プレマッチ 対 福岡サニックスブルース戦

2007.09.25

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自陣10メータエリア、意表を突かれたインターセプト。ブラックラムズBK陣のパスを奪ったサニックスブルースの20番、鬼束竜太が独走トライを決める。21対0とリードしていたブラックラムズがこの試合初めて失点した後半3分、伊藤鐘史主将は自陣ゴール前で円陣を組んだ。「こういう時は、個々が目の前の仕事をきっちりこなしていこう!」と、選手を鼓舞したのだった。

前半リードで折り返し、後半先手を取られる。ちょうど1ヶ月前の網走、NEC戦と同じ展開だった。NEC戦はここから試合の流れががらりと変わり、結果敗れている。同じ轍は二度と踏むものぞ。キャプテンシーとはこういう場面のためにある。後半先手を取られた後の円陣、ここが分水嶺と、伊藤は感じていたのだ。

2007年9月15日、曇りや雨が続いた前日までとは打って変わっての、快晴の猛暑日。砧グラウンドで行われたリコーブラックラムズ対福岡サニックスブルースの試合は、ブラックラムズにとっては合宿後初戦にして、トップリーグ開幕直前の4連戦の第1弾だった。

テーマはズバリ、「勝ちにこだわる」(伊藤)。具体的な焦点はブレイクダウンの精度アップとミスの削減だった。「NEC戦ではブレイクダウンからのターンオーバーが多かったですから」(佐藤寿晃監督)。メンバーも、HO滝澤佳之などの怪我人を除きベスト布陣。まさに必勝体勢だった。

前半は終始ブラックラムズペースだった。春から取り組んだスライドディフェンスが功奏し、特にCTB田中洋平が前半7分、9分と好タックルを決め、未然にピンチを防ぐ。

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攻めては前半11分、自陣22メーター付近での相手ボールラインアウトのこぼれ球をNO8 ピーティー・フェレラが拾い大幅ゲイン、SH湯淺直孝、伊藤とボールが繋がり、先制トライを生んだ。21分、38分にもフェーズを重ねて早く外へ散らすというブラックラムズの得意パターンでトライを奪う(それぞれFBアントン・ビトゥー、WTB池上真介)。ゴールもすべてSO武川正敏が確実に決め、21対0でハーフタイムを迎えた。

伊藤は述懐する。

「前半はいい感じ。攻撃は(ポイントから)逆目に攻めてうまくいったし、守備も機能していたと思います」

――でも、後半は別のゲームのようになりました。

「ですよね!見てる側からもそう感じましたよね。やってる側は、もっとそうでした」

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冒頭の後半3分の失点以降、ブラックラムズは流れを失ってしまう。「守りに入ろうという意識」(伊藤)が働くせいか、出足が鈍ってハンドリングミスが増えた。後半17分には自陣ゴール前のラインアウトモール、24分には相手ボールスクラムからの展開でそれぞれトライを献上し、スコアは21対17。後半30分には途中出場のWTBシュペリ・ロツコイの中央突破によるトライと武川のゴール成功で28対17と突き放すも、32分、34分、38分と立て続けに3トライを奪われ、逆転。28対34で、試合はサニックスブルースの勝利に終わった。

ノーサイドから数十分、夕刻のグラウンドには疲れて寝そべっているHO蓼内博樹(ルーキーながら先発し活躍!)と、伊藤が残っていた。

――流れが急に相手に傾いてしまいました。

「劣勢に立ったとき、吠えるだけになってしまっている。イケイケのときはいいんですけど、1本取られると弱い。(失点という)数字に表れてしまうと、いけないんでしょうね」

――劣勢の挽回には、やはり主将の役割が大きくなります。

「NEC戦もそうですが、こういう展開の試合をやってると『このときはこういう声かけの仕方があったかな』と、反省する部分もある。そういう意味では、勉強になりましたね」

“試合の流れを読む”なんて、言うは易し行うは難し。若き主将は勉強の日々である。

すっかり人がいなくなったグラウンドだが、試合には多くのファンが詰め掛けていた。伊藤は負けるといつも、せっかく観に来てもらったのに申し訳ないな、と思う。理屈抜きに面白く、勝っている試合をファンに見せたいのだ。「ルールがわからなくても?全く問題ない。皆さんがドキドキワクワクする試合をお見せしたい」。リコー社内報の取材にもこう答えていた。他の選手も、同様の気持ちを抱いているはずだ。

―ところで、フランスワールドカップの日本対フィジー戦はご覧になりましたか。

「観ましたよ!夜中なのに声出しちゃいました。オーストラリア戦は完敗したけど、フィジー戦は惜しかったですよね」

―SHが2人怪我するなんて……

「ね、ああなっちゃったらしゃあないですよね。でも、本当に惜しかった……」

トップリーグ開幕まで1ヶ月。ジャパン同様、ブラックラムズも善戦だけでなく勝利を!

(文・向 風見也)

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