2007-2008 サテライトリーグ・ファイナル 対 三洋電機ワイルドナイツ
2008.02.12
こちらは優勝決定戦。
トップリーグは13位に終わった今季のブラックラムズだが、控え選手主体のサテライトチームは好調を維持していた。
SO河野好光副将も「サテライトは"上でやる"というモチベーションが高かった」と話していたし、HO岡崎匡秀とLO田沼広之の両ベテランが年明けから先発出場を続けたのも「その前のサテライト(12月29日・NEC戦)で良かったから」(田沼)。所属するサテライトリーグ4では見事全勝、「A(トップチーム)が絶対的とは言えなかった」(佐藤寿晃監督)とはいえ、レギュラー獲りへのアピールチャンスの場としては十分機能していた。
かくして2008年2月10日13時、サテライト5を全勝した三洋電機ワイルドナイツとの"サテライトファイナル"が、不出場の選手らによる雪かきが施されたリコー砧グラウンドで行われたのだった。
キックオフ直前の円陣。試合2日前にゲームキャプテンを任されたFL赤羽根拓也が「ラグビーを始めたときの楽しさをそのまま!」と叫ぶ。
「トップリーグだと魅せなきゃいけない、勝たなきゃいけないというのがあるけど、本来は楽しくて続けてきたラグビーだから……。それで勝てれば最高だけど、まずは楽しむことがメインに」
赤羽根はこう述懐した。
しかし、試合は21対40で敗れた。奪われたトライ数は6で、特に前半奪われた3トライのうち2本はターンオーバーからのトライだった。ワイルドナイツはAチームも見せていた接点での強さ、巧さが際立っていた。
「(ワイルドナイツは)ボールに対する貪欲さがあって、みんながボールを貰おうとしていた。そして(相手が持つ)ボールに絡めるか絡めないかの状況判断ができていた。絡める時は徹底的に絡んでくるし、絡めない時は絡んでこない……(で次に備える)。それに対してリコーはすべてに対して絡みに行っていた。学ぶべきだなぁと思います」(赤羽根)
試合から数時間後、先発出場したSH後藤崇志は「勝って終わりたかったんですけどね」と、降格決定後に刈り上げた頭を下げる。
かくして、ブラックラムズの2007‐2008シーズンの全日程が終了した。
そして、来季に向けて。
試合後、佐藤監督は"去就は未定"としながらも、「基本のタックル、組織ディフェンスなど、色々」と着手すべき課題を挙げた。そして、「色々」を改善するための前提としてはまとまりが必要か。
「一人ひとりの実力はあるけど、それが試合のときに2人、3人とならないで、個人個人になってしまっていた……」
以前河野はこう言っていた。これについてはチーム外からも再三指摘を受けており、「お客さんに『何がしたいのかわからない』と言われた」。相当ショックだった。
まず、チームの焦点を再構築する必要があると、この試合に途中出場したNO8相亮太も指摘している。
「色々なところに目が行って(すべきことを)絞りきれなかったところがある。東芝はモール、三洋はBKと、強いチームには"これ"という強みがあるのに、ウチはそれがぼやけていて、負けている時も相手に合わせてしまっていた。選手も、『リコーの強みは?』と聞かれると答えられない。まずはそこからだと思います」
そして、強みの構築は監督・コーチからのトップダウンでは限界があって、選手個々の自主自立が何より、求められる。
「もっとチームが一丸となって、みんながみんなのために、とならないと。個人個人が何をすべきかを判断して、これを監督、コーチがいい方向に持っていくように……。まずは自分たちで考えて、上がアドバイスして、というのが本当の強いチームだと思う」
赤羽根はこう、言葉を結んだ。
この試合でも再三好タックルを見せていたCTB山藤史也をはじめ、個人能力には光るものがある。あとは同じベクトルに熱い熱量で向かうだけ。そして、そのベクトルは選手個々の意見で作る。そうすればきっと、楽しみながら勝てるのだ。
降格決定から約1ヶ月、変革のきっかけは掴めたか。
(文 ・ 向 風見也)