわれてトライを許し12対19と点差は再び広がる。

だが、ここからがリコーラグビー部の真骨頂だった。夏を思わせる天候、そして迎えた終盤ーーしかし、この状況でも全く運動量が落ちる気配がないのだ。ラスト約10分、試合の主導権は完全にリコーのものとなった。SH池田渉が出すパスはことごとく通り、リコーラグビー部は敵陣深くへと突き進む。

そして36分、〈よい"Attitude"を安定的に保つ〉09-10シーズン型リコーラグビーが像を結ぶ瞬間が訪れる。池田からSO河野を経たボールがWTB星野将利へとつながると、星野は右サイドを激走。相手のタックルを受けながらも力強く飛び込みトライ。コンバージョンも正確に河野が決めるとついに19対19。

一気呵成、リコーラグビー部は残り時間も全力で攻撃をかける。終了直前には再び星野へボールを回すと切れ味鋭く突破。ゴール直前まで迫ったが惜しくも届かない。スタンドの歓声が悲鳴に変わったところで、ノーサイドのホイッスル。伝統の定期戦は引き分けに終わった。

前半は守備、後半は攻撃と形が違うが、リコーラグビー部は高い集中力で、なすべきことをしてみせた。試合後の選手の表情は明るい。

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 「勝ちたかったですね」。SH池田渉はそう言いながらも、この試合の収穫をにこやかに話した。

「だいぶ暑かったのに、自分もチームも最後まで動けていたということ。実は試合の最中、あくまでさらによくなるためにというポジティブな反省としてですが、1つの動作の後、後ろに戻って次にするべき2つめ、3つめの動作を増やしたいと感じていました。それにはフィットネスが不可欠なんですが、皆その点では問題ないということが確認できた。あとは気持ち。意識を変えれば改善できる」

ちょうど365日前の2008年6月21日。トッド・ローデンヘッドコーチ(HC)が初めて指揮を執ったのがこの近鉄との定期戦だった。その頃、ローデンHCが繰り返し選手に指摘していたのは「フィットネスの不足」。1年がたったこの日、リコーラグビー部は見違える姿で同じ相手と闘ってみせた。

SO河野好光は言う。「トッド(ローデンHC)が、チームは40%まで来ているって言ってくれました。嬉しいですよね。もう10%ぐらい上積みして1つのターゲットである東芝戦(7月3日(金)18:00~)を迎えられれば」

今なすべきことを、正しい"Attitude"でーー。そうすれば必ず結果がついてくるという事実が、選手に確かな自信を芽生えさせている。リコーラグビー部が登り続ける階段に踊り場はないようだ。目標に向かい、鋭く一直線に伸びている。

(文 ・ HP運営担当)

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