2007-2008 トップリーグ 第7節 対 NECグリーンロケッツ
2007.12.18
「敗因はラインアウトの獲得率、あとはミスが絡んでうまく戦えなかったこと」
十数名の記者が集う会見場。第7節、NECグリーンロケッツとの一戦を終えた佐藤寿晃監督の第一声はこれだった。前節も苦戦したマイボールラインアウトは、新しいムーブ(サイン)を用いるなど改善を試みたが、この試合も成功率は68%(26本中18本、平均値は80%前後とされている)。ことごとくターンオーバーを奪われ、それがゲームの主導権にそのまま繋がった。
「残念ながら、(相手に)張られているところにそのまま投げてしまっているところがあった」
佐藤監督は、トーンの低い声で分析した。
ボールがタッチに出た際のラインアウトや反則時のスクラムなど、セットプレーはラグビーの生命線である。チーム全体の戦術練習は、このセットプレーが決まることを前提として進められることも多い。それだけに、佐藤監督の分析には真実味があった。
ラインアウトの要素はおもに、投げ入れられるボールの精度やジャンパー跳躍力などがあるが、ブラックラムズが抱える問題点は、そのどれでもなかった。チーム1のジャンパー・LO磯岡和則は言う。
「タイミングの問題です。(スローワー=投げ手に)もっと早くサインを出してあげればよかったですね」
さらには、リフターとして最高到達点にいるジャンパーの下半身を支える、PRの阿部裕也は――。
「(自分たちが飛ぶ位置に飛ぶ直前に)張られてしまっていて……」
トップリーグは年々、均衡化の傾向にある。“トントン”のチーム力同士なら、あとはいかに自分たちの強みを出すか、相手の強みを出させないかといった部分が勝負を決する。そこには、“ラインアウトのサインがバレる、バレない”といった、目に見えない駆け引きも加味されるのだ。
さらにはこの試合、自慢のBK陣も敵陣深くまで攻め込みながらミスや反則でチャンスを逸する、という場面が見られた。得点は前半36分、CTBブライス・ロビンスの個人技をきっかけとしたPR笹倉康義のトライ(とその後のゴールキック)のみに終わった。
守ってもグリーンロケッツのSOヤコ・ファン・デル・ヴェストハイゼンに自在のゲームメイクを許し、前後半総計5トライを喫した。
スコアは7対33。
SO河野好光副将は「FWが折角頑張ってくれたのにBKで……」と唇を噛む。
試合後の集合での佐藤監督の言葉は、他のどの試合のそれよりも長かった――。
その集合が散り、会場を後にする選手のなかに伊藤鐘史主将がいた。負傷の影響でこの試合も欠場したが、ウォーターボーイとして「一緒に闘っています」と言う。
“外から見ることによって改めて勉強になる”とはよく口にするが、具体的にはどのようなものなのか。こう問われた伊藤は言った。「今の欠点がよく見えます。より冷静に」と。勿論、収穫も見えた。
「先週の課題だったFWのモールディフェンスが今日は修正されていたし、向上はしてます。あとは、自信を掴むだけ。小さなことでもいい。たとえば今日のモールディフェンスとか、少しずつの自信の積み重ねが、どこと戦っても壊れない、ブレないものに繋がっていくんです」
そういえば、ルーキーWTB小松大祐選手も伸び伸びとプレーしている。
「ね。本当にいい選手です。彼もトップリーグでやっていくなかで、自信を掴んだんじゃないですか。それで、思い切ってやれている」
彼の10年選手のような落ち着きぶりも、メンタルの強さ、すなわち自信の積み重ねが源泉にあるのか。
「そう。自信は人を大きく変えます。この自信を、チームとして持てたら最高ですよね。そしたら、(小松のように)みんな落ち着いてプレーできるんじゃないですかね」
今週末には昨年4位、ヤマハ発動機ジュビロが待ち構えている。
(文 ・ 向 風見也)
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