2007-2008 トップリーグ 第3節 対 三洋電機ワイルドナイツ
2007.11.14
2007年11月10日、すっかり闇に包まれた17時10分。最低気温が10度を切ったJR盛岡駅前に集合した部員の前で、ブラックラムズ佐藤寿晃監督は声をあげた。「結果が全てだよ。三洋が強くてウチが弱かったってことだよ」と。
数時間前の盛岡南公園球技場で行われたトップリーグ第3節・三洋電機ワイルドナイツとの一戦を、ブラックラムズは落とした。スコアは10対39。佐藤監督曰く「オフェンスもディフェンスも悪いところばかりが出て、それが得点に現れた試合」だった。
試合後の共同会見を終えたばかりの伊藤鐘史主将も言う。
「こういう試合をしていたらダメですね。
士気が落ちる」
開幕直前のプレマッチで大敗(10月13日・太田・40分×3で38対86)した相手との再戦、その挑戦のプロローグは5日前にあった。外灯に照らされた秩父宮ラグビー競技場前、24対40で敗れたトップリーグ第2節・東芝ブレイブルーパス戦のファンクション後のことである。
「すごい悔しい。何でこんなに悔しいかっていうと、自分の持っている実力を出し切れないで負けた……」
選手を集め、佐藤監督はこう語ったのだ。
「悔しい。監督になってから一番だよ……」
目には光るものがあった。各選手は返事の声を上げることなく、口を真一文字に閉じてその思いに聞き入るのだった。解散後、伊藤は佐藤監督と無言で握手をした。
中1日のリカバリー後、佐藤監督が発表した先発予定メンバーはそれまでの2節とは大分違うものだった。
まずはルーキーの初先発。前節後半から出場のSH湯淺直孝、WTB渋谷嘉広がそれぞれ名を連ねた。特に渋谷はワイルドナイツSOトニー・ブラウンのキック対策としての起用である。「キックゲームになったら難しいんで」(伊藤)。身長183センチとサイズがある渋谷を中心に、カウンターを狙う意図があった。
外国人枠を2つともFWに使った。これまで出場していたNO8ピーティー・フェレラに加え、W杯後のリカバリーから復帰したLOエモシ・カウヘンガを抜擢、ワイルドナイツの強力FWに対抗しての起用だった。
11月某日、砧グラウンドでは上記のメンバーが、第3節を想定した動きを再三確認していた。伊藤は言う。
「ウチは毎回チャレンジャーなんで、(敗戦後も)変わんないですよ。
弾みをつける意味でも、何とか勝ちたいですね」
――今度はリベンジですか。
「(今度だけじゃなく)全部リベンジです(笑)」
寒空のもとキックオフされた試合、ブラックラムズは立ち上がりを「スロースターター」(伊藤)として迎えてしまった。警戒していたブラウンが風上に乗ってキック、ランニングと自由に動き回る。前半1分に自らのキックを起点にトライ、10分にも守備網を蹴破ってインゴールに飛び込んだ。さらに18分にはキックパスに走りこんだCTB霜村誠一がトライ、わずかな時間で17対0と、ワイルドナイツが主導権を握る。
その後はブラックラムズも反撃を見せた。前半22分、相手ゴール前右ラインアウトからフェーズを重ねて右へ展開、相手SOとCTBの間に走りこんだCTB金澤良がトライ、36分にはゴール前中央でSO河野好光がPGを決めた。スコアは10対17。前半終了直前にはワイルドナイツボールのラインアウトもLO磯岡和則がボールの軌道とサインを読みきりターンオーバー、しかし、後半は再びワイルドナイツのペースとなるのだった。
伊藤は言う。
「後半は相手のラインアウトも分析できてたんでキックでエリアをとってラインアウトを、と思ってたんですけど……。敵陣に入ってのセットが少なかったですよね。エリアを取ることができなくて、自分たちの形を崩されてたんで……」
後半11、21、27分と、ワイルドナイツHO山本貢のトライを許した。ブラックラムズがエリア合戦で後手を踏んでいる間、ワイルドナイツはターンオーバー、ブラックラムズの反則などをことごとくスコアに直結させた。「うーん、あとは……ビデオを見てみないとわかんないです」。いつも試合後は端的な総評をする伊藤にとっても、ぐうの音も出ない敗戦だった。以前「見た目から『落ちてるんちゃう?』って思われることも」と言っていたが、この時がまさにそれと思えた。
これで2連敗。しかし、時を同じくして近鉄花園ラグビー競技場、優勝候補の一角サントリーサンゴリアスが、昨季10位のコカコーラウエストレッドスパークスに敗れた。今季トップリーグは混戦模様である。冒頭に記した盛岡駅の集合時、佐藤監督はこう言葉を結ぶのだった。
「今日、コーラがサントリーを破ったんだ。前を向いてサントリーと戦うか、下向いて戦うか……。どうせなら上向いて行こう!」
ブラックラムズの第3節は11月17日の三ツ沢陸上競技場、再起を図るサンゴリアスと対戦する。
(文 ・ 向 風見也)