春シーズン第三戦 九州電力戦
2007.06.05
リコー、九州電力に29-40で敗れる
ホーム初戦は最初の行き止まり。 セットプレイが噛みあわず、九州電力に敗れる
「残念です…」
滝澤佳之は斜陽が射すグラウンドを見やった。「熱いものを持っている。それをチームに発信して欲しい」と伊藤鐘史主将に打診され、今季からブラックラムズの副主将となっている。佐藤友重FWコーチが「彼の目つきは(ほかの選手とは)違う。プレーを見てもわかるでしょ」と語るなど、ラグビーへの真摯な取り組みがチーム内でも評価が高い中堅HOだ。
数時間前まで行われていた試合は九州電力キューデンヴォルテクスとの一戦。40対29でブラックラムズは敗れていた。
ホームゲームの初戦だった。世田谷区のリコーラグビー部砧グラウンドは快晴に恵まれ、備え付けのスタンドは選手の家族やリコー社員の面々で埋まった。2007年6月2日、海の向こうのラグビー日本代表戦や話題の早慶野球と同日、それでも決して少なくないファンが集った。しかしこの試合、ブラックラムズの歯車は終始止まったままだった。
理由のひとつはスクラムだ。後方から力を伝える新たな形を試したが、レフリーに反則と取られてしまった。NO8を務めた伊藤主将はこう述懐する。
「第1列が組み合う瞬間に力を伝えるのに、僕は(後ろから)少し早く押すんですけど、それを“早い”と取られてしまいました。レフリーのコールとタイミングが合わせられなかったんです」
スクラムはラグビーの原点だ。レフリーとのコミュニケーションミスからスクラムが狂ったブラックラムズは、攻守で後手に回ってしまう。カウヘンガの個人技などで5トライを奪ったが、これまでの試合で見られたスピード感あるボール回しは影を潜めた。守備でも相手BK陣の突破力とブラックラムズのタックルミスが相まって、6トライを奪われた。
「(地元ファンの声援は)支えになったはずなんですけど…」。 1日ですっかり日焼けをした佐藤監督は、こう敗戦を振り返る。
「ここまで組織を整備したら、あとは個の力。(試合では)単純なタックルミスが多すぎましたね。ラインアウト(のミス)は練習でやってないことだから仕方ないとしても、スクラムは…6月末までには目途をつけないといけないですね」
そして同じく日に焼けた副主将の滝澤は、うっすらと目を光らせてグラウンド上に大の字になっていた。「セットプレーが上手くいかなかったのは全部僕の責任です…」。
セットプレーはスクラムだけでなくラインアウトでもミスが出た。滝澤は自身のスローイングを悔いた。「相手ディフェンスが目に入って、いつもと違う投げ方をしてしまったのがいけなかった」。そしてスクラムは、先述のレフリングが“とっかかり”となってしまったという。
「切り替えればよかったんですけど、最初のスクラムでペナルティーを取られて、その後は“どうしようかな”と考えたままプレーしてしまいました」。真面目な性格が災いした。
滝澤は副主将に就任してから、練習でも周りを見るようになったという。
それまでは自分のプレーだけに集中していたが、立場が変わることでチーム全体の雰囲気が気になるようになった。
この試合はまず自身のミスを反省しきりだったが、「練習はもっとピリピリしていてもいいのかな」とは、前から思っていた。
「この試合がただの負けになるかどうかは、これからにかかってます」
次回6月9日のワールド戦、伊藤主将はATQ参加のため欠場する。日本一を目指すブラックラムズにとっては最初の行き止まり。滝澤の静かな闘志が試されるときだ。
最後に。前半部に記したとおり、この試合には多くのお客様がご来場くださいました。
チーム一同、心より感謝いたします。9日の試合も応援よろしくお願いします!
(文・HP運用担当)